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(あれ? ハッピーエンドになってるやん、私殺されたけど。ハッピーエンドや、良かった。いや、あかん。これじゃあ、カードを受け取らなあかんくなる)
「普通にカードを止めたらいいだろ? 暗証番号は麗のお母さんの誕生日にしておいたから」
「え? 母さんの誕生日なんか、昔ちらっと言っただけやのによく覚えてるわ。流石、頭良いね」
「たまたまだ。どうしても嫌なら旅行期間中だけの保険だと思え。これさえあれば、もし俺に何かあっても、裏面に載っているコンシェルジュデスクに電話すれば、日本に帰る手配をしてもらえる」
「ううう、わかった。ありがとう」
いざという時の保険と言われると麗は弱かった。
母は転ばぬ先に杖を立てていなかったから酷い目にあったのだから。
麗はカードを財布に入れようとして、ふと、思い出した。
「そや、さっき買った下着!」
「ああ、ちゃんと買えたか」
「うん、待っててね」
急いで麗はドレッサーに入り、下着の入った紙袋に別けて入れておいたお釣りを鞄から取り出す。
そして、今一度金額があっているか確認してから麗は明彦の元に戻った。
「はい、お釣りだけ先に返させてね。残りは日本で返すから」
口ではそう言ったが、明彦は下着代を受け取ってくれず、ちょっとがっかりした顔までしている。
「わかっていた。時間がかかっていたから、期待していないと言えば嘘になるが、麗がその格好のまま出てくるのはわかっていたことだ」
明彦はボソボソと意味のわからないことを言いながらため息をついた。
「とっておくといい、残りは小遣いだ」
「そんなわけにいかへんわ、もう! 何やったら受け取ってくれるの?」
「麗 」
「………」
麗はそっと目をそらした。まさかの下ネタである。
「麗」
「………アキ兄ちゃん仕事は終わったん?」
麗は全力で話を逸らせた。全力でだ。
「ああ、待たせて悪かった」
「全然、気にせんといて! スパスッゴい良かってん。サイコーやったわ!」
やはり麗には語彙力が足りない。だが、足りない語彙力を身ぶりで補った。
それもこれも誤魔化すためである。こっちは必死だ。
「そうか。ならいい。俺はちょっとシャワー浴びてくる」
疲れているのだろう明彦が目頭を抑えて、明彦は風呂へと旅立っていく。
「ゆっくりしてね」
麗はスパでシャワーを浴びたので着替えてしまおうと思い、ドレッサーに戻り下着を出した。
「……しまった」
麗は気づいた、気づいてしまった。
箱に入っていたまま購入したので欠片も気づいてなかったが、購入した三個のパンツ全て、面積が小さいのだ。
セクシーセクシーセクシーなのだ。セクシーが並んでいる。
ブラジャーもハーフカップの上にレースだと思っていたが、レースの方が面積が大きく、セクシーである。
因みにサイズはぴったりだ。流石はセクシー界の守り手の店員さんである。
取り敢えずバスローブを着てみたが、心もとない。
麗はドレッサーから出て、窓の外を見た。
外はもう暗い。
豪華なホテルの一室、シャワーを浴びている男、バスローブを着て、下にエロい下着を穿いているいる自分。
(なんか、これ駄目なやつだ)