テラーノベル
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なぜ客間ではなく騎士の宿舎に泊まらせるのだと文句を言いながらも、ビクターは十日間ほど滞在して王都に帰った。滞在の間、毎日のようにリオに会いに来たので、リオは困惑して心底疲れた。だからビクターが帰った時は、心から安堵した。 ビクターは、リオだけじゃなくギデオンにも頻繁に会いにいき、城下町を散策し、領内のあちらこちらを馬で駆け回った。まるで監査されてるようだとリオは思い、それをギデオンに告げると、「監査してるのだろう」と|肯定《こうてい》した。
ビクターは、各地で領主やその部下が、不正をしていないかを調べる役目もしている。この度も休暇だと言いながら、ギデオンが治める土地を調べるよう、王から仰せつかっていたのだろうと、ギデオンが話していた。そして、ケリーからリオを守ろうとしていたのだとも。
え?ほんとに?ビクターが?とリオは半信半疑だったが、確かにビクターは、リオに何かと絡んできたけど、不審な者がいないかを見張っている様子だった。それにリオのことは、単に気に入ってくれているだけのようだ。だからリオは、次に会った時は、もう少し打ち解けてもいいかなと思っている。
そのことをギデオンに話したら、なぜか不機嫌になっていたけど。なんでだ?二人は本当はとても気が合うように思ったけど、やっぱり嫌いなのかな?ギデオンのこと、よくわかったつもりでいたけど、まだまだわからないことが多いな。もっともっとギデオンのことを知りたい。
魔獣討伐中にギデオンが行方不明となった事件から、ひと月が経った。
ギデオンは背中に負った傷のことを、何も言わない。気を失っていたから、傷があったことに気づいていないかもしれない…というのは、リオの願望だけど。でも何も言わないのなら触れずにいようと、リオもあの時のことは何も話さなかった。
そしてケリーは、リオの前には現れなかった。後日、ギデオンが調べさせたところ、ケリーは故郷で大人しく過ごしていた。領城勤めを解雇されてから、故郷を出ていないと言ってるらしい。本当かどうかはわからないが、それ以上は深く調べられなかったそうだ。
朝晩だけでなく日中も随分と寒くなり、外へ出るにはコートや|襟巻《えりま》きが必要になる季節になった。城の中のあちらこちらで暖炉が炊かれ、庭仕事をしていると煙臭い。リオは髪の毛に臭いがつかないよう、襟巻きですっぽりと頭を|覆《おお》い、落ち葉を履いて集めている。その様子を見た城の者達が口々に「かわいい」と言うものだから、リオは納得がいかないと拗ねていた。だって、もうすぐ成人する。
リオが成人するまで後三十日だ。
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