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最終話
もう一度約束を
──────────
ya「 … jp 」
その声に俺は顔を上げた 。
いつもと同じ声 。 いつもと同じ呼び方 。
それなのにどこか違って聞こえた 。
jp「 … yaくん ? 」
目の前に立つyaは少し不安そうに俺を見つめていた 。
ya「 俺さ 、 昨日夢を見たんだよね 」
jp「 夢 ? 」
ya「 うん 。 誰かと指切りしてる夢 」
yaは自分の小指を見つめた 。
ya「 その人の顔はやっぱり思い出せなかった 」
ya「 でも 、 声は聞こえたんだ 」
俺は何も言えなかった 。
ya「 『 ずっと一緒にいようね 』 って 」
心臓が嫌な音を立てた 。
忘れたはずの約束 。
yaの中から消えてしまった 、 俺たちの時間 。
jp「 … それで ? 」
震えそうになる声を必死に抑えた 。
yaは少しだけ笑った 。
ya「 目が覚めたとき 、 すごく寂しかった 」
ya「 誰かとの大切な約束を忘れてる気がして 」
jp「 … そっか 」
ya「 でもね 、 俺知ってるんだと思う 」
yaが俺を見た 。
ya「 その人が誰なのか 」
息が止まりそうだった 。
ya「 jp 。 俺たち 、 昔約束したんでしょ ? 」
… もう 、 嘘はつけなかった 。
jp「 うん 」
ya「 ずっと一緒にいようって ? 」
jp「 … うん 」
声がかすれた 。
何度も思い出した 。 何度も夢に見た 。
何度も 、 もう一度だけでいいから聞きたいと思った 。
yaの口からその言葉を 。
ya「 … ごめんね 」
yaは小さく頭を下げた 。
ya「 俺 、 忘れちゃったんだね 」
ya「 jpとの大切な思い出 」
jp「 yaくんのせいじゃないよ 」
ya「 でも 、 jpは覚えてるのに 」
jp「 うん 」
ya「 俺だけ何も覚えてない 」
yaの声が震えた 。
ya「 jpが俺のこと大切にしてくれてた時間も 」
ya「 俺がjpに何を言ったのかも 」
ya「 … 全部 、 わからないんだよ 」
ずっと聞きたかった言葉だった 。
yaが俺との思い出を失ったことを悲しんでくれる 。
俺との時間をなかったことにしたくないと思ってくれる 。
それだけで救われるはずだった 。
なのに 、
jp「 … 俺 、 怖かったんだ 」
気づけばそんな言葉が口からこぼれていた 。
jp「 yaくんが俺のこと忘れたとき 、 もう二度と 」
jp「 前みたいには戻れないんだって思った 」
ゆ め ⑅
2,646
り お .
140
#星のつぶ
星空きらら
807
ya「 … 」
jp「 俺だけが覚えてる思い出なんて 」
jp「 意味ないんじゃないかって 」
jp「 俺が大切にしてしたものはyaくんにとっては 」
jp「 何も残ってないんだって 」
ずっと言えなかった 。
忘れられたことが悲しかった 。
もう一度仲良くなりたいと思った 。
でも 、 また忘れられるのが怖かった 。
だから本当は 、 何度も聞きたかった 。
俺のこと好きだった ?
俺と過ごした時間は楽しかった ?
俺がいなくなったら寂しいと思ってくれる ?
けれどそんなことを聞いてしまったら 、
yaが覚えていないことを責めてしまいそうだったから 。
jp「 … でもね 、 yaくん 」
俺はゆっくり顔を上げた 。
jp「 俺 、 もう一回yaくんと約束したい 」
yaが目を見開いた 。
ya「 … え ? 」
jp「 昔の約束を覚えていなくてもいい 」
jp「 今までのことを全部思い出せなくてもいい 」
本当は思い出してほしい 。
あの日のことも 。 一緒に笑ったことも 。
何でもない話をしたことも 。
俺にとっては全部が宝物だから 。
それでも 、
jp「 今のyaくんとこれからの思い出を作りたい 」
yaの目に涙が浮かんだ 。
ya「 … 俺でも 、 いいの ? 」
jp「 yaくんじゃなきゃ嫌だよ 」
言った瞬間 、 yaは顔を伏せた 。
ぽた 、 と床に小さな雫が落ちた 。
ya「 … ずるいよjp 」
jp「 え ? 」
ya「 そんなこと言われたら 、 俺 … 」
yaは何度も涙をぬぐった 。
ya「 もっとjpのこと知りたくなっちゃうじゃん 」
その言葉に胸の奥が熱くなった 。
jp「 知ってよ 」
俺は笑った 。
jp「 何回でも教えるから 」
yaはしばらく黙っていた 。
それから 、 そっと小指を差し出した 。
ya「 … じゃあ 、 もう一回 」
その小指を見た瞬間 、 視界がにじんだ 。
ずっと 、 もう一度だけ交わしたかった約束 。
俺は震える手で 、 自分の小指を絡めた 。
jp「 … うん 」
yaがゆっくり口を開いた 。
ya「 ずっと一緒にいようね 」
あの日と同じ言葉 。
でも 、 あの日とは違う 。
今度は忘れてしまった過去に縛られるためじゃない 。
これから先の未来を 、 一緒に歩いていくための約束 。
jp「 … 約束 」
俺たちは指を絡めたまま 、 小さく笑った 。
その瞬間 。
ya「 … あ 」
yaの表情が変わった 。
jp「 yaくん ? 」
yaは目を閉じて 、 額に手を当てた 。
ya「 … 今 、 何か思い出した 」
俺は息をのんだ 。
jp「 昔のこと ? 」
ya「 うん 。 でも全部じゃない 」
yaはゆっくり目を開けた 。
ya「 俺 、 jpと一緒に笑ってた 」
ya「 ゲームしてくだらないことで言い合って … 」
少しずつ 、 言葉を探すように続けた 。
ya「 それで俺が 『ずっと一緒にいようね』 って 」
ya「 言ったんだ 」
jp「 … うん 」
ya「 jpがすごく嬉しそうに笑ってた 」
その記憶が戻ったのか 。
それとも 、 今の俺を見てそう思っただけなのか 。
だけど 、 yaは確かに笑っていた 。
ya「 … なんかわかった気がする 」
jp「 何が ? 」
ya「 全部思い出せなくても今 」
ya「 jpと一緒にいたいって思うことは本当なんだなって 」
胸がいっぱいになった 。
俺がずっと欲しかった答え 。
過去のyaがどう思っていたのか 、 それだけじゃない 。
今のyaが俺と一緒にいたいと思っていてくれている 。
それが 、 何よりも嬉しかった 。
jp「 … ありがとう 、 yaくん 」
ya「 なんでjpがお礼言うの ? 」
jp「 さぁ 、 なんでだろうね 」
ya「 なにそれ 、 意味わかんない 」
yaは少し笑って俺の隣に並んだ 。
その距離は 、 昔より少しだけ遠いのかもしれない 。
でも 、 もう無理に埋めようとは思わなかった 。
これから少しずつ近づけばいい 。
忘れてしまった思い出を 、
無理やり戻そうとしなくてもいい 。
俺たちにはこれから作れる思い出があるのだから 。
ya「 ねぇ jp 」
jp「 ん ? 」
ya「 これからもずっと一緒にいてくれる ? 」
俺はyaを見た 。
そして 、 今度こそ迷わず答えた 。
jp「 うん 。 ずっと一緒にいるよ 」
yaは安心したように笑った 。
ya「 … 約束ね 」
jp「 約束 」
絡めた小指を 、 もう一度だけぎゅっと結んだ 。
あの日の約束はyaの記憶から消えてしまった 。
俺だけが覚えている時間もきっとある 。
それでも 、 忘れたからといって
過ごした時間まで消えてしまうわけじゃない 。
俺が覚えている限りあの日の約束は確かに存在していた 。
そして今日 、 俺たちはもう一度約束した 。
今度はどちらか一人だけが覚えている約束じゃない 。
二人で作っていくこれからの約束 。
jp「 … yaくん 」
ya「 なに ? 」
jp「 これからもよろしくね 」
yaは少し不思議そうな顔をして 、 それから笑った 。
ya「 こちらこそ 、 jp 」
その笑顔を見て俺は ようやく思えた 。
もう過去だけを見つめていなくてもいいんだ。
君が忘れた 、 僕との約束 。
それは 、 終わった約束じゃなかった 。
何度忘れても 。 何度離れても 。
もう一度 、 君と結び直せる約束だった 。
「 ずっと一緒にいようね 」
今度こそ 、 二人で 。
──────────
君が忘れた 、 僕との約束
完