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教室の前に立っていたみことは、胸の奥がそわそわしていた。
昨日から、すちの様子がどこかおかしい。
笑うのに目が笑っていないような、距離が少しだけ遠いような。
その違和感に気づくたび、みことの胸はぎゅっと締めつけられた。
意を決して教室の扉を開ける。
「すち……?」
座っていたすちは、ゆっくりと顔を上げる。
その目を見た瞬間、みことは一瞬呼吸を忘れた。
黒い。
優しくてあったかい色だったはずなのに、底が見えないほど静かに冷えている。
「……みこと。何?」
いつもの柔らかい声とは違った。
淡々としていて、突き放すみたいに軽い。
「え、あ……なんか、最近元気ないから……大丈夫かなって」
「俺が元気かどうか、みことに関係ある?」
言葉が、氷みたいに鋭かった。
「……っ」
胸の奥をひっかかれたような痛みに、みことは思わず唇を噛んだ。
昨日までなら、
“ありがと、心配してくれて”
って笑ってくれてたのに。
「そ、そんな言い方しなくても……俺、心配で……」
「心配する必要ないよ。俺のことなんて」
「すち……?」
その拒絶は、まるで透明な壁をばさりと下ろされたみたいだった。
すちはゆっくり立ち上がり、みことの横をすり抜ける。
すれ違う瞬間、かすかに肩が触れた。
でも、すちは振り返らなかった。
「帰るから。じゃあ」
冷たい声だけが残り、気配は遠ざかっていく。
みことはしばらく動けなかった。
胸の奥がしゅるしゅると縮んで、小さく息を吸うだけで痛い。
(……俺、なんかした? 嫌われた……?)
不安が喉に詰まって、声にならない。
気づいたらみことは、その場に立ち尽くしたまま涙をこぼしていた。
止めようとしても、全然止まらなかった。
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