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『凌はあいつの頭脳が目当て』
京介が言った言葉が頭で再生される。
文化祭以降、凌は萩原と仲良くというか、よく関わるようになった。
たしかに関わりのほとんどが勉強関連だった。でも、ただの頭脳目当てとか、凌はそんな子じゃない。
京介、なんでそんなに萩原にきつく当たるんだろ。しかも凌のことまで巻き込んでいる。
そういえば、と中学の頃を思い出した。
「バイト帰り?」
突然、後ろから声がした。
「京介」
「よく会うな」
「京介もバイト帰り?」
「いや、今からコンビニ行くだけ」
「そっか」
「京介さ」
私が間を置くと京介は、何?と聞いた。
「まだ凌のこと好きなの?」
「なんで?」
「凌から萩原遠ざけたいのかなって」
「中学のときの話だろ。もう3年も前だぞ」
「じゃあなんで萩原に酷いこと言ったりするの?」
「俺の嫌いな奴と仲良くしてんのが腹立つから」
「それじゃまるで、今も凌が好きみたいな言い方だよ」
酒井は何度かゆっくり瞬きをした。
「なら、お前と8ヶ月も付き合ってねえよ」
「そっか。じゃあなんでだろ」
「3年前は俺のこと好きだったのに」
酒井は、静かな低い声でそう言った。嫉妬とか、そういう意味ではないような気がした。
「中学のときのあの時間が好きだった。あのときの相手は俺だったけど、今は萩原。萩原なのが、俺の嫌いな奴なのが腹が立つんだよ」
まるで、凌が萩原のこと好きみたいな言い方だけど。
「萩原、悪い人じゃないと思うよ。ちゃんと話してみないとわかんないよ」
酒井は何も言わないまま、コンビニに入って行った。