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斗希と体の関係を持ち、約一週間が過ぎた。
そして、明日の土曜日に休みが取れたから結婚指輪を買いに行こう、と約束している。
最近の私と斗希は、毎晩一緒に眠っていて。
つまり、毎夜斗希に抱かれている。
最近の私と斗希との間には、新婚もしくは付き合い始めのような雰囲気が流れている。
ただ、お互いに、一度も好きだと口にする事はない。
私が好きだと口にしないのは、今だに斗希への気持ちがよく分からないのもそうだけど、
その言葉を出してみて、斗希がどう反応をするのかが分からなくて、怖いから。
その言葉を出して、突き放されたら、嫌だから。
斗希は、どうなのだろうか?
私がそうであるように、
斗希も私にそれなりに特別な感情を持ってくれているようには感じるけども。
ただ、好きだと言わないって事は、好きではないって事なのだろう。
金曜日の夜である今。
斗希の帰りが遅くて、私は不安になっている。
もうすぐ、日付が変わろうとしているのに、斗希は帰って来ない。
明日は斗希も休みだから、仕事場の誰かと飲みにでも行っているのかもしれない。
もっと単純に、仕事かもしれない。
けど、もしかしたら、浮気しているのだろうか?
そう考えると、不安で胸が苦しくなって、
そんな自分に戸惑う。
ふと、昨日の夜の事を思い出した。
「もう2時か。寝ないと」
斗希はベッドボードのラックに置いてある目覚まし時計を手に取り、見ている。
その目覚ましのタイマーは、5時30分で、
7時にはこの家を出る私に合わせてくれている事に気付いたのは、一緒に暮らし出して少ししてから。
斗希は、この時間に起きて、 6時過ぎには、朝食を用意してくれている。
斗希は、私より家を出るのが一時間以上遅いので、本来なら一時間長く眠れる。
だから、朝食の用意はいいから、と一緒に暮らし出してすぐの頃に言うと、
「結衣が出て行った後、家事の時間に充ててるから気にしないで。
今迄帰って来てからしてたけど、
朝からする方が、最近楽だって気付いた」
そう言われた。
「斗希、早く寝ないと」
斗希の腕の中、私がそう言うと、
返事の代わりに、額にキスをされた。
先程迄、私は斗希に抱かれていた。
私と体の関係を持ってから、斗希は浮気を辞めた。
私がそう思っているだけで、実際は分からないけど。
毎夜、そうやって斗希に体を求められる事が、浮気していないのだと思う根拠なのだけど。
後、帰宅時に、斗希から他の女性の匂いや、シャンプーのような香りがしなくなった。
帰宅の遅い斗希にもやもやしていると、
玄関の扉の鍵が開錠される音がした。
私は思わず、部屋から出て玄関迄行ってしまう。
帰って来た斗希の顔は、どこか疲れていて。
仕事だったのか、と浮気を疑ってしまった自分が、嫌になる。
もし、斗希が浮気をしていても、
私達の今の関係では、それを責める事も出来ないし、
私自身、その事で斗希を責めたいのかも分からない。
「おかえりなさい」
その言葉に、斗希は表情を変える事なく、何も言わずに私の横を通り過ぎた。
その感じ。
私に対して、怒っているのだろうか?
なんで?と、斗希の後を追う。
斗希に追い付いたのは、リビング。
「斗希、なんで怒っているの?」
この人に私は、散々酷い事をしたかもしれないが、
今さらそうやってこの人の機嫌を損ねている事に、思いあたらない。
斗希は、ダイニングテーブルに、
一般的な手紙サイズの白い封筒を投げ捨てるように、置いた。
それは、ほんの少し重みを感じる音。
この封筒がなんなのか?と、それを手に取る。
その封筒には住所と宛名が機械的な文字で書かれていて、切手も貼られている。
木村正人、という、知らない人宛のその手紙。
私はその封筒を開いて、中身を確認する。
中には、三枚の写真が入っていて、
それを手に取る。
思わず、それを手から落としそうになる。
その写真は、斗希と川邊専務のお姉さんの円さんが写っていて。
それは、今まさにラブホテルに入る所で。
封筒の中に、一枚の紙が入っていた。
そこには、封筒と同じパソコンで書いたような文字。
『お前の嫁は、この男と不倫している』
と、その一文が書かれている。
「円さんの旦那宛に、送られて来たらしい」
その言葉に、宛名をもう一度確認する。
そこに書かれた住所には、私も見覚えがあって。
その宛名の、木村正人は、円さんの旦那さんの名前なんだ。
そういえば、興信所の報告書で円さんの事を調べて貰った時に目にしたかもしれないけど。
覚えてなかった。
「今日の昼、円さんから連絡あって。
仕事終わってから、円さんの家でさっき迄旦那さんと話していたんだけど…。
とりあえず、本当の事を旦那さんには話した。
俺が無理矢理って。
旦那さんもまた馬鹿みたいにいい人で、俺を訴える事はしないって。
事前に、円さんが俺の事を篤の幼馴染みだと話していたみたいで。
それで」
その、訴えるは、普通の不倫の場合の慰謝料請求という事ではなく、
強姦や脅迫、もしかしたら、他にも何かの罪になるのかもしれない。
この人が、円さんにしていた事は、そういう事。
「とりあえず、良かったよ。
円さんの家庭が壊れる事なくて。
けど、今まで通りってわけにはいかないだろうけど」
それは、そうかもしれない。
円さんは脅されていたのだとしても、
旦那さんとは別の人と体の関係を持っていて。
それを旦那さんに知られて、何事も無かったように、なんて無理だろう。
「結衣、これが本当の目的だった?
俺の心に入り込んでから、こうやって裏切る事が」
その目は、私に対して失望していて。
今、私が今回の事を引き起こしたのだと、斗希に思われている事に気付いた。
「私、知らない!
こんな写真、送ってない!」
そう強く訴えても、私を見る斗希の目は変わらなくて。
信じて貰えないのだと、悲しくなる。
そもそも、私は復讐する為にこうやって斗希に近付いた。
そんな私が、信じて貰えるわけがないかと、すぐに諦めてしまう。
斗希は、私の手の中にあるその写真を一枚手に取り、見ている。
「―――結衣、ごめん。
結衣じゃない」
その言葉に、え、と斗希を見る。
「この写真、春先かな。
円さん、コート着てるから」
そう言って、写真を見えるようにこちらに向けた。
斗希はスーツ姿だけど、円さんは春物の薄手のコートを着ている。
確かに、私が斗希を恨み出したのは、
夏になってから。
私が興信所に頼んで、二人の事を写真に撮って貰った9月半ばも、まだまだ気温は暑かったから、半袖だった。
「俺、色々恨まれているから。
結衣だけじゃなく。
日頃の行いが悪いから」
そう笑うけど、今回の事はそれなりに堪えているのか、
斗希からはいつもの余裕を感じ取れない。
きっと、斗希の事を恨んでいる人間は、私以外にも沢山居るのだと思う。
斗希の過去の話を聞いていて、
その話に出て来る大半の人間が、斗希を恨んでいてもおかしくないような気がした。
そのリストには、普通ならあり得ないはずの、斗希の両親さえも、加わる。
私はかける言葉が分からなくて、
そっと斗希を抱き締めた。
言葉は見付からないけど、私はこの人の味方なのだと、行動で伝える。
「結衣…」
斗希も、私を抱き締め返してくれる。
その時、斗希のスーツのポケットから、
着信音のような音が聞こえた。
斗希は私から身を離して、ポケットからスマホを手に取る。
「篤…」
その音は、川邊専務からの電話のようで。
斗希は覚悟を決めるように、その電話に出た。
もしかしたら、川邊専務も今回の円さんと斗希の関係を、知ったのだろうか?
でなければ、こんな時間に電話なんて…。
「え、今近く迄来てるって…。
え、あ、うん。
結衣も居る」
そう言って、私を見る斗希。
その目に、私も戸惑いを返す。
「あ、うん。分かった。
下に着いたら、チャイム押して」
そう言って、斗希は電話を切った。
「川邊専務、今から来るの?」
斗希の言葉から、そう読み取った。
「うん…。
円さんの事かと思ったけど、違うかもしれない」
「なら、なんで?」
こんな時間にわざわざ訪ねて来るなんて…。
「結衣が居るかどうかも訊かれて。
その上、来るのは篤だけじゃなくて、
篤の嫁の梢ちゃんも一緒って」
その言葉に、心臓が嫌な音を立てている。
胃が気持ち悪くて。
きっと、私と川邊専務の事を、
川邊専務の奥さんの梢さんに知られたのだろう…。
川邊専務本人が、打ち明けるとは思えない。
一体、どうして?
川邊専務と奥さんの梢さんは、
電話の後すぐにやって来た。
斗希が、川邊専務と奥さんをリビングへと誘導した。
ソファーで四人座るのは狭いので、
ダイニングテーブルで、私達は向かい合う。
私と斗希の前に、川邊専務と梢さんが座る。
川邊専務の奥さんは、以前川邊専務に見せて貰った画像のようにとても美しい人なのだけど。
泣いた後なのか、目が腫れている。
妊娠何ヵ月なのかは分からないけど、
お腹が大きくて。
「初めまして。
川邊の妻の梢です。
主人が、いつもお世話になっています」
私の視線に気付き、梢さんの方から私にそう頭を下げる。
「斗希の妻の、結衣です…」
その声が、上擦る。
この人に対する罪悪感で、目がまともに合わせられない。
「あ、何か飲む?
冷たいものでよければ、すぐに用意出来るけど」
そう立ち上がる斗希に。
「いや。いい」
川邊専務がそう言うと、斗希は再び腰を下ろした。
「そういえば、子供達は?」
そう訊いた斗希に、
「ここに来る前に、私の実家に預けて来ました」
梢さんが、そう返す。
ふと、今気付いたが、川邊専務は今日着ていたスーツ姿のままで。
帰宅してから、着替える間もなく梢さんと話していた、という感じなのだろうか?
「斗希、小林、何の話で俺らが来たか、分かるだろ?」
「うん…」
川邊専務の言葉に、斗希が頷いている。
「梢宛に、今日、これがうちのポストに入っていて」
川邊専務が差し出したその封筒は、
先程見た、円さんの旦那さん宛のものとは違い、少し大きな茶色の封筒。
その封筒には宛名だけで、住所の記載や切手が貼られていない事から、
直接、ポストに入れられたのだと思う。
「で、この写真」
川邊専務は、その封筒から5枚の写真を取り出した。
その写真に写っているものに、目を見張る。
それは、私が川邊専務を支えながら、ホテルの部屋へと入る瞬間を捉えている。
この光景は、間違いなく、あの出張の時。
川邊専務と飲みに行き、薬を飲ませ意識朦朧としている川邊専務を介抱しながら、
彼の部屋へと…。
「待ってください。
これが何なのですか?
この時、川邊専務はけっこう酔っていて、
一人で歩けそうになかったから、私が部屋へとこうやって連れて行っただけです」
この写真を撮ったのが誰なのかは、今はいい。
この写真だけならば、まだなんとでも言い訳出来る。
目の前の川邊専務を見ると、私の言葉をただそうやって聞いてるだけで。
その感じだと、もう全てを奥さんの梢さんに話したのだろうか?
「小林、もういい。
梢がここに来たのは、お前から本当の事を聞きたいからだ」
それは、もう川邊専務は本当の事を全て話したのだろうか?
「川邊専務、あの時凄く酔ってて。
酔ってるのをいいことに、私、何かを合った風に装って。
本当は何もなかったのに。
けど、その事で川邊専務と斗希を脅して、私、斗希と結婚したんですよ」
そう、梢さんに訴えかけるように言うけど、
その目は、私を見返すだけで。
「小林、もういい…。
嘘、付くな。
本当の事を、話して欲しい」
再び、同じような言葉を川邊専務は口にする。
私は、だからって本当の事を、話せるわけなんてなくて。
「実はな、封筒に入っていたのはその写真だけじゃねぇんだ」
そう言って、川邊専務がテーブルに置いたのは、
斗希が持っているのとは形が違うけど、ICレコーダーだろうか。
「これ自体に録音されてるわけじゃなくて、これに差してあるSDにそれが録音されてて」
心臓が、早鐘を打つようにドキドキとしている。
川邊専務は、それを触り再生した。
『川邊専務、もう辞めて下さい。
…辞めて…いや…。
もう辞めて!
いや…。
…うるせぇ。
逃げんな、殺すぞ。
ヤらせろ…』
思わず梢さんの顔を見るけど、
苦しそうにその目を閉じている。
その音声は、流れ続けていて。
「もういいです!」
私はそれを触り、音声を止めた。
「さっきの写真は分かんねぇけど、
これを録音出来るのは、その場に居た俺と小林のどちらか。
いや、事前に誰かがあの部屋に盗聴器とか仕掛けてあったなら、分からねぇけど。
いや、別に、お前が何かを企んでとかは、もうどうでもいい。
ただ、本当の事を、お前の口から梢に告げて欲しい」
その川邊専務のお願いは、とても酷な事で。
けど、私以上に、それを告げられる梢さんの方が、辛い。
「―――川邊専務のお酒の中に、薬を入れました。
だから、川邊専務は理性を失って…。
あの晩、私と川邊専務は関係を持ちました。
先程も話したように、それを脅しにして、斗希に結婚を迫りました。
ごめんなさい!
私、川邊専務の事を利用したんです!
つまらない斗希に対しての復讐心の為に…」
言葉にしていると、自分のしてしまった事がとんでもない事なのだと、改めて思わされてしまう。
斗希に対する復讐の為に、
この人達をこんな風に巻き込んで。
なんで、こんな事をしてしまったのだろう。
「結衣さん…。
あなたと斗希さんに何があったのかは知らないし、それ迄を知ろうとは思わないです。
ただ…、その音声にあるように、
篤さんがあなたに酷い事をしたのだとしたら。
それは、私からも謝ります。
ごめんなさい!」
梢さんの目から、涙が溢れていて。
何故、この人が私に謝っているのかと、
混乱してしまう。
「私、これを聞いても篤さんの事が大好きなんです…。
だから、別れたくない…。
結衣さん、ごめんなさい…。
篤さんがあなたに酷い事をして…。
私も、篤さんと一緒に謝るから…」
なんで、この人の方が私に謝るの?
だって、私が川邊専務を罠に嵌めたのに。
「なんで、梢ちゃんが謝るの?
おかしい…。
だって、篤は結衣に嵌められて…」
私の心を代弁するような、斗希の言葉。
「もし、そうだとしても…。
その音声を聞いてたら、篤さんが結衣さんにした事は、同じ女として許せる事じゃない。
だけど、私…篤さんと別れたくない…」
梢さんの目から流れる涙も、その言葉も、私を苦しめる。
人を傷付ける事が、こんなにも苦しいなんて。
よくも悪くも、私は今まであまり人と関わって来なかったから、
それを知らなかった。
「梢ちゃん謝らないで。
全部、結衣が仕組んだ事だから。
俺、前に一度結衣からその音声と全く同じ物を聞かせて貰った。
それを録音したのは、結衣だから。
それを録音する為に、わざと篤に犯されているかのように。
ねぇ、結衣?」
私も思っていた。
先程聞かせて貰ったそれは、私が録音したそれと、全く同じものだと。
もし、先程川邊専務が言っていたように、盗聴器の可能性も全くないわけではないけど。
ただ、私が録音した部分と同じで、
音の聞こえ方も、全く同じで。
「どうせ、部屋に入る所も、誰かに撮らせたんだろ?
ああ、あれ?よく利用してる興信所の人間にでも。
梢ちゃんにこれを見せ付けて、どうしたいの?」
私を見る斗希の目は、冷たくて。
私に、幻滅している事が分かる。
「―――違う…。
私は、知らない」
私じゃない、と首を横に振る。
横に居る斗希の手が私の首に伸びて来て。
そのまま、私は床に突き飛ばされ椅子から転がり落ちるような形になる。
そんな私の上に斗希が乗っていて、
両手で、私の首を絞めている。
それは、苦しい、というよりも、痛くて。
首の骨が折れるんじゃないかと、思った。
「斗希、辞めろ!」
その川邊専務の言葉と同時に、斗希が私から離れた。
斗希を見ると、川邊専務が後ろから斗希を取り押さえている。
「篤!離せっ!」
そう言って、斗希は暫く暴れていたけど、
少しして落ち着いたのか、抵抗を辞めた。
「―――離して。
篤達、もう帰ってくれない?」
「けど、お前…」
「大丈夫。落ち着いたから。
結衣には、もう暴力は振るわないから。
二人で話したい」
斗希のその言葉をいぶかしみながらも、
川邊専務は、斗希を拘束していた手を離した。
「斗希、また連絡する。
梢、帰るぞ」
川邊専務はそう言うと、梢さんの肩を抱き、リビングから出て行った。
遠くで、玄関の扉が開閉する音が聞こえた。
「斗希、本当に私じゃない。
私には、川邊専務の家庭を壊したい理由がない」
「けど、あの録音…」
斗希の言いたい事は、分かる。
あの録音は、私しか手にしていない。
先程よりも、盗聴器の可能性なんてないと、思う。
ただ、私はあの録音を、もう削除している。
それは、斗希に抱かれた翌日の日曜日に、
自分のスマホと、パソコンに送ったそのデータを、削除した。
だから、もう一度それを聞いて、川邊専務の元に送られて来たそれと同じものかを聞き比べる事が、出来ない。
ダイニングテーブルの上を見ると、
川邊専務は、先程の写真もICレコーダーも置いて行っている。
流石に、忘れ物だと休み明けに川邊専務に渡そうとは思わないけど、
このままこちらで処理していいのだろうか。
先程、斗希は円さんとの不貞の写真を持って帰って来た。
円さん夫婦も、川邊専務夫婦も、
そんな物を自分達の手元に置いておきたくないのだろう。
だから、今テーブルの上にあるそれらは、忘れたわけじゃない。
「ごめん…」
斗希は手を伸ばし、私の首に触れる。
「なんだか、混乱して。
泣いてる梢ちゃん見てたら結衣が許せなくて。
それに、結衣がそんな事をしたのかと、裏切られたような気がした。
最近、俺達上手く行ってると思っていたから」
「うん…」
「けど、一番は…。
俺、どっかで、こうなる事を望んでいた。
結衣と篤の事が、梢ちゃんに知られればいいのにって。
そんな自分が許せなくて、結衣に自己投影したのか…ごめん…」
斗希はそう言うと立ち上がり、そのまま自分の部屋へと入って行った。
私は、それを追いかける事は出来ない。
その壊れそうな斗希の背を見ていたら、先程みたいに簡単に抱き締める事が出来なかった。
今、優しくしたら、さらに自責の念を持たせて、斗希を壊してしまいそうで。
斗希は今まで沢山の人を傷付けて来たけど、
その度、自分自身も傷付いていたのだと、円さんの件と川邊専務の今日の出来事を見ていて、気付いた。
だけど、斗希は他人を傷付ける事を辞められないのだろう。
自分も傷付くのに、なんで。