テラーノベル
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浴槽に広がるバスボムの泡と色に、僕はとてもわくわくした。
「早く入ろ!」
「ああ」
二人で服を脱いで暖かい浴槽にゆっくりと浸かる。
体を見られるのは恥ずかしかったけど、それ以上に甘く優しい香りで満たされた浴槽が不思議で綺麗でたまらなかった。
「ふふ、いい匂い!」
「そうだな、喜んでくれて良かった」
父さんは優しく微笑んだ。
珍しかった、父さんはいつも怒っていたから。
「父さん!ありがとう!」
「⋯どういたしまして」
父さんは恥ずかしそうに目をそらす。
「父さんと家族でいられて僕幸せだよ」
僕はお湯を両手ですくって眺めながら、そう言った。
「⋯そうか」
少し小さな声で返答する父さんの顔を見上げる。
「父さん?」
嬉しそうだけど、少し寂しそうな父さんの目。
「父さんは、僕と家族でいられて嬉しい?」
そう問うと、父さんは僕を抱きしめた。
初めてのことだった。父さんに抱きしめられたのは。
「父さん⋯?」
「幸せだよ、お前と家族でいられることが何よりも」
「⋯へへ」
照れくさくなって笑うと、父さんも笑ってくれた。
「背中流そうか?」
「いいのか?ありがとうな」
「へへ、父さんのためならなんでもするよ!」
「いい息子を持ったものだな」
「僕もいい父さんを持てて幸せ!」
二人で笑いあって風呂を済ませると、アイスを食べてテレビを見る。
その日はやけに楽しくて眠るのがもったいないぐらいだった。
「おやすみ」
「寝たくないよ、まだ話そうよ父さん⋯」
「明日も話せるから今日は早く寝なさい」
「父さん⋯」
「⋯いい子だから早く寝ような」
「⋯」
目で訴えると、父さんは僕に近づいて頭を撫でた。
「じゃあ眠れるまでそばにいてやるから」
「へへ、寝なかったらずっとそばにいてくれる?」
「寝なかったら怒るぞ」
「えー⋯」
父さんがそばにいてくれる、それだけで僕は安心できた。
そのおかげか、だんだんと眠くなってきていつの間にか眠りについていた。
「いい夢見ろよ」
父さんのそんな声が聞こえた気がした。
(幸せだな⋯)
思わず微笑んでしまう。ずっとこんな日々が続けばいいのに、そう思って意識が途絶えた。
コメント
5件
私も一緒に入っても良いですか
あ゛〜〜心が浄化される゛〜〜