テラーノベル
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「……言っておきますけど、私も知りませんでしたからね。多分、高井戸さんと桶川さんがグルだったんですよ」
「高井戸さん?」
「彼女にだけは、携帯の番号を教えていたんです。時々、連絡をくれて、近況なんかを話していました」
なるほど。高井戸さんか。
小さい彼女は人に警戒心を与えないところがある。
「あとうちのババアな」
お互い別に暮らしているんだから、そんなに話もしないけど、彼女が勤めたことくらい教えてくれてもいいだろう。
けれど、咲坂がここを職場に選んだということは、いつかは俺に会うつもりがあったっていうことだ。
それが分かっただけで、強気な自分が戻ってくる。
「今日は何時に終わる? 十二時間以上は待たない」
「二十二時には、片づけまで終わります」
「じゃあその後はあけとけ。知り合いのやっているバーに行こう」
「飲むんですか?」
「もちろん。もう仕事上のしがらみもない。女を落とすときは、こんなかしこまった店じゃなくて、それに向いた場所に行かないとな。言っておくけど、俺はもう充分待ったからな。これからは強引にいかせてもらう」
「……私は、こんなに早く会えるとは思ってなかったです」
結局待っているほうは時間が長く感じるということか。
苛立ちを通り越しておかしくなって笑うと、彼女は困ったように小首を傾げた。
俺はそんな彼女を見つめ、たった一言に思いを込める。
「……会いたかった。俺をこんなに振り回す女は初めてだよ」
*
その後、恭平は高井戸さんを連れてやって来て、俺たちは料理に舌鼓を打つ。
高井戸さんは咲坂との再会に素直にはしゃぎ、恭平はニヤニヤとやたらに俺に視線を送ってくる。
アルコールなしで食事を終え、閉店時間間際にもう一度彼女を迎えにくる。
手には赤い薔薇。
さんざん悩んで認めた恋心を、あきらめる選択肢は俺にはない。
どんなことをしても振り向かせて見せる。
「やっと出てきたな」
裏口の従業員入り口の前で、出てきた彼女を捕まえる。
「待っててくれたんですか?」
「ずっとじゃない。時間を合わせてきただけだ」
そっけなく言ったら、なぜか彼女は笑った。
「なんだよ」
「いえ。初めて会ったときもおんなじ風に言ってたなって思って」
そういえばそうだったかもしれない。
まるで拉致するように彼女を連れ出したあの日がひどく懐かしく感じる。
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#年の差
水無月 京
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#大人の恋
月詠 涼
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コメント
1件
いやあ、なんていうか、深山さんが咲坂さんを「待つ」ことに振り回されてるのがすごくいいですね。高井戸さんと桶川さんの連携プレイで再会した流れもよく効いてるし、「待たせる側」だった彼が「待たされる側」になることで見える心のスケッチが丁寧で。赤い薔薇持って迎えに行くのが、こういう人だと新鮮なギャップになってる。「時間を合わせてきただけだ」ってそっけなく言ったのに対して「初めて会ったときも同じだった」って返されるのも、物語が円環してる感じがあって素敵でした。