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「いや、ちょっと…」
言いかけた次の瞬間、緑色と黄色の光が俺を包んだ。
眩しいな…。
光が消えると、俺はいつの間にか見たことも無い景色の中にいた。
「コレが本の中?」
ここは住宅街か?
人はいないが車は走ってるな。
「ひとまず海のど真ん中って訳ではねぇようだな。」
確かめる為に一応地面を何度か踏んでみた。
「ここにいても何も始まらないだろうし、ちょっと腹減ったな。飯屋探すか。」
俺は今いる場所から車の動きを見て、おそらく人通りが多いだろうと思う方へと歩いていった。
するとしばらくしてお店らしきモノを見つけたので近付いてみた。
お店の前に立ち、看板を見ると英語(筆記体)で書かれていた。
【Captain Ridley’s bar】
「こりゃ英語か。参ったな…。」
【キャプテン・リドリーのバー】
「おー読めるわ、すげえな俺」
勝手に一人で感心していたが、やってんのか?
不意に横を見ると「OPEN」という看板があった。お店はやっているようだ。
「しかし、何の店なんだ?」
俺が店先で立っていると、店の中から店員と思われる男性が出てきた。
「何してるんだ?誰か待ってるのか?」
大柄な男は茶緑のモジャモジャ髭を蓄えており、怪訝そうに俺も見つめた。
コイツ明らかに外人なのに日本語喋れんのか。
いや、ここじゃ俺が外人か…。
「いや、何の店かなと思って。」
「ここはパブだ。入るか?」
パブってなんだ?
まぁ入ってみるか。
「おう、入る。」
店に入ると、2人用の簡素な丸テーブルと椅子がいくつもあった。中には、四角のしっかりした木のテーブルとソファの席もあり、なんだかレストランのような雰囲気だ。
俺は店員に誘導され、簡素な方に案内された。
「俺はバートンだ。今日は客が少なくてな。お前みたいな子供でも大歓迎だ。」
確かに俺以外には客が1人みたいだけど。
もしかしてまずい店か?
「おっさんゴメン。パブって何の店?」
「まぁ言ってみれば酒場だな。けどウチは朝からやってるし、普通のジュースだって出すし、食い物のメニューだって豊富だ。ほれメニュー」
バートンからメニューをもらい見てみると、バーガーにチキン、ポテトチップス、ピザ、カレーと色々書いてある。
「じゃあバーガーにしようかな」
「お、良いチョイスだな。俺のオススメでもいいか?」
「おう!よろしくおっさん!」
そう言うとバートンはギロっと睨んだ。
「俺はバートンだ!」
「あ、あぁ…ゴメンゴメン。バートンのおっちゃん、よろしく頼む。」
「まぁいいだろう。」
バートンはそういうとカウンターの奥に消えていった。
俺は外国のメニューが珍しかったので、しばらくメニューを見て楽しんでいた。
そういえばもう1人の客は何食べてんのかな?
俺はもう1人の客の方を見てみると豆がたくさん入ったスープを飲んでいた。
「豆か…。あんま美味そうじゃないな」
しばらくするとバートンがオススメバーガーを持って来た。
「そういやお前さん、どこから来たんだい?見慣れない格好だ。」
「俺は…あー日本から来た。」
「日本!?それはまた遠いところから来たもんだ。親戚がこっちにいるのか?」
「まぁ、そうだね。」
俺は正直嘘があまり得意じゃない。
誤魔化すためにもとりあえずバーガーを頬張った。
「お!!美味い!!」
「そうだろ!良い牛肉が入ってな。こんな最高のバーガーは他には無いぞ。それにしても良い食いっぷりだな。ほれ、サービスだ。おかわり自由だぞ。」
そう言ってバートンはオレンジジュースをテーブルに置いた。
「バートンのおっちゃん、あんがと。」
そう言ってジュースに手を伸ばし飲んでいると、ふとした違和感に気付く。
バートンがテーブルから離れない。
もしかして暇なのか?
すると、バートンが少し小さな声で俺に声をかけてきた。
「お前さん、もしかしてシルク・ド・フリークを観に来たんじゃないのか?」