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ヴェルトラウムの瞳が細くなる
『理解不能』
低い声が、
研究施設全体を震わせた。
『なぜ抗う』
『なぜ個であろうとする』
『一つになれば苦しみは消える』
「だから違うって言ってんだろ」
ヒロトが吐き捨てる
短剣を肩に乗せ、血だらけのまま笑った。
「痛えのも、苦しいのも、孤独なのも」
その目が鋭くなる
「全部ひっくるめて人間なんだよ
『非合理』
「合理で生きてねぇんだよ、こっちは」
モトキが前へ出る
銃口を巨大な瞳へ向けた。
「お前らは、”失う痛みを消したかったんだろ」
『肯定』
「でも」
モトキの指が引き金にかかる
「誰かを失うから、人は誰かを大事にできる」
パンッ!!
銃声
ヴェルトラウムの瞳に弾丸 が突き刺さる
当然
傷は浅い
だが
その一発は、宣戦布告だった。
瞬間
研究施設が裂ける
無数の黒い腕が、壁から生えた。
『排除』
「来るぞ!!」
ヒロトが飛び出す
黒腕が迫る
速い
だがヒロトはさらに速い
ザンッ!!
ザザンッ!!
切断
回避
蹴り
肉片が飛び散る
だが
切っても再生する
増殖する
「キリねぇな!!」
モトキが援護する
精密射擊
関節
神経節
再生核
正確に撃ち抜く
それでも
止まらない
『個は脆弱』
『だから統合が必要』
ヴェルトラウムの声が響く
その時
リョーカが前へ出た。
静かに
まるで覚悟を決めたみたいに
「…..ねぇ、ヴェルトラウム」
巨大な瞳が、リョーカを見る
『RX-00』
「ボク、ずっと考えてたんだ」
黒い侵食が広がる
足元から、
黒い花みたいな肉塊が咲き始める。
モトキが息を呑む
また侵食がーー
だが、
リョーカは止まらない。
「みんなが一つになったら、確かに寂しくないのかもね」
『肯定』
「でもさ」
リョーカが笑う
泣きそうな顔で
「”違う誰が”だから、一緒にいる意味があるんじゃないの?」
沈默
その瞬間
ヴェルトラウム全体が、わずかに揺れた。
まるで
迷ったみたいに
『…..理解、不能』
「そっか」
リョーカは目を細める
「じゃあ教えてあげる」
その瞬間
リョーカの胸が光った
黒ではない
淡い、青白い光
モトキが目を見開く
「あれ……」
三年前
最後に見た光と同じだった。
だが今回は違う
暴走じゃない
意思がある
『RX-00、何を一一』
「ヒロトくん!!」
「おう!!」
ヒロトが飛ぶ
白兵達を蹴散らし、
一直線にヴェルトラウム中枢へ
「モトキ!!」
「あぁ!!」
モトキも走る
銃撃
正確な弾丸が、
巨大瞳の周囲を撃ち抜く。
再生阻害
動きが鈍る
そして
リョーカが、
ハンマーを振り上げた。
黒い侵食
青白い光
その両方が
巨大なハンマーへ収束していく。
『停止しろRX-00』
『お前は我々の一部だ』
「違う」
リョーカが笑う
優しく
はっきりと
「ボクは、青リンゴ商会のリョーカだよ」
振り下ろされる
瞬間
世界が真っ白になった。
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気付くと
モトキは、
白い空間に立っていた。
音がない
痛みもない
「…..ここ、は」
『夢と現実の狭間』
誰かの声
振り返る
そこには、
銀髪の”端末”が立っていた。
以前戦った、
ヴェルトラウムの端末
だが
今は敵意がなかった。
「…..お前」
『戦闘意思なし』
銀髪は両手を上げて静かに言う
『RX-00が接続を書き換えた』
モトキの鼓動が速くなる
「リョーカは」
銀髪が目を伏せる
『彼は、自らヴェルトラウム中枢へ潜った』
嫌な予感
胸が冷える
「…..戻ってこれるのか」
沈黙
数秒
やがて銀髪は言った。
『分からない』
その瞬間
モトキの拳が震えた。
まただ
また届かない
また失うのか
その時
遠くから、
聞き慣れた声がした。
『モトキくーん』
振り返る
白い空間の向こう
リョーカが立っていた。
少し笑いながら、手を振っていた。
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