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物騒探偵社
国木田「だざあああああい!なあにをさぼっとる!お前には仕事が山積みなんだぞ!」
今日も恒例行事のように国木田の怒声が響く。
太宰「サボっていないよ。休養も仕事なのさ♪」
客間でだれる太宰。もうこのようなやり取りを探偵社員達は何千回と聞かされている。
国木田「なぁにが『休養も仕事♪』だ!真面目に働け!」
太宰「国木田君、真面目に働いたら死ぬんだよ」
さも本当であるかのように真剣なまなざしで対応する太宰。
コンコン。探偵社の扉が遠慮がちにたたかれる
太宰「はっ、美人の予感!」
そう言って太宰が扉を開ける
そこにいたのは、真っ白なローブをつま先までかぶっている謎の女。顔はパーカーで隠れているが胸のふくらみで女だと判断することができる
太宰「君は…」
太宰が発言しようとした瞬間、社内に謎のガスがまかれる
国木田「なっ!」
『過去の扉を開けよ。さすれば未来の扉が開かれん。かの者の真の姿を見届けよ。さすれば夢の迷宮から脱せよう。』
謎の声が聞こえた後ガスが消える。
そこには倒れている太宰
与謝野「おい、太宰!大丈夫かい?」
与謝野が太宰の首に手をあて脈を調べる。
賢治「大丈夫なんですか?」
太宰の首から手を放し瞳孔を見始める
与謝野「あァ。生きてはいるよ。ただ深い昏睡状態にあるけどね。」
探偵社員がひとまず大丈夫だったと、安堵する
谷崎「なンかの異能でしょうか…」
敦「大丈夫かな、太宰さん…」
太宰の検診を終え与謝野が立ち上がる
与謝野「体に不調のあるやつはいないかい!」
皆があたりを見回すが手を挙げるものも声を挙げるものもいない
国木田「…太宰をどうします?」
賢治「とりあえず、医務室に運びましょう!」
医務室
乱歩「谷崎。電話持ってきて」
太宰を医務室のベッドに寝かせたあと乱歩が言った。
谷崎「はい、」
そういって谷崎は電話のある事務室のほうへ行った
敦「どうしていきなり昏睡状態なんかになったんですか?」
与謝野「普通、いきなりなることはないから異能の類だろうね。」
与謝野がベッドを整えたり必要なものを近くに寄せたりした。
国木田「太宰の異能無効化があるにもかかわらず。…か。」
谷崎「持ってきましたよ、」
谷崎を電話台にしどこかへかける乱歩
乱歩「久しぶりだね!素敵帽子君!」
社員が驚愕する
中也『…何用だ、』
いやそうな声が電話口から聞こえる。それを意に介さず話し始める乱歩
乱歩「いやぁ、太宰が倒れたんだよ。」
中也「はぁー、」
疲れ切ったようなため息。
中也「ンなこと、どーだっていいわ。切るぞ。」
乱歩「太宰の社員寮にポートマフィア時代の週報がある。」
乱歩「たしか題は…」
乱歩が言おうとしていることを遮るように中也が言う
中也「分かった分かった。んで?何してほしいんだよ。」
乱歩「ご協力ありがとう!」
乱歩「一週間後のこの時間から十分間。社員寮には誰も近づけさせないから、なにしてもばれないよ!」
乱歩が中也に遠回しに盗りに来いと言う
中也「お気遣いどーもさん。とりあえずそっちに行く。」
十分後
乱歩「君にしては遅かったね。」
本当に来た事に社員が驚く。
中也「仕事片してきたんだよ」
国木田「乱歩さん。なぜ彼を呼んだんですか?」
乱歩に国木田が耳打ちした。
乱歩「太宰のことは素敵帽子君に聞いた方が早いよ。」
与謝野が中也に説明をした。
中也「………」
中也が絶望の顔を浮かべる。
賢治「どうしましたか?」
中也「ポートマフィアでもそんなことがあったんだよ…」
ぎりぎり聞こえるくらいの声で絞り出す
谷崎「なにか知ってるんですか?」
中也「……まぁな。倒れる前変な女が来たって言ってたよな。その女が言ってたことってわかるか?」
乱歩『過去の扉を開けよ。さすれば未来の扉が開かれん。かの者の真の姿を見届けよ。さすれば夢の迷宮から脱せよう。』
乱歩が一言一句違わせずに言う。
敦「よく覚えてますね…」
中也「それを唱えながら太宰の体に触れ、」
乱歩が太宰に触れる
中也「ちょ、まてっ、」
中也の言葉が言いきられることなく切れた。
豪邸の前
探偵社員+中也
谷崎「な、なんかここ寒い、ような気が…」
ぶるぶる震えながら谷崎が言った。
中也「終わった…なんてことを…」
中也が頭を抱える
敦「ど、どうかしましたか?というか、ここどこですか、?」
敦が寒さに耐えれずその場で足踏みを始めた。
中也「ここは、太宰の生まれの地だ。」
中也は普段から厚着をしているので大丈夫なようだ。
乱歩「ふうん、どうでもいいけど。素敵帽子君、コート貸してよ」
中也「いやだ」
中也が絶対手放すものかと、コートの裾をにぎった。
賢治「あ、ここ来たことあります!」
与謝野「依頼かい?」
与謝野も薄着だがさむがっている素振りはない
賢治「いえ。まだ村に住んでいたころ、おつかいでここを通ったんです。たしか青森と言ってました!」
国木田「青森とは…またずいぶん遠い所に…」
国木田「とりあえず、道行く者に帰る方向を確かめながら帰るか…」
国木田が手帳を開く
中也「無駄だ。ここにいる奴らは俺らのことが見えてない。もちろん物にも触れられない。」
中也が豪邸のほうへ向かって歩き重厚な門をするりと実体がないかのようにすりぬけた。
中也「ここは太宰がクソガキだったころの世界だ。帰っても探偵社はない。」