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冬か夏どっちが好きですか?
⚠︎グロテスク
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私は夏が嫌いだ。
この耳をつんざくような蝉の鳴き声も、肌にまとわりつくような暑さも、全てが嫌いだ。
五感を鈍らせ、思考を狂わせるこの季節が、心底忌まわしい。否、むしろ、この狂気こそが私を最も私らしくさせるのだ。
今日の獲物は、昼間に公園で見つけた男。甘ったるい声で話しかけてきた、だらしのない中年の男だ。
その顔に浮かんだ卑しい笑みと、私を舐め回すような視線が、心底鬱陶しい。 その瞬間、男の運命は決まった。
この道を通ることを知っていたかのように、男は裏路地の曲がり角で待っていた。
「こんなところで会うなんて、運命だね」
男は汚い手で私の腕に触れようとした。その瞬間、私は微笑んだ。
完璧な、無垢な少女の笑顔。男は、その笑顔に魅入られたかのように、一瞬動きを止める。その隙を、私は見逃さない。
蝉の声が、再びピークを迎える。その音は、この世の全てを塗りつぶすかのようだ。
私のポケットから抜き取られたナイフが、夕日を浴びて鈍く光る。
その切っ先が、男の腹部に深く、深く突き刺さる。肉が裂け、骨に当たる鈍い音が、蝉時雨に紛れてかき消された。
男の顔から、一瞬にして血の気が引いていく。驚愕と苦痛に歪んだ顔。
男は言葉にならない悲鳴を上げる。口から泡と血が混じった液体がこぼれ、彼の絶望を物語っていた。私はナイフをひねり、刃をさらに深く押し込む。
男の腹部から、熱い塊が噴き出し、私の制服を濡らした。血の匂いと、内臓がえぐられる感触が、脳髄に直接響く。私にはそれが何よりも美しく見えた。
男は痙攣しながら崩れ落ち、アスファルトの上に血の海を広げていく。
私は無感情に、その光景を眺めていた。蝉の声は相変わらず、耳元でけたたましく鳴り響いている。まるで私の行動を祝福しているかのように。ナイフを抜き、男の制服で血を拭う。
冷えた金属をポケットに戻し、私は再び自転車を漕ぎ出した。夕焼けはすでに薄紫に変わり、闇が忍び寄ってきていた。
「夏の殺人鬼」
作・ぺろ