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百鬼夜行

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百鬼夜行

10 - 第10話

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2025年09月02日

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月が高く昇り、雪が静かに舞う夜。


ぬらりひょん・ないこは、焚き火の片づけを終えて立ち上がる。


ふと、背後にまだ残っている気配を感じて振り返ると――


「……初兎?」


雪女・初兎が、少し距離を置いて座っていた。

その白い髪が、夜風にそっと揺れている。


「どうした? 寒くなってきたし、そろそろ――」


「……行かないで。」


その声に、ないこは一瞬動きを止めた。


初兎は、俯いたまま、

ないこの着物の袖をきゅっと掴んでいた。


「……もう少しだけ、一緒にいて。」


ないこは、驚いた顔をして、それから少し笑う。


「……今の、けっこうズルいな?」


「……え?」


「いつもの初兎なら、“寒いから”とか理由つけそうなのに、

今日はストレートなんだなって。」


初兎は、そっと袖を離そうとした。


でも、今度はないこがその手を取る。


「いいよ。俺も、帰る気なかったし。」


「……ほんと?」


「うん。お前がいるなら、雪の中でも寝れるくらい。」


その言葉に、初兎の目元がやわらかくほどける。


ないこは火の名残りにあたたまりながら、

肩を寄せて、彼女の髪にそっと手を伸ばした。


「……今日、お前が袖をつかんだこと、

たぶんずっと覚えてる。」


「……なんで?」


「だって、嬉しかったから。

お前が、俺を“必要だ”って顔してくれた。」


「……そんなん、ずるいのはどっち。」


「うん、両方ずるい。」


ふたりの間にあった距離が、

今夜また、ひとつ溶けていった。


雪が、まるで祝福のように舞い続ける。


世界が白く包まれても、

その手のぬくもりだけは、確かにそこにあった。

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