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「なにあれ?」

麗は画面の向こうで起きたありえないことの連続にこれは夢かと隣に座る明彦の顔を見た。

画面の向うの姉はいつものようにどこまでも美しかったのに、いつもと違った。


解釈違いという言葉が頭をよぎる。

あんなのいつもの泰然とした姉じゃない。

大体、麗がそんな沢山の男の人を夢中にさせるような可愛い子という前提からまずおかしい。


麗は画面の向こう側で起きたありえないできごとの連続に、最早夢を見ているのではないかと思い始めた。


明彦はゆったりと足を組んで、先程までソファの上でウイスキーを飲んでいたが、こら、と両手で顔をつねる麗を止めさせるため頬に触れてきた。



「麗音曰く、家族仲がこじれてると思われたままだと子供服を売る会社としては具合が悪い。だから、イメージ戦略だそうだ」

「……イメージ戦略」

「ほら、見てみるといい」

明彦がスマートフォンを見せてくれた。

SNSのトレンドランキングに、『美女シスコン社長』と表示されている。

他にも、『美人シスコン社長爆誕』、『リアル設定森杉有能シスコン社長』、『経済番組でまさかの神回』、『シスコン界の新星曰く「26歳はまだ子供」』、『御曹司はあなたの大切な者を盗んでいきました。あなたの妹です』、などと書かれ、大盛り上がりだ。


麗がそれを見ている間に明彦がノートパソコンを開いた。

「ネット通販も一気に注文が入っているな。サーバーを強化しておいて良かった」

明彦は真面目に仕事に意識を向けているように見えるのに、なんだかいつもと違って見えた。


「そっか、すごい……さすが姉さん」

いつものように姉を褒め称える言葉がすらすらと出てこない。


「麗、大丈夫か?」

「な……なにが? 姉さんってほんとすごいよね」


ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、目が回る。

姉が参観に来てくれたのは最初で最後一度きり。

高三の進路指導のときに、来てくれたのは姉の元担任でもあった教師がわざわざ電話したからだ。

中卒で働くと言ったときも、激怒なんかしてない。

この私の妹が中卒では外聞が悪くて困ると姉は一言命じてきた。

だから、麗は大人しく高校に行った。


それになにより、姉は明彦との結婚を歓迎していた。よくやったと褒めてくれた。


それがまるで、愛する妹を取られたくなかったかのような演技をするだなんて。


わかっている。会社のためだ。

これで姉さんは世間の人気者。父のせいで失った客足も戻るだろう。



息が苦しい。見たくない現実を強制的に突きつけられる。

『あのクソ親父も愛人に子供まで産ませるとはね、ほんと、厄介だわ』

厳重に蓋をして、忘れると決めた、偶然聞いてしまったあのときの言葉。


そうだ、本当はわかっていた。。

姉にとって麗が都合のいい、どうとでも便利に使える存在であるということはずっと、ずっと、わかっていた。

本当は気づいていた、知っていた、理解していた!

だから、尽くして尽くして尽くして尽くした!


姉のためならどんなことだってした。

それこそ、姉の言う品性下劣な投資家の男とだって、それが姉のためなら結婚してた!


(私には姉さんしかいない、姉さんしかいないからっ!)


姉に可愛がられて、好かれて、愛されるためなら、なんだって……

そのとき、硬直する麗の体を明彦が引き寄せ耳元で語りかけてきた。


「麗には俺がいる、これまで、俺だけはずっとそばにいただろう? これからも俺がずっとそばにいる」

まるで、麗が今、何を考えているか見透かしていたかのような言葉が、体に浸透させようとするかのように囁かれる。


「愛しているよ、麗。この世で俺だけが、麗を愛してる」


抱きしめてくる力強い腕。ゆっくりと明彦の顔を見ると、真剣な瞳をしている。

それなのに、麗は気づいてしまった。

それは、ずっと可愛がってもらってきた麗にしかわからないささやかな違い。

明彦は心配そうな表情をしている。だが、瞳の奥が爛々と輝いているのだ。

それは、まるで虎視眈々と狙っていた機会を逃さずにとどめを刺そうかとする獣のよう。

(明彦さん、どうしてそんなに楽しそうなの?)

政略奪結婚 〜姉の身代わりのはずが、何故かイケメン御曹司に溺愛されています?〜

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