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“今日、外出よーぜ”
唐突に送られてきた葛葉からのメッセージ。
画面越しのテンションとは違って、オフだとちょっと控えめな誘い方なのが、叶には分かる。
「いいよ。どこ行く?」
「ゲーセン」
「また子どもみたいなコースだなぁ」
「うるせ、好きなんだよ」
――そんな感じで始まった、久しぶりのオフデート。
マスクにキャップ、いつもより地味な服。
バレないように歩くのは、ちょっとだけスリルがある。
ゲームに夢中になる葛葉を横目で見ながら、叶はニヤつくのを我慢していた。
「ねぇ、真剣すぎ。画面に顔近すぎ」
『うっせ、あとちょっとで倒せんだよ!こいつ……!』
「はいはい。じゃあ、勝ったらプリ撮ってね?」
『は!? プリ!? やだよ!なんでだよ!』
「じゃあ、負けたら撮って?」
『どっちにしろ撮らされんじゃねぇか……!』
でもそのあと、葛葉はきちんと負けて、しぶしぶプリ機に入って、
撮ったあとずっと『なんでだよ……』って言いながらも、叶のスマホを奪って画像をチェックしてた。
『意外と盛れてんじゃん……』
「でしょ?僕とのプリ、宝物にしてくれていいよ」
『はいはい』
頬を赤くしてそっぽ向くくせに、ポケットにスマホを戻す手が妙に優しかったのを、叶は見逃さなかった。
そのあと、二人でこっそりラーメン屋に入り、
カウンターに並んで食べる静かな時間。
『……お前と食うと、なんか飯がうまいんだよな』
「ふふ、じゃあ僕と一緒に住んでれば毎日美味しいじゃん」
『……バカか』
そう言いながらも、葛葉の返事はやけに静かだった。
帰り道。夜の風が少し冷たくなって、肩が自然と近づく。
叶がそっと指を伸ばすと、葛葉の手がふわっと触れた。
「……繋ぐ?」
『……ん』
不器用に絡めた指先。
でも、それだけで胸の奥が熱くなる。
「今日、楽しかったな」
『……だろ』
「こういうの、たまにはいいよね。
……僕たちらしくて、“普通”で」
『“普通”でいい。お前となら』
叶がそっと、葛葉の指をぎゅっと握る。
葛葉はなにも言わないけど、手を離さなかった。
――こんな静かな夜が、ずっと続けばいい。
二人は歩幅を合わせながら、明かりの少ない道を、寄り添って歩いていった。