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・走り書きすぎて駄文です
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_____ばん。
普段通りの、何一つ変わらない生活を過ごしていた中で、ふと聞こえたその音。この街じゃ聞き馴染んだその音……”銃声”に、何時もなら興味も示さず立ち去るだろう。けれども、近場から聞こえたこと。そして、何故が異様に胸騒ぎがする事。それらが加味して、無視をしようとしていたはずなのに、車の走行中だった己の手は、音の方向へハンドルを回した。
( 今日は特に予定も無いんだ、確認するだけなら、別に構わんだろ… )
そう、どこか言い訳じみた事を心の中で呟いて。やや飛ばし気味に車を走らせれば、聞こえてきた場所が路地裏付近だと気付く。人通りも少なく、まさに殺しをするならうってつけの場所。であれば半グレ同士か、もしくはギャングか何かが揉めて撃っただけか、と推測し、そのまま踵を返そうとしかけて、止まった。目線の先にあるのは、黒と白と……可愛らしいステッカーの貼られた、パトカー。デカデカと”後藤れむ”の名前があるそれは、自分が愛してやまない(唯一無二の好敵手として)警察の少年が使う車両で。犯罪現場で出くわす度に、何度も追いかけられ、追い詰められたそのパトカーが、何故かここにあるのだ。犯罪者にパクられ、ここで乗り捨てられたのか、もしくは……。
「……まさか、な……」
後藤ちゃんに限って、そんな。とは思いつつも、嫌な予感が過ぎる。犯罪者を追いかけ、この路地裏にたどり着いて。先程の銃声が本人に当たることなく、そのまま確保されたなら既にパトカーには戻ってきているはず。それなのに、戻っている訳でもなく、その気配すらない。と、なれば、浮かび上がる可能性の中で有力なものは……一つだけ。
半信半疑であるものの、道路脇に愛車を止めて、念の為に銃を片手に持ってから路地裏の奥の方へ足を運んだ。きっと違う、もしかしたら別のポリ公が後藤ちゃんの車に乗っていただけかもしれないし。と頭を絶えず回転させながら、進んだ先にあった光景は、まさに予想通りのものだった。
「……後藤ちゃん?」
自分の零した声に、半グレらしき誰かもわからぬ男が、焦ったように振り返った。が、そんなのはどうでもよかった。その男の足元に倒れる、真っ赤な血を流した少年。痛みに体を丸めて、出血箇所を手で押えている姿を見るに、意識は飛んでいないらしい。しかし何時も笑顔が浮かぶ、その可愛らしい顔には痛みによる汗が滲んでいるし、なにより顔色が酷く悪い。何時意識が無くなってもおかしくないだろう。そんな姿を見た自分は、意外にも冷静だった。心配で慌てるだとか、そんなことは一切無くて。ただ、心にあるのは静かな怒り…というよりは、苛立ちだった。自分以外の、しかもギャングでもない半グレらしき男に、好敵手である後藤れむを傷付けられた事への。
「だっ、誰だお前!!お前もオレをつけてきたのか!?ポリ公かなんかか!?」
「……」
「お、おいっ、なにか言えよ!!殺されたいのか!?」
震える手で銃を握り締め、向けてくるその姿が、あまりにも滑稽に見えて仕方ない。とはいえ、ぎゃんぎゃんと騒ぐ声が酷く耳障りだ。本当なら、じっくりと痛めつけてから殺してやりたい所ではあるが、それすらも面倒だ。こんなヤツに、そこまでして時間を掛けるのが惜しい。慌てふためく男とは対照的に、落ち着いた様相のまま、銃を持っている片手のみを持ち上げて。手馴れたように素早く、銃口の照準を向けた。
「誰に銃を向けてると思ってんだ、若造が」
…ばん。
返答を聞く間もなく、鉛玉は男のこめかみを貫いて、ぐらりと重力に従って倒れた。騒ぎ立てていた割には、あっけねえな。そう、冷ややかな目で見下ろす。そうしてピクリとも動かなくなったのを確認しては、銃をポッケに押し込んで、こちらを見る彼の元へ駆け寄った。
「……っ、ぷれいやー、殺人…で、……ふ、つかまっちゃうよ、…う゛ぁんちゃん。」
「なに、何時ものことだろう?……それより、後藤ちゃん。腹、撃たれたのか。」
「………ふ、なに、心配……してるの?ッ、まるくなったねえ、う゛ぁんちゃん……、」
「…ハハ。心配、か……、そんなもんじゃないさ。」
「……、?…、な、に…」
地に膝を着いて、荒い呼吸をする彼を抱き上げた。まだまだ小さくて、とても軽いその身体。幾ら死なない(ダウンで済む)とはいえ、大人以上に重症化しやすいというのに、前線へ行くその勇敢さ。そんな彼が好きで、同時に、この少年の負う怪我全てが自分によるモノであれと願ってしまう。たとえ無理だとしても、深く渦巻く独占欲が消えることは無いだろう。決して。
「…もう時期ポリ公共が来るだろうから、さっさと退散するとしようか」
「いてて、……え?いや、なんでぼく…もったまんま、なの?」
「なんでってそんなの、聞くまででもないだろう?後藤ちゃん。」
「いやいや、っ、ちょっ、全く分からないって、」
口数は減らずとも、体は痛みで全く動けそうにないのをいい事に、抱えたまま愛車の方へ歩いていく。このまま置いていけば警察か、救急隊にでも回収されて治療を受けれるだろう。それが一番だと言うのも理解はしている。しかし、今はどうにもそれを心が許してはくれない。治療も看病もなにもかも、自分が施してやりたい。治療なら簡易医療キットがあるし、看病だって幾らでもしてやれる。手間は確かにかかるけれど、そうだとしても…この後藤れむに、今は誰一人として触れさせたくは無いのだから。どうしようもない。
「後藤ちゃんに怪我を負わせていいのは儂だけなのに、あんなぽっと出の半グレに負わされたなんて、許せないだろう?」
「……へ、」
「とはいえ時間は巻き戻せんから、その負わされた傷を儂が手当する。その後の看病も。消毒はきちんとしないといけんからな。」
「しょ、……消毒……??」
「幸い今日は用事が無いからな、ずっと傍に居てやれる。だからゆっくり、儂の家で、療養しよう。な、後藤ちゃん」
「え”っ、ちょ、だれかたすけ……っ」
…悲しきかな。その声は誰にも届くことなく、バタンとしまった車のドアで、無情にも塞がれたのであった。