あれから何事もなく次の日の朝を迎えた。
準備をして、あの男の人が寝てる部屋に様子を見に行く。
まだ気持ちよさそうにすやすや寝ていて…いや、寝顔ぶっさ。白目剥いてるよ。
6時に起こすのは可哀想だしやめておく。代わりにメモをテーブルに置いた。
◇◆
「ただいま」
仕事疲れた〜。
「おかえり」
「は?」
いつもならただいまと言っても返事は帰ってこない。壁越しに聞こえてきたおかえりに靴を脱ぐポーズのまま固まった。
昨日の男の人がドアから顔を覗かせる。
「なんでいんの」
ーー
「朝になったら帰るって言いましたよね?いつまでいるんですか」
「泊まる所ないし、」
今日になって急に状況が変わるわけじゃないからしょうがないけどできれば私の家はやめてほしい。
タダで泊めてくれる人なんてそうそういないからな。追い出したらどこで寝るんだろう。
考えてたら罪悪感が湧いてきて出ていけとなかなか口に出せない。
「…少しの間だけですよ。行くあてができたら出ていって」
「いいの?」
男の人が目を丸くした。
「私の生活に合わせてくれるなら。名前は?」
何か事情があるんだろうし、知る必要もないから細かいことは聞かないでおこう。
「じゅり。樹木の樹で」
「樹ね、私は□□」
一人暮らしって寂しいから案外話し相手ができて楽しいかもしれない。
この無一文男をしばらく養うことにした。
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