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「 ひばり、? 」
俺の手を引っ張って雲雀は軽く走る。
あまりに急だった。
だって意識が戻ったかと思ったら
夜の小さな街灯に照らされた歩道だった。
奥には大きな橋が見える。
「 大丈夫、奏斗、俺がちゃんと連れて行くから、っ… 」
「 はぁ?どこに、… 」
俺はそこで話しかけるのをやめた。
よく見たら雲雀の顔のあたりから光っているものが見えた。
俺は涙だと察した。
あれ、俺死んだのかな。
と思って頬を叩いてもそんな雰囲気は一つもない。
ずっと俺はなにをしていたんだ?
「 …、雲雀、今どこに向かってんの? 」
「 Zeffiro、 … 」
なんだ、?
涙流してまで行く所なのか?
「 雲雀、まって走らなくても、…ゆっくりいけば、 」
「 時間ないの、! 」
時間、…?
時間なんていくらでも、…
もう今日は仕事終わったし、
急に寒気を感じるたかと思ったら、
だんだん雪が降ってきた。
そうか、明日はクリスマスか、…
クリスマスツリーとか、途中の記憶全くないな…
あれ、そういやいまなんで走ってんだっけ…?
寒すぎるのか分かんなくなってきたな…
「 奏斗、俺のこと忘れないでよ、…っ、 」
「 …、? 」
「 絶対、手離すなよ、…? 」
「 …、わかってる、 」
俺は敢えて微笑んだ
Zeffiro
雲雀は一生懸命カウンターの棚や、上などを漁り始めた。
ロッカーなども急いで漁り始めていた。
俺がそこに行くわけにもいかず、ずっと席に座って待っていた。
暗いままのカフェに響くガチャガチャと漁る音。
なにか落とし物でもしたのだろうか…?
「 雲雀、何か探してるなら俺も… 」
「 あぁったぁぁぁ!! 」
デカい声が部屋中に響く。
俺もかなり驚いて目を見開いてしまった。
「 は、はは、…はぁ、…はは、…! 」
「 よかった、あったぁ、……っ 」
雲雀は急に笑いながら泣き始めた。
俺は咄嗟に雲雀の所に駆けつけて、抱きしめてしまった。
雲雀も俺にしがみついて、鼻を啜る音を繰り返している。
目の前の窓を見る。
はらはらと美しく雪は靡いていた。
ダークウッドのオシャレな壁と床に囲まれて、若干落ち着いた。
雲雀も落ち着いた様だから、離そうと思ったけど、雲雀は離そうとしなかった。
ずっと俺の上着を引っ張る。
「 ひばり、…もう離れても、… 」
「 うるさい、…もうちょっとだけ、いいから… 」
さっきまであんなに急いでたのに…逆に忙しいやつだな…
少し呆れたけど、確かにこの部屋の床は冷たかった。
気温が低くなっていて、確かにこの体勢の方が暖かい。
少し待ってやる事にした。
「 ……、雲雀ってさ、今なに探しにきたの 」
「 おしえない、… 」
「 えぇ〜、…教えてくれたっていいじゃんか… 」
「 まだ、… 」
「 雲雀ってなんで俺連れてきたの 」
「 そこ一番重要、… 」
ゆっくりゆっくりとスローペースで話が進む。
俺は視界に入った時計を見る。
23時59分、今丁度0時になった。
そう思ったら、雲雀が俺を体から離した。
「 ……、奏斗去年の今日の事覚えてる? 」
「 …、ごめん 」
「 いいよ、しょうがないし。 」
雲雀の目元は赤く腫れていた。
何回も瞬きをしていて、眠そうだった。
「 ……、ヒント、記念日 」
「 …クリスマス、…? 」
「 おしい! 」
「 …、雲雀誕生日? 」
「 3ヶ月前だよ、笑 」
「 答え言うよ? 」
「 ……、うん、? 」
「 結婚記念日。 」
「 け、っこん、…? 」
「 おめでとう。 」
「 …、指輪見る?それだったら分かるかも。 」
雲雀はゆっくりと、自分の手の中に入っていた指輪を取り出し始めた。
雲雀が探していたのは指輪だったのか、…?
「 ほら、入れてごらん? 」
「 入れるって、…、 」
「 はやく! 」
その指輪は、自分が思った以上に、自分の指にピッタリ入った。
キツくない、でもゆるくない。
すごくぴったりフィットしてる。
その瞬間、俺は色々な事を思い出した気がした。
確か俺は夜雲雀とここにきて、その帰りに事故にあって…、
一昨年
「 奏斗、ちょっといい? 」
「 んー?いいよー 」
ダークウッドカラーの壁と床、壁際には鍵付きロッカー、部屋の奥には一つの小さな窓。
俺ら以外は、誰もここにはいなかった。
「 ……、奏斗 」
「 ん? 」
「 …、おれと一緒に、いてくれますか 」
その時雲雀は黒いケースに入った指輪を出してくれた。
その指輪に付いていたダイヤモンドが外の光を反射してキラキラしていた。
俺の心臓は今にも壊れそうなぐらいドクドクしてた。
あの落ち着いたダイヤモンドとは正反対だった。
「 ……、いいよ 」
「 へ、…? 」
「 雲雀と一緒にいるよ。 」
でもその時流した涙はダイヤモンドには無かった俺の魅力だった。
5ヶ月前
「 お客さんに指輪バレたく無いじゃん、今からロッカーに入れに行こうよ! 」
「 お、ええよ 」
その夜、俺たちはZeffiroに指輪を隠しに行った。
指輪は雲雀のロッカーに入れた。
その帰り道、コンビニに寄った。
深夜23時の話だし、人は少なかった。
コンビニで肉まんを2つ買ってコンビニの前で2人で食べた。
その後の話だった。
横断歩道を渡っていた時、俺は勢いよく車に撥ねられた。
丁度頭を打ったらしく記憶喪失になっていた。
そして、今
ぜんぶ思い出した。
あの時の雲雀の涙は、不安の涙だったのか
俺は涙を流した。
まるでバケツをひっくり返したかの様に。
「 ひばり、…っ、ごめん、 」
「 ……、よかった、……、思い出した、…っ…? 」
「 ぜんぶ、思い出した、っ… 」
「 おれずっと、…ひばりを、っひとりにしてた、っ… 」
「 いいんだよ、ちょっと不安だっただけだから。 」
結婚した事
指輪をこっそり隠しに行った事
全部思い出した。
悲しみの奥底には一つの安心が隠れてた。
やっぱり、これを手にするのは難しい。
よくある、お箸で豆を取るゲームぐらい、難しい。
でも悲しみはずっと続かないってことは、その安心を手に入れたからじゃ無いだろうか。
コメント
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ストーリー書く天才すぎでは 🤦🏻♀️💗 待って 、 わたしも wtri 彡 と fur 彡 の小説書いてるんだけど !! これって 運命 … 、 🤔🤔 ( え