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夏目若葉
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#溺愛
星キラリ

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月詠 涼
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鷹槻れん

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私が仕事人間になるなんて、学生時代の自分を思い返すと想像もつかない。
元カレと付き合っていたころは恋愛がすべてで、なによりも恋人を優先していたくらいだから。
だけどその恋もうまくいかず、就職してからの私は恋愛から遠ざかり、心血を注げる対象は仕事だけになったのだ。
仕事での成果は次のやりがいに繋がっていくから、私にとっては恋愛よりもわかりやすい。
「すごく素敵でカッコいい女性の上司がいて、その人が私に目をかけてくれてるんですよ」
「へぇ、そうなんだね」
商品部の部長は、五年前に我が社にヘッドハンティングでやってきた伊地知さんという女性なのだが、私が新入社員のころから真剣に仕事に取り組む姿勢をとても評価してくれている。
ジニアールは“アミュゾン”という自社ブランドを商品展開しているのだけれど、私は商品部の人間としてなにができるのか、退勤後や休日でも常に考えるようになった。今はオンもオフもない。
伊地知部長が私に期待してくれているからこそそれに応えたいし、努力は実を結ぶと信じたい。
「だけど彼氏はいなくても、気になる程度の男もいないの?」
「うーん……気になるっていうか、すごく憧れてる人ならいるかな。昔から尊敬しているんです」
意味深な発言をしてしまったが、今咄嗟に頭に思い浮かんだ人は、私が勤めている会社の社長だった。
とはいえ私が恋人になれるとは微塵も思っていない。対面できちんと話したこともないのだから。
社長は本当に素晴らしい人で、日々の努力を惜しまないというモットーにも共感できる。
目を奪われるのは女性だけではなく、あんなふうにカッコよくなりたいと憧れて目標にする男性もきっと多いはずだ。
「なんでその男じゃダメなんだい?」
「ダメではないけど、雲の上の存在で手を伸ばしても届かない人なの。それに、今は恋愛より仕事で頭がいっぱい」
「うちの孫も同じようなことを言っとるわ」
私の発言を聞き、辰巳さんが肩を落として苦笑いをした。
辰巳さんのお孫さんの話は今までに詳しく聞いたことはなかった。たしか一緒に暮らしてはいなくて、私より六歳ほど年上で男性だったはずだけれど、それくらいしか知らない。
「お孫さんはどんなお仕事をされてるの?」
碁盤を睨んだままの祖父をそっちのけにして辰巳さんと話していると、祖父が突然私に視線を向けた。
「たっちゃんの孫は会社の社長だ。すごいだろ」
なぜか祖父が自分のことのように自慢げに言うと、辰巳さんは笑いながら謙遜をして顔の前で手を横に振った。
「うちの孫は趣味が高じて会社を作っただけだ。まぁ……信頼できる仲間と一緒にやれてるから幸せだろうけどな」
「すごいです。信念と覚悟がなきゃ会社なんてつくれないもの」
自ら起業するには多大なエネルギーが必要だと思う。
もし最初に資金の借り入れをするのなら、事業を成功させなければ借金だけが残ってしまうのだから。
実は我が社の社長も、親友の五十嵐朔也という人物と一緒に会社を立ち上げたそうだ。
五十嵐さんは今、専務という肩書で、社長の右腕としてしっかりとサポートをしていると聞く。
辰巳さんのお孫さんもきっと、社長や専務のようにバイタリティあふれる人なのだろう。活き活きとしていそうで、とても素敵だと思う。
「しかしアイツはこのままだとずっと結婚しないだろうから、それが気がかりなんだよ。年齢も三十一になるのに見合いを勧めても嫌がってばかりだ」
「お見合いかぁ……」
「なんとか良い結婚相手を見つけてやらないとな」
意気込む辰巳さんから視線を逸らして苦笑いを浮かべた。
今のところ結婚に興味がない人にお見合いをさせようとがんばっても、説き伏せるのはむずかしいのではないだろうか。
私も同じだから、お孫さんがどう思うのか理解できてしまう。
「冴実ちゃんがうちの孫と結婚してくれたらいいのになぁ」
「え、私?!」
突然降って湧いた話に驚いて、思わず声がひっくり返った。今のは冗談に決まっているのに。
にこにこしている辰巳さんにつられて、私もアハハと乾いた笑みを浮かべた。
コメント
1件
おつかれ〜!第4話読んだよ! 今回は碁会所でのひとコマだったね。冴実さんの仕事に対するストイックな姿勢と、昔は恋愛一直線だったっていうギャップがめっちゃ人間らしくて良いわ。伊地知部長に目をかけられてるエピソードも、仕事に生きる人のリアルって感じで響いた。 あと辰巳さんが「うちの孫と結婚してくれたら」って冗談混じりに言ったところ、思わず「おお?!」ってなったよね。冴実さんの「え、私?!」って動揺してる感じ、めっちゃ想像できるわ(笑)。これ伏線かな?続きが気になる🔥