青「うるみや…?」
橙「…」
そっか、言えないんだね。
わかるよ、わかってるって思いたい。
君がそんな顔をするなら、きっと難しいことなんだね。
青「帰ろうか」
橙「え…。」
青「もう暗くなっちゃうよ?」
「懸命な判断だね」
「ほら、さっさと帰りな」
「文献ならいくらでも持っていきな」
青「ありがとうございます」
青「じゃあ…これ、借りていきますね」
重たい扉を開けて、薄暗くなった森の中を静かに歩いていく。
うるみやだってそう、一言も喋らずにただ歩いている。
どうしたものか。
うるみやは話す気がないのだろう。
君の病気をいち早く治してあげたい。
あのお婆さんはきっと本当に知っている人だ。
だから、君も治し方を知ってるはずなんだよね…
言わないということは、言いたくないということ。
それを詮索することはご法度であり、絶対にあってはならない。
そして、言えないということに辱めを覚えるようなことにならないで欲しい。
青「ねぇうるみや」
橙「なんや…?」
青「うるみやは悪くないからね…?」
橙「…」
橙「大丈夫、」
橙「そんなに…気にしてへんよ」
橙「ただ、ちょっと…」
青「言わなくていいよ」
青「大丈夫」
橙「なぁ、しゃる」
橙「なんでしゃるはそんなに俺のこと気にかけてくれるん?」
橙「期待、してもええん…?」
ぽつりと不意をついたように口から出た言葉に驚きを見せるうるみや
期待って言うのは_
橙「ごッ、ごめんッ…ちがくてッ」
橙「ちょうど駅着いたし俺トイレ行ってくるなッ、!」
俺は1人になったことをいいことに、うるみやの言葉を噛み砕いてみることにした。
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