コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
コイビト
パチリと目を覚ます。
そこには見慣れたオールマイトのフィギアやポスターが貼られてある少し古びた一人暮らしの部屋が映る。
ふわりと先ほどから薄らと香る味噌の匂いが鼻を通る。
お母さんを思い出させる匂いだ。
しかしおかしな事に自分は味噌汁を作った記憶は無い。
と言うことは誰かが台所に居る??!
え?え?え?
ヴィラン???
僕はヒーローになって1年が経って今じゃNo.1ヒーローだ。
襲撃されても可笑しくない。
だが味噌汁を作る意味とは??
僕は思考を放棄した。
そして僕は頼りない足取りで台所をソッと覗いた。
そこには黄土色のふわりとした質感の髪に同じ黄土色の瞳。
瞳は鷹のように鋭い。
その男は慣れたような手つきで自分の台所でご飯を作っていた。
今は午前6時30分なので朝ご飯だろう。
僕は黄土色の髪と瞳で分かった。
ホークスだ……。
ヒーロー活動をしているときの目立った紅の翼はなく、私服でここに居ることが当たり前かのような仕草をしていた。
冷蔵庫から卵を1つ2つと合計で3つほど取り出し、起きてきたばかりの太陽に照らされ銀色に光る立てかけられたボウルにパキッと卵をわり入れる。
そこに塩や味の素などをサラサラと入れる。
そして料理用の箸を取りカタカタとかき混ぜ気付けばそこにあったフライパン(見ていない間に取り出したのだろう)に流し込む。
途端にジュワリと焼ける音と卵の良い匂いがする。
箸を握り直し手際よく円を書くように卵をかき混ぜる。
ふんわりと焼き終わった卵を近くにあった多分洗いたての二枚のお皿に乗っける。
スクランブルエッグだ。
そこにミニトマトを二つずつ、さっきのスクランブルエッグと同時に焼いていた茶色の焦げ後がほんのりと付いたウィンナーを付け足す。
スクランブルエッグの中心にパセリを少々。
ホークスはその場から少し離れ炊飯器を開ける。
そこからはブワリと閉じ込められていた湯気が浮かび上がる。
お茶碗の中に白いつやの入った透明感のある米を積み上げる。
お茶碗を右腕に味噌汁を左手に持ち一つずつ持ってこちらの方へ来る。
ホークス「あ、出久君起きてたんだね」
ニコリ
そう微笑むような笑顔を見せる。
ひとまず僕はホークスがまだ運べていないもう一つの味噌汁とお茶碗をリビングにある机に置きに行く。
ホークス「有難う」
出久「ど、ドウイタシマシテ」
僕はヒーローになっても相変わらずのヒーローオタクだからNo.2ヒーローホークスにガチガチに緊張してしまう。
思わず片言で声が裏返ってしまった。恥ずかしいし、情けない。
ふふふっと、ホークスは笑う。
それを見て顔がゆでだこのように赤くなる。
出久「ホ、ホークスさん、何でここに居るんですか?」
僕はずっと気になっていた事を言う。
ホークスはにこやかな笑みを消し悲しそうな、困ったような………そんな顔をする。
でもそれはほんの一瞬。
1秒にも満たないと思う。
ホークスはいつもの笑みを取り戻し
ホークス「ご飯冷めるからたべよ?」
戸惑いながら答える。
出久「う、うん。」
用意されていたオールマイトの箸を手に取る。
まずふんわりとしたスクランブルエッグから手を掛ける。
箸で切り取り口に運ぶ。
ホークスの作ったスクランブルエッグはふんわりと柔らかなで舌触りもよく僕の好みのトロトロでとても美味しい。
僕はさっきの質問も忘れ朝食に食らいつく。
ホークス「スーパーでも行く?」
朝食も終わり家で暫くぐったりとしているとそう声をかけられた。
勿論僕はNo.2ヒーローと一緒に行ける機会はもう無いと考え即答でOKを出した。
まず第1に見るのはヒーローショップだ。
残念ながらオールマイトは引退した身なのでもう売られてはいない。
いろいろ手前からまじまじと見ていくと見たこと無い新たなヒーローが並べられていた。
ヒーローおたくが取り柄の僕にとってこれはなかなかショックな物だった。
出久「あ、ホークスだ……」
いろいろ見ていた中盤辺りに真っ赤な紅の翼が目に入った。
僕は当たり前のように手に取っていた。
何故取ったのか分からなかったが僕はオタクだしね!と納得してしまった。
手に取ってしまったのは仕方が無いのでお買い上げした。
ホークス「あれ、もう終わったの?ん…なんか買った?」
出久「へ?!……うん。」
ホークスのフィギア買ったことは秘密にしておこう……
ホークス「次は何所まわる?」
出久「えっと────」
僕はこの後は雑貨や道具などを見て回った。
ホークス「矢っ張りここの海は綺麗だね」
僕はオレンジ色に染まった空とそれに反射した空と同じように光る海を最後に回った。
この海は高校に入る前にオールマイトと片付けた今やデートスポット化としている。
でも……少しゴミが増えてきた。
ふとホークスの表情が気になり顔を見る。
ひらりと髪は風にたなびき瞳は光る。
水平線の遥か奥を見透かすような表情にドキリと脈経つ。
出久「好きです……」
ホークス「え?!」
ポロリと口からこぼれ落ちるように言う。
ハッと口を押さえるが再び口を開け言う。
出久「す、好きです!ホークス!」
勢いに任せて言う。
ホークスとは時々あってはいたがそこまで頻繁には会っていないし恋愛的感情も無かったはず……
なのにこの一日で僕は確実にホークスに惹かれていった。
このチャンスを逃せば言えない気がする…
そう思ったからだ。
ソッと顔を確認するとビックリしたようなホークスの顔が映った。
振られるかな?
そう思った。
視界が揺れる。
ホークス「良いよ」
出久「あぁ、やっぱりそうですよね、諦めま……す……………」
やっぱり振られたよね。僕の初恋は一日足らずで終わってしま……た…………
僕はバッと下げていた顔を上げる。
そこにはこちらを向き嬉しそうにはにかむように笑っているホークスがいた。
ポロポロと目から水が流れてくる。
涙腺が壊れたように流れる涙をホークスは優しく拭ってくれた。
二人は夕焼けの中幸せそうに唇を重ね合わせた。
ホークスが辛そうに…苦しそうに落ちていく夕日をなおこしそうに見つめていたのは気のせいだろうか。
パチリと目を覚ます。
そこには見慣れたオールマイトのフィギアやポスターが貼られてある少し古びた一人暮らしの部屋が映る。
ふわりと先ほどから薄らと香るパンの焼ける匂いが鼻を通る。
一人暮らしの始めを思い出させる匂いだ。
しかしおかしな事に自分はパンを焼いていた記憶は無い。
と言うことは誰かが台所に居る??!
え?え?え?
ヴィラン???
僕はヒーローになって1年が経って今じゃNo.1ヒーローだ。
襲撃されても可笑しくない。
だがパンを焼く意味とは??
僕は思考を放棄した。
そして僕は頼りない足取りで台所をソッと覗いた。
そこには黄土色のふわりとした質感の髪に同じ黄土色の瞳。
瞳は鷹のように鋭い。
その男は慣れたような手つきで自分の台所でご飯を作っていた。
ホークスだった。
ナゼホークスは僕ノ部屋にイルんダ………?
◆◇◆◇◆◇◆
「緑谷出久さんの脳に損傷があり記憶障害が起きていますね…」
ホークスは医者から言われる言葉に耳を疑った。
医者から言われた言葉はまとめるとこうだ。
緑谷はヴィランと戦っているとき子供をかばって怪我を負った。
そのとき強う頭を打ち気絶したので周りのヒーローが救急車を呼び病院へ
そして恋人である自分…ホークスがその病院に呼び出された
出久は脳が損傷しており記憶障害が起きている
詳しく言うと一日…毎日記憶がリセットされるらしい。
リセットされる時間帯は19歳辺りらしい
医者には自分とこ関わりが無いけどそれでも出久と共に歩むかい?
と言われた。
俺はもちろんと答えた。
出久は数日後退院した。
覚悟しておくように…
そう言われたが記憶が無くなっていると言うことが想像しにくかった。
だからその辛さが分からなかった。
出久は毎日記憶がリセットされていく。
同じような日が何日も続いて毎回出久が告白する。
始めて一ヶ月くらいたち俺は精神が可笑しくなりかけた。
だが俺は諦めなかった。
俺はどんな出久でも関係ない。
忘れたら何回だって俺を教えたら良い…
そして必ず恋人になる……
いつか記憶を取り戻すその時まで……
あぁ……
その時は……
いつ来るのだろうか…………
コイビト
end