テラーノベル
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🐰side
クラスの出し物も無事盛況に終わり、軽音部の発表の時間が始まろうとしていた。
制服に着替え、ナオとともに部室へ向かう。
部室にはすでにみんな集まっていて、それぞれ最後の音チェックをしている。
カイリュウはというと窓の方を見ながら小さく歌を口ずさんでいた。
ナオとともに最後の練習に加わる。
震える指を押さえながら曲を練習する。
「うん。いい感じやね、じゃあ体育館いこっか。」
エイキがみんなに声をかけ、全員で体育館へ向かい準備を進める。
こういう時、カイリュウは率先してみんなに声をかけるが今日はなにも言わない。ただ黙々と準備を進め、マイクの前で目を瞑っている。
体育館には多くの生徒がいてカイリュウやエイキの名前を呼ぶ声が聞こえる。
やばい。緊張する。
今までやってきたことを出すだけなんて意気込んでいたけどいざ舞台に立つと頭が真っ白になる。
そんな俺に気がついたのかエイキが優しく肩を叩いてくれた。
そのお陰で少し緊張も和らぎ、ギターを持つ手の震えもおさまった。
始まろうとする直前、カイリュウが急に横を向いて俺をじっと見つめる。何?と思って動揺していると口パクで大丈夫と言って微笑んだ。
ああ、ほんまにずるいーー。
この人には敵わない。
自然と自分も笑みがこぼれる。
照明が明るくなり、いよいよ演奏が始まる。
曲名は『Clover』
エイキがこの日のために作ってくれた曲。
エイキとナオのキーボードから始まる。
〜〜♪
繊細な音が鳴り響いた瞬間、体育館が静まる。
カイリュウがゆっくりと口を開いた。
『初めて目が合ったあの日、ずっとずっと忘れない』
歌い出すカイリュウの声は初めて見た時と同じ、優しく温かい声だったーー。
カイリュウのことが好き。どうしようもないくらいに。
初めて見たあの日から、隣に立ちたかった。それが今こうして叶った瞬間に思わず涙が出そうになる。
まっすぐと前を見つめて歌うカイリュウは眩しく見えて。
そんな姿を見ると不思議なくらい心は穏やかで、さっきまでの緊張はもう忘れていた。
頭の中はやけに静かで、これまでのカイリュウとの記憶が溢れてくる。
初めてカイリュウを見つけた日。
部活に入ると決めた日のカイリュウの笑顔。
海での思い出。
夏祭りの日。
ーー人混みの中でカイリュウを見つけた時、運命だなんて思った。
会うたびに好きが増して、溢れていった。
『僕が笑える理由なんて、君がそばにいてくれるから』
『それが答えなんだ。離れられないように抱きしめるよ。』
〜♪
演奏が終わり、一瞬の静寂の後、大きな拍手が体育館に鳴り響いた。
終わったーー。
みんなを見つめると嬉しそうに笑っている。
安堵で思わず力が抜ける。
そんな俺を見てカイリュウは優しい笑顔で大丈夫だったやろ?なんて言う。
その後、舞台袖でみんなでハグをして、成功を喜んだ。
「セイちゃーん、、もうナオ泣きそうになったわほんまに最高やったな」
「うん。まじでやばかったわ。」
「ナオちゃんもセイトも本当に良かったよ。軽音部、入ってくれてありがとうな」
エイキのまっすぐな言葉にまた胸が熱くなる。
カイリュウの方をチラッと見るとまだ舞台の方を見つめていた。
「カイリュウ、、?」
「ん?おうセイト。めちゃくちゃ良かったな。よう頑張ったな?」
「カイリュウが教えてくれたからや。ありがとう。、、、、歌、やばかった。」
「やろ?笑 誰かさんがカタカタ震えてるから大丈夫か思ったけど歌いやすかったで。」
「余裕やんカイリュウ笑 かっこええわまじで」
「おん、もっと尊敬しろ。」
2人でいつもみたいに軽口を叩き合って笑う。
笑い合った後、少しの沈黙が訪れる。
「、、、、、カイリュウ。今日、待ってるから。どんな答えでもいい。だから、もう逃げんで。」
そう言ってカイリュウの手をギュッと握る。カイリュウはおうと小さく返事をした。
手を離し、後でななんて声をかけてその場を後にした。
ーーー教室の片付けをした後、ゆっくりと屋上へ向かった。
コメント
1件
ライブ本番の緊張感と、演奏が終わったあとの達成感、読んでてこっちまで胸が熱くなったよ…!カイリュウの口パクの「大丈夫」、ずるいくらいに優しくて、セイトの気持ちがすごくわかる。ラストの「待ってるから、もう逃げんで」ってセリフ、めっちゃ刺さった。文化祭の一片がこんなにドラマチックに描けるの、やっぱりこの作品好きだわ。