コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
雀が鳴く声で目覚め、台湾でも雀はチュンチュンと鳴くのだなと当たり前のことを考えながら麗は目を擦った。
日の光が寝室に入ってきてベッドを照らしている。
のっそりと上半身を起こした麗は寝乱れてバスローブからブラジャーががっつり見えていたので、慌てて前を閉め、ゆっくりと辺りを見渡した。
(良かった。隣にいるアキ兄ちゃんはまだ寝てるわ。いや、待て、アキ兄ちゃんが隣で寝てる。隣で。もしかして、これが巷で聞く朝チュンなの? 雀鳴いてるし)
麗は焦りながら昨夜の事を思い出した。
昨夜、明彦は意外と長風呂だったので、麗は一人、ソファの上でテレビを見ながらうとうとして、そのままソファで……寝た。
日本語のチャンネルがあったが、ニュース番組だったのが悪い。経済の話は麗には難しかったのだ。
つまり、ソファで寝ている麗を明彦が一つしかないベッドまで運んでくれたのだろう。
そして、明彦も横で寝たのだ。
(うん、何もなかった)
音を立てないようベッドからそっと下り、洗面所へ向かう。
途中で、テーブルにカラトリーが乗っているのが見えた。
そうだ、昨夜、麗は夕飯の存在を忘れていた。
中途半端な時間に機内食をもりもり食べ、スパでフルーツなどをもらったせいだ。
明彦は麗が寝た後、部屋で一人にしないようルームサービスを頼んだのだろう。
(大変申し訳ない)
「れい」
いつもよりもゆっくりと掠れた声で、名前を呼ばれ麗は振り向くと眠気眼の明彦がすぐ後ろに立っていた。
明彦もまたバスローブ姿で、はだけた胸元から色気が漂っている。
豪奢な椅子に座らせ、血統書付きの毛の長い猫を膝に乗せて、赤ワインを持たせたら、今すぐにでも悪の組織の幹部になれそうである。
(二つ名は何だろう? イケメンジャーでは安直すぎるし正義の味方やな)
いや、元々明彦はただのビジネスマンでイケメンだった。
しかし、悪の組織の女幹部メンクーイにそのイケメンっぷりを気に入られ、組織の一員として無理矢理洗脳されてしまう。
ある日、組織の命令で美形戦隊イケメンジャーの本部に潜入した明彦は、自分と同じイケメンたちとの暖かな交流で本来の自分(イケメン)を思い出し始める。
しかし、いつまでも成果を上げない明彦に痺れを切らしたメンクーイが本部を襲撃、あわやイケメンジャーが倒される、その時!
明彦はイケメンの守護精霊ユウカンマッダムのお金の力で、漆黒のイケメン戦士イケメンジャーブラックに変身した!!
そうして、イケメンジャーたちは力を合わせてメンクーイを倒す。
しかし、俺は洗脳されていたとはいえ、これまで悪事を働いてきたからお前達の仲間にはなれない。と、悲壮な覚悟を決めたイケメンジャーブラックは、イケメンジャーレッドの説得もむなしく、皆の前から去ってしまう。
だが、それからちょくちょくイケメンジャーの危機には現れるようになり、ついに最終回の二話くらい前から仲間として共に戦い、悪の組織を倒し、本来のビジネスマンとしての生活に戻っていった。
ありがとう、イケメンジャーブラック、ありがとう、イケメンジャー。君たちのお陰で世界の平和は守られた!