テラーノベル
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私は、思い切ってボールを投げた。
樹さんのアドバイスのおかげで上手くスペアが取れ、嬉しくて思わず飛び上がってしまった。
樹さんも、座ってたイスから立ち上がって私とハイタッチしてくれた。
その瞬間に2人とも笑顔になり、嫌なことを全部忘れられた気がした。
少しでも私を和ませようと、樹さんは今日のことを必死に考えてくれたんだろう。
双子の兄がしたことの、罪滅ぼしを。
樹さんは、何も悪くないのに……
「次もストライク」
樹さんは、宣言してからボールを投げた。
気づいたら、隣のレーンの4人組の女性達も樹さんのことを応援しだした。
自分達のゲームそっちのけで。
そして、宣言通りのストライク。
自然に笑顔のハイタッチ。
隣の女子達も、大拍手でキャーキャー言ってる。
樹さんは、彼女達にも軽く手をあげて反応した。
それに対して、また黄色い声が飛んだ。
さすが元モデルさん、女子の扱いになれてる。
でも、それも、全く嫌味のない爽やかな印象を受ける。
結局2ゲーム楽しんで、私達はボーリング場を出た。
「何だかスッキリしました。本当にありがとうございます」
私は、丁寧にお礼を言った。
「腹減ったな。柚葉、好き嫌いは?」
「え? あ……特には……」
「なら、ラーメンがいい」
樹さん、ご飯も誘ってくれるの?
「ラーメン……」
「嫌なのか?」
「い、いえいえ。ラーメンすごく食べたいです」
柊君とは全く違うチョイスに戸惑いながらも、ラーメンは嬉しかった。
「美味しい店があるから」
そう言って、近くのお店に連れていってくれた。
着いたら、かなり混雑してて、お客さんが入口の中で並んで待っていた。
みんなが一斉に樹さんを見る。
面白いくらい男性も女性も、小さな子どもまでが樹さんを驚きの目で見ている。
さっきの女性達も、樹さんがボーリング場から出て行く時、すごく残念そうだった。
樹さんって、本当にモテるんだろう。
きっと、柊君以上に――
少し待ってから、私達はラーメンを食べた。
温かいスープが身に染みて、体がポカポカした。
「本当に美味しかったです。お腹いっぱい」
食べ終わってから、少し距離がある道を、2人で駅まで歩くことにした。
「ボーリングの後のラーメンは最高だな」
「本当ですね」
「ん? 本当に思ってるのか?」
樹さんは、ちょっと意地悪そうに笑った。
「思ってますよ、塩ラーメン。大好きなんです。美味しかったなぁ」
「良かった。じゃあ、また連れてってやるから。次は餃子も食べるべきだな」
また、連れてってやるから……
って、本当に? それとも社交辞令なの?
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