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放課後の昇降口。
俺は涼ちゃんと靴を履き替えながら、
また例の作戦を続行していた。
「なぁ涼ちゃん、ほんとにこれ効果あるの?」
「あるよ(多分)。昨日の若井の顔、見たでしょ?」
にやりと笑う涼ちゃんに、俺は苦笑い。
(……でも、俺までドキドキしてるのは想定外だっての)
そのまま並んで歩いて帰る。
涼ちゃんは自然に俺の腕を軽く掴んで、顔を近づけてきた。
「ほら、もうちょっと肩寄せて。仲良しっぽく見せないと」
「ちょ……!」
心臓が破裂しそうになる。
すれ違う生徒が
「あれ?藤澤先輩と仲良すぎじゃね?」
って囁いていくのが聞こえた。
――そのとき。
グラウンドのフェンスの向こう、
サッカーを終えた若井が立ち止まって俺たちを見ていた。
「……!」
一瞬で顔を曇らせ、ボールを強く蹴り飛ばす。
「わ、若井……!」
思わず名前を呼びかけたけど、
もう聞こえてないみたいに背中を向けて走り去っていった。
胸が締め付けられる。
「……すごいね、あの反応」
涼ちゃんが満足げに言う。
「でも、なんだか僕が悪役みたいだな」
「いや……俺のせいだろ。こんな作戦頼んだの」
そう言いながらも、若井の表情が頭から離れない。
あんな顔、初めて見た。
あれは……どう考えても嫉妬。
次の日の昼休み。
若井は俺と目を合わせようとしなかった。
一緒に飯食おうって誘っても、
「悪い、今日は用事ある」と逃げられる。
「……っ」
寂しさと罪悪感が入り混じって、どうしようもなくなる。
廊下の角で涼ちゃんに相談すると、彼は静かに笑った。
「追いかけてごらん。あの子は、今一番君に振り回されてる」
俺の背中を軽く押す涼ちゃんの手は、優しくて温かかった。