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シャットが戻ってくると、アラスターはすぐに視線を向けた。
アラスター「…今は二人だけ?」
シャット「えぇ」
アラスター「では、話しますか。セレーネ」
セレーネ「!よく分かったね」
アラスター「なぜ君が?」
セレーネ「主が捕まりたくないからって」
アラスター「今、あなたの主はどこに?」
セレーネ「隠れてる」
アラスター「なるほど。では、主によろしく」
セレーネが静かに去る。
数時間後、ヴォックスは高揚した声で部屋を歩き回っていた。
ヴォックス「ア゙ア゙!人生は最高だ!やっとここまで来た!誰も俺を止められない!」
その姿は喜びに満ちていたが、どこか油断も含んでいる。
シャットはラジオ塔に立ち、風に吹かれながら静かに考えていた。
シャット「…そうですか…誰も気づきませんよね」
さっきヴァルが見せてくれたもの――おそらくカミラの武器――絶大な魔力で動く装置かもしれない。
シャット「カミラなら作れなくもない。私の読みは正しい…」
その力を持つ者はこの地獄ではルシファーしかいない。
シャットは頬杖をつき、考え込む。
シャット「じゃあ…次に狙うのはルシファーですね」
数日後、ニュースが届く。
ヴォックスがルシファーを捕まえたという知らせだった。
シャット「…ふふっ…どこまでも単純な男…
私の計算通りに動いてくれて…ふふっ…ははははっ…笑」
彼女は静かに微笑む。選択肢は外れない。
ハズビンホテルにて。
チャーリー「パパ?パパー!」
焦った様子でルシファーを探すチャーリーに、シャットは冷静に応じる。
シャット「…?どうしました?」
チャーリー「シャット!パパは?」
シャット「…さぁ?」
チャーリー「てかシャット、あなたヴォックスに捕まったんじゃないの!?」
シャット「捕まったのはアラスターだけですよ」
チャーリー「でも、ケイティが言ってたよね?」
シャット「いいえ、‘私は’捕まっていません」
ヴァギー「どういうこと?」
シャット「…まぁ、話せば長くなりますけどね。
私が捕まるというニュースを流せば、地獄中の悪魔がチームVの味方になります」
ヴァギー「なんで?」
シャット「だって、私=権力みたいなものですから。
なんてったって、私はクレオパトラだから」
チャーリー「じゃあヴォックスを止めて!このままじゃ天国がヴォックスのものになる!」
シャット「いいじゃないですか」
チャーリー「なんで?」
シャット「天国が無くなれば、エクスターミネーションもなくなるし、差別もなくなりますよ」
チャーリー「ダメなの!地獄の人たちを更生させるには天国がいるの!」
シャット「私には分かりませんね。
なぜ天国を助けたいのですか?」
チャーリー「天国にはペンシャスも友達もいるの!」
シャット「なぜ友達がいたのにあの時エクスターミネーションが起きたのですか?」
チャーリー「それは…」
シャット「ヴォックスが天国を壊すのなら、私は止めませんよ。
誰も大切な人はいませんし、それが私たちの運命です」
チャーリー「ヴォックスは地獄も支配する気なのよ!アラスターも危険になる!」
シャット「運命には逆らえません。
死んだこともないくせに、大切な人を誰一人失ったこともないくせに、地獄の女王か知りませんけど、あなたの地位で止めてください。私は関わりませんから」
ハスク「おいシャル!そんな言い方はないだろ!」
ドアノブに手を置きながら注意する。
チャーリー「私だって大切な人を失ったことあるよ!罪人たちは私の家族みたいなものだもん…」
シャット「……
それなら天国にいる友達に助けを求めてください。
私は誰の味方でもありません」
ドアを開くチャーリー。
「お願い!待って!」
シャットの腕を掴む。
シャット「離してくれませんか?」
チャーリー「ダメ!あなたの協力がないと地獄は救えないの。
それなら運命に従ってと言うと思うけど、あなたはアラスターのためなら動くでしょ?どんな運命でも」
シャットは一瞬、目を逸らす。
シャット「…どうでしょうね」
チャーリー「お願い!運命じゃなくて未来を守って!
私たちのためじゃなくても、地獄のためじゃなくても、アラスターのために!」
シャット「…ふふっ…はははっ…
あなたは面白い人ですね…」
その笑いは静かに途切れる。部屋の空気が、わずかに冷えた。
シャット「……面白い、だけですよ。
あなたの言葉が、です」
チャーリー「……」
シャットはそっと手首を外す。乱暴ではないが、拒絶ははっきりしている。
シャット「私は英雄じゃない。
誰かの未来を守るために、自分を燃やすつもりもない」
チャーリー「……それでも」
シャット「でも」
一拍、間を置く。
シャット「あなたが‘運命じゃなく未来’と言ったのは、嫌いじゃない」
チャーリーの目がわずかに見開かれる。
シャット「勘違いしないでください。
私はヴォックスを止めません。
天国も、地獄も、あなたのお父さんも」
チャーリー「大丈夫!それでもあなたが味方なら心強い!」
シャット「…ヴォックスは今、世界を手に入れた気でいる。
アラスターを捕まえ、ルシファーを捕まえ、‘勝った’と思っている」
チャーリー「……」
シャット「勝者は、必ず油断する。
そして油断した支配者ほど、脆いものはない」
ヴァギー「でも、シャットはヴォックスに勝てるの?」
シャット「勝てますよ」
ヴァギー「言い切れるの?」
シャット「もちろん。私はあの人(アラスター)と違って、ヴォックスに情がありますから」
ハスク「でも、お前ら仲良かったよな」
シャット「…どうでしょうね。セレーネが彼のこと好きでしたから」
ハスク「…そういうことね」
シャット「はい、そういうことです」
チャーリー「どういうこと?」
シャット「彼は私のことが好きですが、実際に好きなのはセレーネです。そしてセレーネはヴォックスのことが好きです」
ハスク「なるほど。つまりヴォックスはアラスターにシャットを奪われたと思ってるわけだ」
シャットはスマホを開く。
シャット「…まぁ、時間はないので私はこれで失礼します」
#バレンタイン