💙×💛 ※モブ出演あり
💙視点
「滉斗君、ご飯出来たよ。」
「ん、今行く。」
リビングの方から聞こえてきた声に返事をする。長く付き合っていた涼ちゃんと別れてから数日が経った。勢いで新しい恋人を作ってしまったが、自分の家に涼ちゃん以外が居るのは何故だか落ち着かない。
「もう〜、遅いよ。今日はね、お洒落を意識したの!」
リビングの扉を開けると、新しい彼女が楽しそうな笑みを浮かべて立っていた。お洒落、という言葉に机上に置かれた料理に目を落とす。おろし大根がかかったハンバーグ、まではいいんだが……。隣に置かれたサラダが問題だった。大嫌いのパクチーをメインにエビがいくつか和えられているサラダだった。
「あー…、ごめん俺パクチー食えない。」
涼ちゃんだったら出さない、なんて考えが過ぎって心が締め付けられる。もう考えないって決めたのに。
「……そっか!ごめんね、食べれないの出しちゃって!すぐ新しいサラダ作るよ!」
物分りの良さだけは涼ちゃんよりも遥かに上だ。喧嘩にだってならないし俺の為に一生懸命動いてくれる。けど、何か物足りない。
直ぐに新しいサラダ作りに取り掛かる彼女を待つために椅子に腰をかける。ふと開いたスマホの画面に1件の通知が来ていた。どうやらインスタのようで、元貴のアカウントだった。
ただ何も考えずにタップしたことを直ぐに後悔した。上げられていた写真には涼ちゃんが映っていて、元貴の他に女の子が2人くらい居た。もう俺以外に恋人が出来ている、なんて勝手な妄想をして気分が下がる。新しい恋人がいるのは俺だって一緒なのに。
「滉斗君はさ、私のこと好き?」
特に会話もなく黙々と食べ進めていれば、目の前に座る彼女から突然質問を投げ掛けられる。こういった場合に発す言葉は自分の中で決まっていた。
「ちゃんと好きだよ。」
本音かと問われたら、嘘に近い。ずっと1人にしか向けていなかった”好き”の使い方がよく分からないのだ。今の俺に心からの愛は難しい。
「…良かった!滉斗君ってモテモテだから、私を選んでくれたのが信じられなくて。」
「うん……。」
嬉しそうな表情を浮かべる相手に興味が持てず、適当な返事を返す。それが悪かったのか、不満気な顔をしだす彼女に内心舌打ちをする。
「何考えてるか分かんない、どうせ私の他にも女居るんでしょ。」
何を考えているかわかんない、何て今まで涼ちゃんから言われたことがなかった。寧ろ、「分かりやすいね若井は。」と言われる時の方が多い。涼ちゃんなら、分かってくれるのに。
「居たら何?」
「……っ、最低!」
そう彼女が言い放つとの同時に、乾いた音が部屋に鳴り響く。突然頬に感じる鋭い痛みに状況が理解できなかったが、玄関の扉が閉まる音ではっ、とする。
出ていった彼女を追いかける気にもなれずに、ため息をついてスマホを取り出す。涼ちゃんと付き合っていた頃に比べてスマホと見つめ合う時間が長くなったとは思う。それほど彼と過ごす時間が楽しかった。
自分の気持ちを信じたくはないが、今は少しだけ君に会いたい。
コメント
1件
涼ちゃんのこと引きづってる若井……でも涼ちゃんには新しい人が……😵💫うわぁぁ!ここからどう動くのか楽しみ😖💓