テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
庵野
ℋ.♡
1
#mryk
とくめい
2,170
kurara
1,577
ヘリオトロープ④
大森side
【週末・原宿駅前】
大森「……」
何故俺はここに居るのか
遡ること、数日前……
「主任、僕とデートしてくださいっ」
この言葉がきっかけで、俺は貴重な休みの日に、その言葉を発した人物と現在待ち合わせをしている。
若井「あっ、主任!!こんにち」
大森「遅いっ」
若井「えっ、あ、すみま……ってまだ待ち合わせの時間より10分前じゃないですか……なのに遅いって…………主任……何分前から居たんですか?」
大森「っ、……う、うるさい、社会人なら10分前行動だろっ」
若井「だから10分前に……」
大森「まあ、そんな事はどうでもいい。それよりも、だ」
若井「え……主任から言い出したのに」
大森「なんで原宿駅なんだよ」
若井「ああ、それは……まあ、目的地に近いし、わかりやすいかなって」
大森「恥ずかしいだろ、俺たちみたいなおじさんが若者の聖地みたいな所なんて」
若井「まあまあ、そんな怒らないでくださいよ主任。目的地はココじゃないんで安心してください……あ、こっちなんで歩きましょう」
大森「……」
一体何を考えてるのかさっぱり分からない。
俺なんかをデートに誘わなくても若井ならひと声かけるだけでデートしてくれる女は沢山いるはずだ。
今日だって初めて見たが、私服もオシャレだ。
ワイドの黒カーゴに、春物のフランネルシャツを羽織っていて、少し腕捲りした手首にはシルバーのバングルがチラリと見えた。
さり気ないオシャレが素直にかっこいいと思った。
それに当たり前だが、会社ではしていないピアスと左薬指に指輪も……
大森「って、指輪?!!」
若井「主任?!」
大森「お前、居たのかよっ」
若井「え、え?何が……ですか?」
大森「指輪だよ、指輪!お前彼女居るのに俺とデートとか……意味わかんないし、ダメだろ」
若井「ちょ、待ってくださいっ、居ない、居ないですから!」
大森「いやいやいや。左薬指に指輪をしていて、彼女が居ないなんてないだろ」
若井は俺をからかいたいのか何なのか知らないが、彼女が居るのなら、その彼女に対して後ろめたい行動なんて俺はとりたくない。
若井「ほんと、ほんとに待って、僕の話聞いてくださいっ!ほんとに彼女居ないんですって。ここに指輪をしてるのは、たまたま何ですっ!」
大森「たまたまなんてあるわけないだろ」
若井「いや、ほんとなんですっ!この指輪を買った時に、どの指にはめようか店員と話してたら、指によって意味があるって話されてっ!その時に薬指の意味が良かったからそれでなんですって!これ本当!!マジなんですって!!信じてくださいよーっ!」
ここまで言うってことは本当のことなんだろうけど……
大森「……ぷ、……そんなに必死かよ……」
若井「いやっ、だって!彼女居るのにデートに誘うクソ野郎みたいに思われたくないじゃないですかっ!」
大森「ブッ……あははっ…………まあ……その言い訳で信じてやるよ」
若井「言い訳じゃないですって!真実なんですっ、し・ん・じ・つ!」
大森「そういう事にしておいてやるよ……ク……ふふ……」
若井「主任笑いすぎですよ!」
大森「あはは、わりぃ…………てか、何処に行くんだよ」
若井「本当に本当ですからね!じゃないと主任をデートに誘いませんって!」
大森「はいはい、わかったから場所言えよ、ここに居るの恥ずかしいんだけど」
若井「着くまで秘密ですっ!あ、そこ右で…………てか主任、私服になると若くなりますねっ」
大森「お前、それ褒めてないだろ」
若井「いやいや褒めてますっ、実は主任の家に泊まった時にも思ってたんですけど、主任髪下ろしてる時可愛いですよね……っ、いったっ、蹴らなくてもいいじゃないですかっ」
大森「男に向かって可愛いとか言うからだ」
俺は普段、仕事の時は前髪を上げている。休みの日までそこまでセットするつもりはなかったから今日は普通にセンター分けにしていた。
若井「いつもは年上に見えるんですけど……今日は年下に見えます」
大森「お前、俺の事何歳だと思ってんだよ」
若井「会社の時は……32.3くらいかと……今は、26.7……くらいですかね」
大森「俺、お前と同い年なんだけど」
若井「え、ええええっ!!!」
大森「うるさ……お前知らなかったのかよ」
若井「だって年齢聞くことないから見た目で判断するしかないじゃないですかっ!てか主任はなんでおれ……僕の知ってるんですか?知ってたなら言ってくださいよ!」
大森「仮にも主任だからな、お前が入ってくる時に履歴書に目は通してる」
若井「あ……それズルいじゃないですかっ!僕が主任の履歴書見れないのにっ」
大森「今知れたからいいだろ。後、今日は『俺』でいいぞ?敬語も要らないし、主任って呼び方もやめてくれ。プライベートでデート、なんだろ?」
若井「っ、……じゃ、じゃあ、ちょっとぎこち、ないかも、しんないけど……頑張ります」
大森「敬語」
若井「が、頑張るっ!あっ、ちなみに主任って普段なんて呼ばれてるんですか?」
呼び名か……基本、友達なんて居ない俺は会社での付き合いばかりで呼び名なんて主任が大半だ。
大森「……同級生には…………元貴…………っておいっ、何急にしゃがんで……」
若井「主任……名前呼びは…………ハードル高いて……」
大森「んなっ、……と、とりあえず立てってっ」
しゃがんだ若井を何とか立たせ、道の端にお追いやった
大森「なんで名前呼んでもないのに既に顔赤くしてんだよ……無理なら苗字で呼べよ」
若井「い、いやっ、出来るなら名前で呼びたいっ!」
大森「……はぁ……好きにしろよ…………ほら、行くぞ」
若井「あっ!主任っ!待ってくださいよっ」
自分で名前呼びたいと言いつつ、また主任と呼び、敬語も抜けてない。
まあ……指摘するのもめんどくさいからそのうち敬語は抜けるだろうと思い突っ込むことをやめて、歩き始めた。
・
・
・
10分程歩けば、人が多くなってきた。
大森「何か……人……多くね?」
若井「もう目的地ですからね」
大森「何があるんだよ、そろそろ言えよ」
若井「実は今日、フェスがあるんですよ」
大森「……フェス?」
若井「そう!世界のフェスティバル!」
若井の説明によると、他国の食べ物や飲み物が自分の好きな物が好きなように買って食べれるらしい。正に日本のお祭りの屋台の様に。
それに、その国の民族衣装や食器、アクセサリー、雑貨、その他様々な物も売っているとの事。
大森「へぇ……知らなかったわ」
若井「どうします?先に見て回ります?それとも混む前に先にご飯食べる?」
時計をチラリと見れば昼には少し早いくらい
大森「……混む前に食べるか」
若井「主任嫌いなもの、好きな物は?」
大森「好きなのはトマトパスタ。嫌いな物は……ナス…………あ、いや、ちが」
若井「ふふ、ナス、か」
大森「いや、最近食べれるようになったんだよ。若井は無いのか?」
若井「大葉!でも俺も最近食べるようになった……てか今日は世界の食べ物だから大葉はないかも」
大森「だな」
フードスペースに行き、俺たちは世界の様々な料理を買い、テーブルに着いた。
タイ、ラオス、イギリス……それぞれの国の名物や家庭料理がテーブルを彩った。
大森「……うまそ」
若井「さっ、主任!冷めないうちに食べよう」
他国の本格的な料理を一度に食べれるのは楽しい上に、どれも美味しい。
ふと若井を見ると、俺を見ながらニコニコとしていた。
大森「なんだよ」
若井「良かった」
大森「んあ?」
若井「主任が何が好きかとか全然知らないから、俺からデートに誘っときながら何したらいいか分かんなくて……SNS探ったり、チャッピーに聞いたりして、結果、ここに辿り着いたんで喜んでもらえて安心しました」
なんでフェスなんだって思っていたけど、若井なりに考えてここに連れてきてくれたのか
大森「俺、基本家から出ないから新鮮」
若井「えっ、もしかして映画とかゆっくりしたやつの方が良かった?!」
大森「いや、こういう事してんの知らなかったし、他国の文化とか歴史だったり……そういうの好きだから…………来てよかった」
若井「そう言ってもらえただけで俺……嬉し……」
大森「っ」
本当に心から嬉しそうに笑う若井に、胸がわさわさっとした
コイツもこんな風に柔らかい顔で笑うんだ……そうさせたのか俺なんだって思うと何だか恥ずかしくなる
大森「……ほ、ほらっ、食べたしっ、つ、次行こうぜ」
若井「…………はいっ」
多分今俺の顔は真っ赤だ。
でも若井はそれをイジる事なく、トレイを持ち、片付けに行った。
何気ない気遣いに脱帽だ。
若井「じゃあ色々見ましょうっ、主任、人が多いからはぐれないようにね」
大森「子供じゃねーわ」
若井「いってっ、すーぐ蹴るぅ!」
若井に軽く蹴りを入れつつ、店が並ぶ方へと向かった。
コメント
5件
いやー!!ちゃんとデート♡ 若井さんが健気(*´艸`*) 駅での待ち合わせとか、王道! ちゃんと調べてフェスをチョイスするなんて……、 初デートキュン過ぎですよぉ!!!(*´﹃`*)
キャーーー!!!待って待って待って!!!この回めっちゃ良かったよおおおお!!!😭💕💕 大森主任のツンデレ具合がたまらんすぎる…「遅いっ!」ってまだ10分前なのに怒るとことか、完全に照れ隠しじゃん!!しかも名前呼びのくだりで若井くんがしゃがみ込むシーン、想像しただけで顔がニヤケるわ…🌸 指輪の誤解も「彼女いるのにデートに誘うクソ野郎」って必死に否定する若井くんに誠実さ感じたし、大森主任が笑っちゃうのもわかる〜!最後の「来てよかった」って本音が出たとこで2人の距離が縮まった感じがエモすぎた…次の話が待ちきれないよ!!⋆♡