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研究区画全体が揺れた
天井から埃が落ちる
赤い警報灯が、
何十年ぶりかに点灯していた。
『警告』
『中枢反応再起動』
『ヴェルトラウム接続率上昇』
機械音声が、
死んだ施設の中に響く。
「……うわ、最悪」
ヒロトが短剣を構える
「絶対ロクなことにならねぇ」
暗闇の奥
巨大な肉塊が蠢いていた。
壁と融合した黒い臓器
脈打つ血管
無数の“目”
その全部が、
ゆっくりこちらを見ている。
モトキは銃口を向けた
「リョーカ、あれ何だ」
リョーカは少し黙る
そして
「ヴェルトラウムの、“心臓”」
空気が止まった
「心臓……?」
「うん。昔、ボクが壊した中枢の残骸」
リョーカの黒い瞳が揺れる
「でも、完全には死んでなかったんだね」
ドクン
巨大肉塊が脈打つ
同時に
リョーカの身体も僅かに震えた。
「ッ……!」
ヒロトが気付く
「おい、お前」
リョーカが苦しそうに胸を押さえる
「まだ、繋がってるのか」
「……少しだけ」
少しどころじゃない
モトキには分かった。
リョーカの身体の侵食が
三年前より進んでいる。
首筋
指先
瞳の奥
黒い線が
静かに広がっていた。
『RX-00』
突然
施設全域に声が響く
あの声だ。
ヴェルトラウム
『帰還せよ』
肉塊の無数の目が開く
『お前は我々だ』
リョーカが俯く
肩が震えていた。
モトキは前へ出る
「リョーカ」
「……」
「こっち見ろ」
ゆっくり
リョーカが顔を上げる
不安そうな顔
壊れそうな顔
三年前と同じだった。
モトキは静かに言った
「お前が何になっても」
「お前はリョーカだ」
沈黙
その瞬間
リョーカの瞳から
黒い涙が落ちた。
「……ずるいよ」
か細い声
「そんなこと言われたら、戻りたくなるじゃん」
だが
ヴェルトラウムは止まらない。
肉塊が裂ける
中から現れた
人型
何十体もの
白い仮面の兵士。
『排除』
一斉に動く
速い
「ヒロト!!」
「分かってる!!」
ヒロトが飛び出した。
床を蹴り
最前列の敵へ突っ込む
ガギンッ!!
短剣と白刃がぶつかる
火花
ヒロトが笑う
「久々だな白いやつら!!」
回し蹴り
敵の首が折れる
そのまま短剣で頭部を貫く。
だが次の瞬間
横から三体
「チッ!!」
パンッ!!
パンッ!!
モトキの援護射撃
正確すぎる銃弾が
敵の関節だけを撃ち抜く
動きが止まる
「ナイス!!」
ヒロトがまとめて切り裂く
だが
数が多い
白い兵士達が、
無限みたいに現れる。
その時だった
リョーカが前へ出る
「……ごめん、ちょっと借りるね」
黒い光
次の瞬間
周囲の白い兵士達が、
突然動きを止めた。
『接続権限競合』
『RX-00介入確認』
「え」
ヒロトが目を見開く
リョーカが、
ヴェルトラウム側の命令系統を奪っている。
「リョーカ、それ……」
モトキの顔が険しくなる。
危険だ
使えば使うほど、
侵食が進む。
だが
リョーカは笑った。
「大丈夫」
嘘だ
全然大丈夫じゃない
髪の先が黒く染まり始めている
皮膚の一部が
バグみたいに変質していた。
それでも
「今度はちゃんと帰るって、約束したから」
その瞬間
ヴェルトラウムが咆哮した。
研究施設全体が裂ける
肉塊の中心
巨大な“瞳”が開いた
そして
モトキ達は見てしまう
その中心に
大量の“人間”が埋め込まれているのを。
生きたまま
眠るように
「……なんだよ、これ」
ヒロトの声が震える
リョーカが俯く
「ヴェルトラウムの正体」
静かな声
「“みんなで一つになれば孤独はなくなる”って、本気で信じちゃった人達」
モトキは息を呑む
目を凝らす
その中には
子供もいた
老人もいた
普通の人間達
『孤独は苦痛』
ヴェルトラウムが響く
『だから我々は一つになる』
『もう誰も泣かなくて済む』
「違う」
リョーカが呟く
黒い涙を流しながら
「泣くから、人間なんだよ」
沈黙
その瞬間
ヴェルトラウムの瞳が、
リョーカを見た。
『RX-00』
『お前は失敗作だ』
リョーカは笑う
少しだけ
寂しそうに
「うん」
ハンマーを握り直す
「でもさ」
その背後で
モトキが銃を構える
ヒロトが短剣を回す
三人が並ぶ
昔みたいに
「失敗作にも、守りたいものくらいあるんだよ」