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8. 拗ねたままの入野と江口の微妙な距離
入野は、しばらく江口と神谷、福山の元から離れて歩き始めた。気づけば、他の二人は笑いながら話しているのに対し、入野はすっかり拗ねて、足元に目を落として歩いていた。
江口はその背中を見つめ、少し考えた後、軽い足取りで入野の後を追いかけた。何か言わなければ、また余計に入野が拗ねてしまうと思ったからだ。
江口「ね、自由くん。」
江口は、入野の少し前に立ち止まり、声をかける。入野は顔をそむけて答えない。
入野「…なんだよ。」
入野は不機嫌そうに振り返り、江口を見つめた。その顔は、明らかにまだ怒っているし、まるで「もう放っておいて」と言わんばかりの様子だ。
江口「ごめん、さっきはつい…。」
江口は少しだけ顔を赤くして、真面目な表情で言った。入野はその言葉を聞きながら、ほんの少しだけ目を細めた。
入野「…別に、いいけど。」
入野は何とかその言葉を振り切ろうとしたが、江口の態度にどこか心が温かくなったことを感じていた。
江口は少し顔を綻ばせて、また歩き出す。
江口「じゃあ、俺が謝ってあげるよ。」
江口は肩をすくめ、やけに軽い調子で言う。その言葉を聞いた入野は、思わず笑いをこぼしそうになるが、すぐに顔を背けて拗ねた。
入野「…謝らなくていい。」
入野はそのまま歩き続けるが、江口は入野の横に並んで歩きながら、少し照れくさそうに言った。
江口「でも、なんかこうやってお前と歩いてると、あんまり不安にならないんだよな。」
入野「不安?」
入野はちらりと江口を見た。江口はその言葉を少し考え込みながら続ける。
江口「俺、自由くんがいると安心するんだよ。お前が怒ってても、拗ねてても、それが普通になってきたから。」
入野はその言葉に、少し驚きながらも、心の中で何かが温かくなるのを感じた。
入野「何言ってんだ、バカ。」
入野は照れ隠しにそんな言葉を口にして、また歩き出す。しかし、心の中では、江口が言った言葉が頭から離れずにぐるぐると回っていた。
入野「お前、ほんとに鈍感だな。」
入野は小声で呟くが、江口はその言葉を何気なく受け入れる。
江口「鈍感だっていいだろ。お前みたいに、あんまり反応しない方が楽だしな。」
江口はニヤリと笑うが、入野は思わず顔を赤らめてしまう。
その後、二人はしばらく無言で歩いていたが、入野はふと立ち止まり、また江口を見上げた。
入野「…ほんとに、バカだな。」
その言葉に江口は少し驚きながらも、ふっと笑顔を見せる。
江口「自由くんのその顔も可愛いよ。」
その言葉を聞いた入野は、顔を赤くしながらもう一度小さく拗ねて、歩き出した。
入野「うるさい、黙れって言ってんだろ!」
しかし、その後も江口が後ろから追いかけるように言葉をかけてきた。
江口「でも、俺、自由くんが怒ったり拗ねたりしても、どうしても好きだよ。」
その言葉に、入野は再び歩みを止め、足元を見つめる。
江口がゆっくりと近づき、入野の隣に並んだ。
入野「もう、そんなこと言わないでよ…。」
入野は小さく呟き、再び歩き始める。江口もそれに合わせて歩きながら、心の中でその言葉がすごく嬉しくて、少し照れくさい気持ちを抱えていた。