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賢治「どうやったら元の世界に帰れますか?」
中也「糞太宰の…成長を見届けたら、帰れる」
中也がそばにあったベンチの雪を払いながら言った
与謝野「先刻から、アンタなんでも知ってるねェ」
訝しげに中也を見つめる。
中也「ポートマフィアでも同じようなことがあったんだよ。」
雪を払いきったベンチに腰掛ける中也
乱歩「寒い!どこでもいいから温まりたい!」
といきなり叫び乱歩は門をすり抜け豪邸に入っていった
【豪邸入口】
乱歩「さすが無駄にでかくて金かけてるだけあるね!中は暖かい!」
入口からはいって近くで嬉しそうに声をあげる乱歩。
中也「太宰には気をつけろよ。もしかしたら太宰には見えるかもしんねぇ。」
谷崎「それはどういう意味です?」
谷崎も入ってきた。
中也「俺らがあんまでかい声をあげると過去を見られてる側が気づいちまうんだ。」
敦「つまりは太宰さんが…?」
その時よこから食事を持った給仕が二人歩いてきた。
給仕A「まったく。修ぼっちゃんは本当に手がかかる。」
給仕B「本当。奥様もあの子を手厚く扱え。という割には家にいることがほとんどないし…」
谷崎「しゅうぼっちゃん?って誰ですかね…」
中也「………」
中也が黙って給仕の歩いてきたほうに歩を進める
【調理室】
調理室には座り込んだ幼少期の太宰がいた。項垂れており表情は見えない。右手には床に落ちている果物ナイフでできたであろう傷があった。しかし広い傷口ではありながらも、出血は少なかった
不気味なまでに真っ白な肌の上で滴る赤い血はいっそ芸術的であった。
与謝野「寝ているのかねェ」
与謝野が独り言のように口を動かした。
太宰「……………だれ…」
ポーズを変えないまま太宰が聞いた。
国木田「聞こえていたのか…」
先刻の与謝野の倍は小さい声で国木田がつぶやいた。
今度の声は聞こえなかったらしく太宰は頭を上げ周りを見渡した。
ただ、その瞳はどこも見ておらず気配で誰がいるのかを感じ取ろうとしていた。
太宰は目が見えないのだ。
敦「目が見えていない…?」
中也「みてぇだな…」
すると太宰が迷うことなく歩き出し、中也の胸倉あたりであろうところをつかんだ。
中也「⁉」
しかし、その手は空を切った。
太宰「……………気のせい、か。」
そのまま給仕が切ったであろうリンゴを一口かじり、ごみ箱に捨てた。
そして、まだ切っていないリンゴを手に調理室をでていった。
賢治「太宰さん目が見えてないんですか?」
賢治が普通の声量で問うた。
国木田「今はそんな兆しはないのだが…」
乱歩が無言でゴミ箱をあけた。
乱歩「これは…」
皆がゴミ箱を覗きこむ。そこにあったのは血でぐちゃぐちゃになったリンゴだった。
【調理室前】
しゃり。
太宰「…………」
太宰がリンゴを一口ほおばる。拾え切れなかった果汁が口を伝い、首を伝った。
それを気にも留めず太宰はゆっくりと自分の部屋へ歩いて行った。
【太宰の部屋】
屋敷の右奥の一番上に太宰の部屋はあった。まるで、見られてはいけないものを隠すかのように。
それと不釣り合いなように部屋は豪華であった。ベッドに横たわる太宰は浮いて見えた。死体が普通の景色では浮いて見えるように。
太宰「……………」
国木田「寝ている?」
与謝野「起きているねェ」
与謝野が即答した。
太宰「………ねぇ。なんでついてくるの」
皆の体が固まる。
中也「よぉ太宰。」
中也が意を決したように話しかけた。
太宰「……だざいって誰。」
中也と乱歩が目を合わせる。
中也「………なんでもねぇ。手前名前と年齢は?」
苦し紛れの言い訳をした。
太宰「…津島、修治………8歳」
中也「ぶふっwww」
中也が吹いた。
太宰「君こそ、背が小さいように見受けられるけど。いくつなの?」
太宰がむっとした顔をして反撃をする。
中也「小さくねえし!」
与謝野「おやアンタ目が見えないんじゃないのかい?」
太宰「見えないけど……普通初対面の人に質問するときは自己紹介からじゃない?」
横になっていたからだを起こしベットに座る太宰。
与謝野「アタシは与謝野だよ。よろしく。」
与謝野「それで?どうして中原の背が小さいことが分かった。」
しれっとディスる与謝野
中也「小さくねぇ!」
太宰「…………勘……」
乱歩「本当は?」
乱歩が嘘をつく太宰に問うた。
太宰「声の位置。」