テラーノベル
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⚠︎年齢指定作品です。未成年の方は読まないでください⚠︎
rttt推しなら一度は書きたいキューアグネタ。
寸止めや焦らし、ぬるい言葉責めのようなものはありますが、過激なSMっぽい描写(暴言、暴力を伴う性行為)は作者が苦手なため一切ありません。甘々いちゃらぶいじわるえっちがお好きな方向け。
普段は未成年の方の目に入る危険を避けるためセンシティブ作品はなるべく複数話にしないようにしているのですが、今回はウッキウキで書くうちにアホみたいな文字数になってしまったため二話に分けさせていただきました。
合計で25000字ありますので、続けて読む方は時間に余裕のあるときにどうぞ。
=====
「だからやんねーって!!」
「そこを何とか!! 頼むよリトくん!!!」
夜も深まった午後10時、暖かなリビングには魂の絶叫が響き合っていた。
事の始まりはただひとつ。ふたり仲良く並んで座ったソファの前のテーブルに置かれた、スマホの画面にあった。
そこに映っているのは再生が一時停止された動画で、サイトのUIはとても見やすくシンプルなものになっている。画面上の広告バナーではほとんど裸の女の子が艶かしく踊り狂っており、文字やボタンは見る人によってはいかがわしいと感じてしまうようなショッキングピンクで統一されている。
それはまさしく、アダルト専門の動画投稿サイトであった。
一度こうなったら意地でも譲らないイッテツをどうにか説得するべく、リトはため息を吐きながらそのスマホを手に取る。他人のスマホを勝手に操作するのは気が引けるが今はそんなことを言っていられない。再生が停止されたままの画面をスワイプして、そのすぐ下に表示された鮮やかなピンク色のタグを拡大した。
「あのなぁ、ちょっと落ち着いて見てみろって! この動画に付いてるタグ……言葉責め、拘束、射精管理、野外露出……首絞め!?? いやほとんど拷問じゃねえか!! こんなの俺ができるわけねーじゃん!?」
「僕は大丈夫だって! 意外と丈夫だからこの体!!」
「違ぇんだって、俺が耐えらんないんだってこんなの……!!」
イッテツはいつもとさほど変わらない態度なのに対し、冷や汗が額や背中を伝っているリトは今すぐにでもその場から逃げ出してしまいたい気分だった。
お察しの通り、リトが今可愛い可愛い恋人であるイッテツに『お願い』されているのは、俗に言うSMプレイというやつだ。最近何かとスマホの画面を隠したがるのが気になってそれとなく聞いてみたところ、「そこまで隠すほどのことでもないんだけど……」と恥ずかしそうに差し出されたのが先述の動画というわけで。
消音されているとはいえ、全身と目元までも皮の拘束具で覆われた女性が鞭で打たれているのをいきなり見せられたとき、思わず反射的に画面を伏せてしまった。トラウマになったらどうしてくれるんだ。
こういった嗜好を持つ人を否定するわけではないが、それでも自分がそれに直面するとなるとどうしても拒否反応が出てしまう。ましてやそれが、よりによって『加虐側』だなんて。
「……いや、無理なんだって。ほんとに。俺はお前に痛いこととかしたくねえし、嫌がるようなことも、尊厳を傷つけることもしたくねえの。……お前を傷つけることだけは、俺は絶対にしない」
「う゛っ、いちいちかっこいいなきみ……でもさ、ほら、ここまでハードなやつじゃなくてもソフトめなやつとかさ? それこそ軽めの首絞めとか──」
「無理無理無理!! それがいっっちばん無理なんだって!! この手で? お前のそのほっせぇ首を掴んで、それで──いや、怖すぎんだろ!!?」
「大袈裟だなぁ」
なんてことのないようにぼやくイッテツに、何が大袈裟だ、とリトは大声で叫んでやりたくなった。
首を絞めるということはすなわち、愛しい人を命の危険に晒すようなことをこの手で行わなければならないということだ。気絶するくらいなら大丈夫とか、気道じゃなくて血管を絞めれば大丈夫とか、そんなことを言われたって無理なものは無理だ。万が一でもあったら冗談じゃ済まない。人の命はひとつしかないのだから──というと、それを覆す言い訳ができてしまうのがこのイッテツという男なのだが。
リトはまたしても深く長いため息を吐き、イッテツの方を一瞥する。こちらを見つめる瞳はあまりにも真っ直ぐに住んでいて、果たしてこれが人に『僕を性的にいじめてください』と頼む態度なのかと苦笑が漏れてしまった。
「……テツはさ、こういう……SMプレイ、みたいなのはしたことあんの?」
「え? あるわけなくない?」
「なんで偉そうなんだよ」
「あっ、いやでも、興味は前からあったし……!」
「つったってなあ……お前が好きなのって多分めっちゃ嫌そうにあしらわれたり、蔑まれたり? みたいなやつじゃん。……じゃあ俺できねえよ。お前のこと好きだもん」
「……そ、そういう言い方されると、さぁ……」
不意を突かれたイッテツは咄嗟に顔を逸らし、そのまま黙り込んでしまった。俯いた角度から見える範囲だけでも真っ赤になっているのが分かって、どうしてこんなところばかりウブなんだか、とリトは思った。
「なぁテツ、お前そもそも痛いのとか苦しいの苦手じゃん。……それとも、いつも通りじゃ物足りなくなっちゃった?」
「うぅ……そう、いうわけじゃ、」
「不満があるなら聞くからさ、一旦考え直してみろって」
「、でも……っ」
「……つうかさ、なんで急にこういう、SMみたいなのがやりたいってなったの?」
「…………」
できるだけ優しく問うてみても、イッテツは俯いたまま指先を弄っているばかりで答えようとしない。その理由はいきなりアダルト動画を見せることよりも恥ずかしいものなんだろうか。
これは長くなりそうだと判断したリトがすっかり冷めてしまったコーヒーを啜ったとき、イッテツはようやくおずおずと口を開いた。
「──い、言っても馬鹿にしたりしない……?」
「しねえよ。お前とのことなんだからちゃんと真面目に考えるって」
「……うん、ありがとう。えっとじゃあ、その……あのね? ……リトくんってさ、キリンちゃんみたいな可愛いもの見るとこう……キュートアグレッションって言うのかな。ちょっと重ためなこと言ったり、ギュッて握り潰すみたいな仕草したりするでしょ?」
「え? ……あぁ、うん……?」
「前からさ、あれ…………ちょっと羨ましいなぁって、思っ、ててぇ……」
「……ん?」
後半につれてどんどん小さく震えていく声を聞き届けつつ、リトは頭に疑問符を浮かべた。
心当たりは当然ある。リトは小さくて丸っこい、特につぶらな瞳のマスコットキャラクターを見るとどうにも愛が暴走してしまいがちで、己の強すぎる力と大きすぎる愛の板挟みになった結果、それは時に嗜虐心として現れてしまう。もちろん本当に害を加えたりなどしたことはないし、言葉のほとんどは冗談だが。
しかし、イッテツはそれを『羨ましい』と言った。それはつまり、リトの嗜虐心を受け入れてみたいということ、なのだろうか。
「いや、それはさあ……」
「……それにふたりっきりのとき、たまにいじわるされたりするのも嫌いじゃないし……」
「は……? ちょ、ちょっと待て、今まだ飲み込めてねえから……っ、」
「後半理性飛んだきみに多少ひどくされたり、乱暴な言葉囁かれたりするのだって正直──」
「まっ、ッおいテツ!!」
何もその被虐欲の詳細までを赤裸々に語れとは言っていない。とりあえず一旦黙らせようとソファの上で膝を抱えるイッテツの肩を掴むと、うねった前髪の隙間からこちらを覗くアメジスト色の瞳と目が合った。目尻に薄く涙を滲ませたイッテツは耳まで真っ赤に上気しており、その熱がふわりと指先をくすぐる。
リトは、まずい、と本能的に感じ取った。
「比べるもんじゃないのは分かってるけどさ……ずるいよ、キリンちゃんばっかり……僕だって、あんなふうにきみに可愛がられてみたいのに」
「……ほんとにあれが羨ましいのかよ……? 言っとくけど、キリンちゃんに向けての『可愛い』とお前に向けての『可愛い』は別もんだからな?」
「それはさすがに分かってるよ。でも……じゃあリトくんは、僕をいじめてみたいって思ったことないの?」
「っそ、んなの……」
あるわけない。と思ってもいないことを口走ろうとした唇は、こちらを見つめるイッテツに気付いた途端きゅっと閉じられてしまった。じっとりと交わる視線、重ねられた手から伝う熱がリトの逃げ道を奪っていく。
これでもしYESと答えたら、イッテツはどうするつもりなんだろう。普段から友人として冗談を言ったりふざけて小突き合ったりしているとき、言葉の端々へと微かに乗せられた嗜虐心を感じ取っていながらも、それに甘んじていたんだとしたら。そしてイッテツもまた、被虐欲を刺激されているとしたら?
それはまさしく両想いではないか、なんてふざけた回答を弾き出した頭を掻き乱しながら、リトは唸る。潤んだ瞳に秘められた感情はきっと、仄かな期待だ。
深く長いため息を吐き、「くそ」と小さく毒吐く。
「…………言っとくけど、傷が残るようなことは絶対やんねえからな」
「……ってことは、」
「あーー……嫌だったらすぐ言えよ」
「ッしゃァ゛! リトくん大好き!!」
「今言われても嬉しくねー……」
けろりと態度を変え、あまりにも色気のない雄叫びとともにガッツポーズを取る恋人の姿を横目に、リトは今のうちに理性を再構築しようと奮闘していた。嫌がるようなことをしたくないのも本心だが、いざ興奮状態のときに拒絶されたとて止まれるかどうかは自信がない。だから、イッテツのことを守ってやりたい、大切に大切に愛してやりたいという気持ちを忘れないよう、しかと胸に刻み込む。
……それもまた、そのうち瓦解させられるんだろうということも分かってはいるが。
§ § §
「──で、まずどうすりゃいいの……?」
それからふたりで風呂に入り、準備を整えてベッドに腰かけるや否や、リトが不安げな視線を寄越してくる。イッテツは髪を拭いたタオルを片手に「えぇ……」と困惑の声を上げた。
「童貞みたいなこと言わないでよ。僕で童貞捨てたくせに」
「それは今関係ないだろ」
「あるね、ある。きみってめちゃくちゃ百戦錬磨のモテ男みたいなツラしてるけど、対戦相手僕だけなんだからな。僕ひとりの経験値で培ったスキルなんだからな、それ」
「百戦……って、お前には俺がどう見えてんだよ……」
そう言いながらリトはイッテツの頭をぽんと軽く撫で、エアコンの温度を上げた。タオルで雑に拭き取っただけの髪が冷えて風邪を引いてしまわないようにという気遣いだろうか。
そういうとこだぞ、とイッテツは思った。
「んじゃあ、きみがとっつきやすいようにメスガキにでもなってあげますか。ざぁこ♡ ざぁこ♡ もう僕以外で勃たなくなっちゃったざこざこお兄さん♡」
「あ゛?」
「こっわ。メスガキに真面目にキレないでもらえる?」
ドスを効かせた声で威嚇するリトに、イッテツは自分の肩を抱くようにして怯えてみせる。リトはその分かりやすくあからさまな態度に少し笑って、取られた分の距離を縮めるようにぐいと身を寄せた。
そうして動いた分だけ散らばる汗とシャンプーの香りに、お互いの鼓動が少し忙しくなる。
「じゃあその雑魚に毎度、腰砕けるまで抱き潰されちゃってる奴だーれだ」
「……俺なんだよなぁ、それが……」
「っは、せーかい」
おどけたような態度のまま、リトは語尾にたっぷりの吐息を含めてイッテツの耳元へと吹きかけた。咄嗟に逃げようとする視線を更に追いかければ、余計に距離が近くなる。
「正直に答えられてえらいなぁテツ? ……な、ご褒美のキス、して欲しい?」
「、……うん」
「んふ、素直じゃん」
「……そりゃあね。きみからのキスなんて拒む理由もないし」
「ふぅん……じゃ、目ぇ閉じて」
頬を撫でながら呟かれ、イッテツは言われるままに瞼を下ろした。目隠しでもされるんだろうか、なんて構えていたがそんなことはなく、2秒も待たないうちにそっと唇同士が重ねられる。
こんなふうに、ちゅっ、ちゅっ♡ と角度を変えて何度もキスの雨を降らされると、何だか小動物のように甘やかされている感じがして嫌いじゃない。……嫌いじゃないが、いつもの捕食されるようなキスに慣れてしまった身体では、その啄むようなキスが次第に物足りなくなってくる。イッテツはいつも前戯の始めにする、リトとの深いキスが一等好きだった。
ああ、この吐息すらもとっとと塞いで食べてしまって、口内の柔らかな粘膜を犯して何も考えられなくして欲しい。耳のなかで響くくぐもった水音と余裕をなくしたリトの声がはやく欲しくてたまらない。
焦れたイッテツが薄く目を開けたとき、向こう側に見えたのは甘く妖しく細められた、ターコイズ色の瞳だった。
「んぇ……?」
「ん……なぁにテツ、これだけじゃ足りなくなっちゃった?」
「……ぁ、」
ぞく、と背筋が粟立つ。
これだ、この目だ。目の前の獲物が可愛くて可愛くてしょうがなくて、今すぐにでもてのひらの内に閉じ込めて握り潰してしまいたい──とでも言いたいような、とびっきり甘い悪魔の微笑。
愉快そうに低く歪んだ声が、イッテツの思考回路を蝕んでいく。跳ねた肩はまるごと大きなてのひらに包まれて、たったそれだけでもう、逃げることなど叶わなくなってしまった。
「ぁ、う……♡」
「……まだ俺なんもしてねえんだけど」
「だ、だって……っその顔、ずるい……っ♡」
……こいつ、俺の顔と声に弱すぎるだろ。リトはさすがに少し心配になって、肩を抱く手にほんの少しだけ力を入れる。それだけでイッテツは物欲しげに瞳を潤ませ、華奢な身体をわななかせた。
その仕草のひとつひとつがリトの嗜虐心を掻き立ててやまない。リトは気付かれないよう浅く短くため息を吐き、イッテツの身体を覆い隠すように抱きしめる。
「──なあ、テツ。……ほんとにいいの」
それはおそらく、最後の確認だったのだろう。ここを逃せばきっと二度と戻れない。下手をしたら、今後のふたりの関係性だって変わってしまうかもしれなかった。
リトにイッテツを傷つける意思がないことは、まるで壊れものに触れるように優しい腕とその温もりから察することができる。それはイッテツからすれば──まぁ、最初から考えるまでもないことだったが。
「、うん……いいよ。我慢しないで、きみの好きにして」
「……俺の好きにしていいの?」
「うん」
「じゃあ、……後悔すんなよ」
ほとんど吐息で紡がれたその呟きは、リトがイッテツを押し倒したことで空中に置き去りになってしまった。
後悔でも何でも、ふたりを繋いでおくための言い訳は多ければ多いほどいい。──きっと後になってこのことを悔いるのは、きみだけだろうから。イッテツは何となくそう予感しながら、にやりとだらしない笑みを浮かべて返事をした。
§ § §
はふ、とのぼせたような息を吐いて、イッテツは前髪を掻き乱した。比較的浅いところの弱点を、リトの節くれ立った指先が残酷なまでに優しく愛撫してくる。もうずっと、かれこれ30分ほど。
腹の奥に渦巻いた甘い痺れが一瞬全身を包んだかと思えば、すぐに止んで頭の回転を鈍らせる。もどかしくて腰を浮かせると「だぁめ」とやっぱり優しく嗜められてしまい、イッテツは年甲斐もなくぐずってしまいそうだった。
……もしやこれは、俗に言う──、
「っ寸止め、とか……ッ♡ きみ、知ってたのかよ……?」
「……お前って俺のことけっこう舐めてるよな」
半ば呆れたように言われても、だって、今までされたことなんて一度もなかったものだから。あれだけ煽ってやっても『やだ』『やめて』といった言葉を聞いた途端ぴたっと動きを止めてくれていたリトが、今や嬉々としてイッテツの身体と心を弄んでいる。もし仮に本性と呼べるものがこちらなのだとしたら、これを抑える理性というのはどれだけ強固だったのだろう。
愉悦を隠そうともしない仄暗い笑顔にやられながら、イッテツは腰の奥からずくんっ♡ と響く甘い痺れに下唇を噛んだ。
「んぐ……ッ゛♡ ふぅ゛……〜〜ッ!♡♡ っだめ、またいく♡ 甘イキする……っ♡♡」
「んー……我慢できない?」
「無理っ♡ ゆび、止まってても……ぁっ♡ っ勝手に、気持ちよくなっちゃ……っ♡♡」
「んはは、ほんとだ。すげえビクビクしてんね……寸止めっつったってさ、結局イってちゃ意味ねーじゃん」
「そ、ッんなこと、言われたって……っ♡」
誰のせいだと思ってるんだ、とイッテツはリトをキッと睨みつける。
散々甘やかして後ろだけで快感を拾えるようにしたのも、刺激せずとも余韻だけで軽く絶頂してまうような堪え性のない身体に仕上げたのも、現にイッテツをここまで追い詰めているのだってリト本人なのに。
ぐりぃ……っ♡ と前立腺をこねられる度に背筋にぞくぞく電流が走って、張り詰めきった鈴口からは白濁した先走りがだらだらと流れ落ちている。まるでさざなみのように絶え間なく続く責め苦は、次第に大きな波となって襲ってくる。期待に釣り上がる口端を隠すためイッテツは口元を手の甲で覆った。
──無論、それをリトが見逃すはずもなく。
「あ、ぁ゛っ♡、〜〜ッ゛くる♡♡ つよいのくる……っ♡♡ 指ッ♡、とめな、ぃでっ……♡」
「ぁーー……ごめんな、」
「ん゛ぅう……っッ♡♡ っぁ゛、また……っ、〜〜ッ゛も、イかせてよぉ……♡」
思ってもいなそうな謝罪とともに指を引き抜かれ、イッテツはまたしても天井に届くあと一歩手前でおあずけを食らってしまった。完全にその気にさせられてしまい、物欲しげにひくついたままの後孔が情けなくてしょうがない。
そんなイッテツを、リトは感情の読めない瞳で見つめている。いつもの無表情とも愛おしげな視線とも違う獲物をじっと見据える獣の目付きに、イッテツは空っぽの直腸をきゅんっ♡ と締め付けてしまった。
「ッ顔、こわいんだけど……♡」
「……は。嘘つけ、ほんとは好きなくせに」
「う゛っ……ぅう゛〜〜〜ッ……!♡」
挑発するように唇を片方だけ持ち上げて笑われると、そのあどけなささえ覚える優しい顔立ちとのギャップも相まって破壊力がとんでもない。イッテツは高鳴る心臓を抑えながら、目を離すこともできずに顔を真っ赤にさせて震えている。
……その様子に、どうしようもなく劣情をそそられてしまって。
「……お前さ、今自分で何言ってんのか分かってる?」
「へ……?」
「俺まだ手しか使ってねえのに、ひとりでこーんなぐちゃぐちゃにされちゃってさあ。それで我慢できなくて、『もっと気持ちよくしてください♡』っておねだりしてんの。……な、よく考えて? すっげえわがままだと思わねえ?」
「ッだ、だってそれは……」
「──うん、俺のせいだよな。テツが気持ちいいこと大好きになっちゃったのも、こんなわがままになっちゃったのも、ぜーんぶ俺が悪いんだもんな……?」
「……っ!♡」
楽しくてたまらない、という声色から本気でないことは伝わってくるのに、それでもリトの口から紡がれる言葉はイッテツの鈍った羞恥心を蘇らせるのには十分すぎた。
そう、そうだ。だってリトはまだ服を脱いですらいないのに、ベッドに入ってからというもの自分だけがこんなにもはしたなく乱れてしまっている。とうにほぐれきった内壁が無いものをねだってきゅうん♡ とうねり、あまりの羞恥にイッテツは首から上をかっと赤く染め上げた。
今はその顔を見られることすら恥ずかしくてたまらなくて、細い腕を交差させるようにして覆い隠してしまう。
「あ、顔隠すなって」
「っ……や、やだ♡ だってこんな、恥ずかし……♡」
「恥ずかしがんなって……今のお前、すっげえ可愛いのに」
「〜〜っかわい、くな……」
「んーん、可愛いよ。……テツ、かわいい」
今度は心の底からそう思っていそうな甘ったるいトーンで囁かれ、イッテツはその差に頭が煮え立つような錯覚をおぼえた。飴と鞭、という単語がぼんやり浮かんでは脳に染み込んで消えていく。
──リトくん、きみ、さてはめちゃくちゃSの才能あるだろ。イッテツは興奮しきってぼやけた視界に映るリトを見つめながら、段々と焦りを感じていた。散々抑圧されてきたリトの嗜虐欲は今やとんでもなく鋭利に磨き上げられていて、それを首筋にぴたりと当てられているような──そんなイメージが頭に浮かぶ。
イッテツが今更自分の置かれた状況に気付き始めていると、おもむろに後孔へと指先が滑り込んでくる。もっと大きな質量を欲してひくつくそこは、リトの太い指を難なく飲み込んでなお指をひらけるほどのゆとりがあった。はやく気持ちよくなりたいのに、はやく疼いてしょうがない最奥までみっちり埋めて、楽にして欲しいのに。
そうイッテツの気持ちを代弁するようにしゃぶりつく蜜口に指を行き来させ、リトは目を据えたまま、いつもの調子で語りかけてくる。
「──じゃあ、あと一回だけ。お前があと一回イくの我慢できたら、ご褒美に好きなだけ気持ちよくなっていいよ」
「っ♡ がまん、できなかったら……?」
「そりゃあお前……お仕置きってやつだよ」
「……何にするつもり?」
「…………ひみつ♡」
そう言って首を傾げる仕草はもはや見慣れたもののはずなのに、この状態でされると何かとてつもなく恐ろしいことが待っているような気がしてくる。イッテツは胸の内から恐怖がこみ上げてくるのを感じて──それは同時に、異様な高揚を含んだ期待でもあって。
リトは分かっていた。自分のこの嗜虐欲にさえ吸い寄せられてしまうほど好奇心に弱いイッテツにとって、この誘惑は抗い難いものであると。案の定イッテツは一言も声を発さぬまま、近くにあったクッションを手繰り寄せ両手でぎゅうっと握りしめた。
「……あんま可愛いことしないでくんない?」
「こうでもしなきゃ、耐えらんないんだって……ね、もう、いいから……♡」
「っふふ、はいはい」
クッションを抱き潤んだ瞳で見つめてきながらも、先ほど言われたことを気にしているのか「早く」と催促してくることはない。それが何だかやけに健気に思えて、リトは愛おしさのあまり口角が上がるのを抑えられなかった。
にゅぷぷ……っ♡ といとも容易く沈んでいく指が、ある場所で腹側へと微かに折れ曲がる。それだけでイッテツは全身が総毛立つのを感じた。
「っあ゛♡ そこ、っ♡ やめ゛……♡♡」
「ん〜……? 俺、ちょっとなぞってるだけだよ? ぐりぐり押し潰したり、指で挟んでつまんだり……つらいことしてるわけじゃないのに?」
「ゃ、ッひ♡ だ、からぁ……っ♡♡ ……っゆび、当たるだけで気持ちいいの♡ いつも当たるとこだから……ッぁ♡♡」
「へえ? じゃこうやって、ぎゅ〜っ♡ ってされるのもだめ?」
「ぁ、ぁあ゛……っ!♡♡ っだめ♡、だめだめだめ……♡♡」
ぴんと伸ばしたまま指の腹全体でしこりを押し上げられて、イッテツは甘ったるく声を裏返らせる。リトはその絞り出すような悲鳴に仄暗い笑みを浮かべ、不規則に痙攣する柔らかな内壁へとより深く指を押し込んだ。
「ひッ、んぅ゛〜〜〜ッっ……♡♡ ッや゛、も、イ゛っちゃ♡♡ ァ゛、んぐぅゥう゛……ッッ゛♡♡♡」
「おー、耐えてる耐えてる。よく頑張ってんじゃん……でも痙攣ひどくなってきたな? ……もうイく? イっちゃう?」
「イ゛っ……かないぃ゛っ♡ いかな、っあ゛!♡♡ んぎッ……!?♡♡♡」
クッションを羽交い締めすることでどうにか耐えていたイッテツは、ただでさえ中途半端に昂らされた前立腺を優しくゆっくりと撫でられて、あっという間に絶頂の寸前まで追いやられてしまった。力を入れても抜いても達してしまいそうで、支えを失ったクッションがベッドから転げ落ちる。
リトは人差し指と薬指で拡げた敏感なところをつうっ♡ と中指でなぞり、くるりと円を描き、かと思えば思い出したように中心をかるく捕らえてみたりして、その散漫さはまるで玩具でも弄んでいるようだった。
気まぐれで予測のできない刺激に、イッテツは必死に抗おうとする。しかし絶頂を我慢なんてさせられたことのない身体ではどうすることもできず、ただただパニックを起こした子供のように泣きべそをかくことしかできない。
「ぁ゛……っ♡ あ、あ、っだめ♡ イっ♡、いく、だめ、イ゛っ、……ぐ♡♡ ぁ、あ゛〜〜……っ♡♡」
「……あと、ちょっとだけ我慢したらご褒美やるから、な? がんばれ、がーんばれ……♡」
「っみみ、だ、め……ッ゛♡♡」
ほんのささいな刺激でも過敏に感じ取ってしまう今、耳元で囁かれるリトの声はもはや劇薬に等しい。ぞわ、と腰から這い上がってくる痺れに腰を反らせ、イッテツは見開いた目から大粒の涙をぼろぼろと溢す。極限まで追い詰められたイッテツにとっては、『ご褒美』という言葉の甘美さよりも『お仕置き』の方が何倍も重要で恐ろしかった。
「っぃ゛、も、むり゛……ッ゛♡♡ イく♡ いくいくいぐ……っ♡♡」
「──っと、あぶね」
びく、とひときわ大きな痙攣を感じて、リトはぎゅんと締まった窄まりから指を引き抜く。大して激しく動いてもいない指には微かに泡立ったローションがまとわり付いて、無いものをねだって収縮が止まらない後孔との間に銀色の糸を紡いだ。
「ふ、ッんぎゅ……っ♡♡ ぅ゛、っぐぅう……ッッ!♡♡♡」
「んは、すげえ。それどうやって耐えてんの?」
イッテツの薄い腹筋は、内壁の動きのためかぴくぴくと微かに引き攣っている。──が、それがひどくなる気配はなく、徐々に収まってきている。どうやら、この責め苦に負けずに見事耐えきったようだ。
手負いの獣のように低く唸るイッテツに「かわい、」と独り言のように呟いて、リトは固く閉じられた瞼へキスを落とした。
「、あー……今テツん中入ったら、すげえ気持ちいいんだろうなー……」
「ぁ、? ──〜〜〜っッ゛……!?♡♡♡」
今、なかに、入られたら。
焦らされすぎた脳内はその感触をあまりにも生々しく想像してしまい、神経が勝手に昂っていってしまう。様子の変わったイッテツを訝しんだリトが視線を移した途端、華奢な胴ががくんと弓なりに反った。
「……?? へ、ぉ゛……っ?♡ 、……ぁ?♡」
「は? ……もしかしてイった? 今……」
「、や、ちが……ちがう、いま、っ♡ ……ぁ、やだ、やだっ♡ せっかく我慢、したのにぃ゛……っ♡♡」
イッテツは涙目で首を横に振るが、未だなお続くビクつきとくねる腰を見れば、甘イキでは済まないイき方をしたのだと分かってしまう。勃ちあがったままのイッテツの中心はとぷとぷとだらしのない射精を繰り返しており、ドライでもメスイキでもない中途半端な絶頂をしたようだった。
せっかく溜め込んだ快感が台無し射精によって吐き出されていくのが恥ずかしいやら悔しいやらで耐えられなくて、イッテツはとうとうぐずり出してしまう。ぐしゃぐしゃの顔を真っ赤にして涙を堪えるその様子にリトは、感じたことのない妙な興奮を覚えてしまって。
「あー、よしよし。泣くなって……」
「泣いてねぇし……っうぅ゛、きみのせいだ、リトくんのせいだぁ……♡」
「そうだな。俺が我慢しろって言ったのが全部悪いなぁ。……じゃあさ、どうする?」
「……どう、って?」
「今、一応1回は我慢できたってことになるけど……だから、選ばせてあげようかなって。
──な、テツ。ご褒美とお仕置き、どっちがいい?」
「…………は、」
一瞬、何と問われたのか理解できなかった。何の冗談かと疑いの視線を向けてみても、リトはその穏やかな笑みを崩すことはない。
そんなの、ご褒美一択に決まっているだろう。リトの言葉の通りイッテツはきちんと言いつけを守ったのだし、第一、たった今リトの手によって文字通り泣くほどひどい目に遭わされたばかりなのだ。そんな彼の言う『お仕置き』がどれだけ並外れた苦行なのかは想像に難くない。
なのに──……次の『お仕置き』を耐えきったら、彼はどれだけ甘いご褒美をくれるんだろう。なんて稚拙な妄想が止まってくれない。
結局直接掴むことのできなかった『ご褒美』がどんなものか期待しすぎて神聖化してしまっているのもあるかもしれない。けれど、一度気になったら確かめずにいられないのがこのイッテツという男だ。
お仕置きを耐えさえすれば最後にはどうせご褒美にもありつけるだろう、と無謀な自覚のある適当な作戦を立て、イッテツはわななく唇を無理矢理に開く。
「っ……おし、おき、」
「えっマジで? ……なんで? 俺にいじわるされんの、ハマっちゃった?」
「……」
別に頷いてもよかったが、イッテツはここではだんまりを決め込むことにした。それは変な意地を張っているからでもしたり顔のリトが気に障ったからでもなく、そうすればより『激しいお仕置き』が待っているような気がしたから。
わざとらしく視線を逸らしながらも潤んだ瞳には隠しきれない期待が滲んでおり、意図を察したリトはごくりと唾を飲み込む。
「……後でやめてっつっても、やめてやんねえからな」
「う、ん……言ったでしょ、きみの好きにしてって……」
こちらを脅すような言葉に余計高められてしまい、早くも背中に淡い痺れが走る。リトはひくりと打ち震えた華奢な肩を抱いてやり、唇へ軽いキスを落とした。
──あぁ、今度こそ本当に戻れないかもしれない。と本能で感じたのは、一体どちらの方なのだろう。
エアコンのぬるい風では灯った熱を冷ますことなどできるはずもなく、上気した頬よりまだあつい指がするりと撫ぜて通り過ぎた。
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