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手が空いたときに、リリアンナのことを相談しに彼の元へ出向かねばならないと思っていたところである。結局バタバタしていて行けず終いになっていたが、まさかこのタイミングで侯爵閣下のほうからこちらへ出向いてくれるとは思っていなかった。


「ランディリック様」


これ幸いと、セイレンはリリアンナの方へ向かおうとしていた足を止め、ランディリックへと向き直る。セイレンが口を開くより先、ランディリックの方から「リリアンナは、昨日からずっとカイルに付き添っているのか?」と問い掛けられて出鼻をくじかれた。だが、そこは年の功で慣れたもの。


「はい、カイルの熱が下がっておりませんし、意識も戻っておりませんので……心配だと申されて……」


問われた質問へさらりと答えながら、視線を医務室奥側――カイルのベッドへと流す。そうすれば、必然的にそこへ寄り添うようにして眠るリリアンナの姿が目に入る形だ。


セイレンの目論見通り、カイルの横へリリアンナが付き添っている様子に目をすがめたランディリックがつぶやく。


「部屋へ戻るようには……」


「はい。もちろん何度もそうなさるようお勧めさせて頂いています。ですが……なかなかに強情でいらして。実はそのことで、わたくしも閣下にご相談をせねば……と思っていたところです」


セイレンの言葉に、ランディリックが眉根を寄せた。



***



オオカミの件があって以降、城主としての勤めが忙しく、なかなかゆっくりと腰を落ち着けて城内へ入ることの出来なかったランディリックである。


城壁修繕などへの指示を臣下らに出してからも、数名の兵士とともに領地内の見回りや、領民の話を聞くことに時間を割いた。

初日の晩は兵たちからの諸々の進捗報告などを聞き、そのあとで執務室へ戻って通常業務をこなした頃には、深夜を回っていた。


リリアンナのことは常に頭の片隅にあったし、ずっと気掛かりだったが、さすがにそんな夜更けに――まだ幼いとはいえ――女性の部屋をおとなうわけにはいかない。


リリアンナの自室を訪問することをグッと堪えたランディリックだったのだが、翌日も結局早朝から激務に追われて昨日と同様になってしまった。


彼自身も昨夜は自室のベッドで眠れていない。


執事のセドリックから、リリアンナの専属侍女ナディエルが熱を出して寝込んでいると聞かされたのは、つい先ほど――深夜に執務室を出てすぐのことだ。


本来ならば眠っているはずのセドリックが、主人を気遣い起きていてくれたことを申し訳なく思ったのだが、ねぎらいの言葉を掛けたと同時にそんな話を聞かされて、言葉に詰まった。


セイレンの見立てでは、オオカミに襲われたショックによる、精神的疲労からの発熱らしい。


「リリアンナは?」


では、同じ目に遭ったリリアンナも同様に寝込んでいるのではないか?


そう思ったランディリックだったのだが――。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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