──打ち合わせが済むと、そろそろランチタイムに差しかかろうとしていたこともあり、どこかで昼食をとってから会社へ帰ることになった。
お店を探して、駅近の繁華街を見て廻っていると、ふとあるものが目に入って、私は「あっ!」と、思わず声を上げた。
「あそこに入りましょうか?」
私の指差す先を見つめ、チーフがフッと小さく笑みをこぼすと、
「ああ、いいかもな」
シルバーフレームのメガネの奥にある眼差しを微かに和らげて、やや気恥ずかしそうに首の後ろに片手を当てがった。
──お店には、『ミコ&リコ・コラボ』と書かれた告知ポスターが貼られていて、キャラとマッチした様々なメニューが写真で掲げられていた。
「お店で、こんなコラボをしていたんですね」
中に入り、向かい合わせに席に着いて言うと、「そうだな」と、チーフが頷いて、多少居心地が悪そうな様子で店内をぐるりと見回した。
「あっ! あの、もしかして他のお店の方が良かったですか? すいませんっ、コラボを見つけて、つい入ってしまいましたが」
改めて見れば、コラボの影響もあって、店内のお客さんは比較的若い女の子が多めだった。
「いや、いい。だが、ちょっと照れくさいかも、な……」
仄かに目のふちを赤らめた、さっきまでの冷静にクライアントに対応する顔とは、真逆なもう一つの顔に、ドキリとさせられてしまう。
……こんな風に男の人が照れるのって、いいな。チーフのこんな表情って、秘密を共有したあれ以来だけれど、もしあの時、キャラクターショップで偶然に出くわさなかったら、絶対に見ることなんてなかったんだろうし……。
そう思うと、希少な機会を与えてくれたミコ&リコにも、ありがとうとお礼が言いたくなるくらいだった──。
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