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『カチ カチ カチ』
秒針の音が響き渡る。
もうすぐだ。
『ゴーン、ゴーン、』
「…ある、やっぱり……」
毎日、俺は”ゆき”さんと文通をする。
午前零時の時空郵便に乗せて。
その郵便の場所は、俺の教室の机。
「返事、書こ…」
ゆきさんはいつも綺麗な字で、水色の雪の結晶のイラストが描いた便箋に書く。
もちろん、ゆきさんは本当の名前ではない。
勝手に俺がつけただけの名前だ。
毎日変わるばんこに手紙をいれる。
このことについて、手紙が来ることしかしらない。
そもそも、時空郵便とはなんなんだろう。
ただ、孤独な俺がその手紙に救われたことは間違いじゃなかった。
今日の手紙を見た時、俺は驚いた。
『会いませんか.?』
最後の一行。
俺はその人に会いたい。
「…うん、」
一言だけそうつぶやいて、俺は手紙の返事をすることに取り掛かった。
???side
『いいよ。』
その字列が目に入った時、るなは嬉しさのあまりぴょんと飛び跳ねてしまった
手紙のあの人は、いつも優しくて…るなの満たされない寂しい心を満たしてくれる。
大好きだ。
「…(ぎゅ」
るなは、手紙を抱きしめた。
「ね。るなね、今日もいじめられちゃったんだぁ…w 」
「国の子は、姫様なのに水色の髪は変だ〜!って。けどね。」
「あなたのお陰で頑張れたよ。」
「どこで会おっかぁ……」
ur side
「…ねぇ、ゆきさん。今どこにいるんですか。」
手紙に書いたら絶対引かれる言葉。
それをボソッと呟く。
誰にも聞こえない声で。
目に映ったのは昭和、平成…そのくらいの時からなぜかあったと言うギター。
そんなものがその時代に本当にあったのだろうか?
「〜〜♪」
この音を、君にも聞かせたい。
◆◆◆
今日は雪さんと会う日。
俺は少し緊張している。
待ち合わせの約束は、俺の教室の前に午前零時に集まること、だ。
『カチ カチ カチ』
はぁ、と少し上がった息。
まだ雪さんは来ていない。
『ゴーン、ゴーン…』
「…?こない、?」
「わわぁ〜ッッ」
『バシャンッ』
突然、机から水色髪の女の子が飛び出してきた
彼女と俺は共倒れ。
彼女が俺の上になる体制になってしまった
「…ふぁ、ッ!?あ、ご、ごごごごめんなさいッッ」
襲わないでとも言うようにうるうると涙目で見てくる。
何かやましいことでもあるのだろうか、とでも思うくらい…悪く言えばキョドっている。
俺はハッと我に帰る。
水色のさらさらとした透明感溢れる髪、雪の結晶のように真っ白な肌。
人形のような可愛らしさと同時にある儚さ。
水色と白の花の振袖。
なぜ振袖なのかはわからないが、似合っている。
「あのさ。この、手紙の人?」
俺がゆきさんから貰った雪の結晶の便箋を見せると、彼女ぱぁっと顔を明るくした
やっぱり、ゆきさんなのか?
「はい、っ!じゃあ君は…」
「うり。」
俺は彼女の言葉に嬉しくて胸が高鳴る
やっと、会いたかった人に会えたから。
「君は?」
「るな…っ、本名、つるぎです!」
水色の長い髪を少し揺らしてゆきさん…いや、るなさんは笑った
「なんで本名と名前が違うの?」
「え、っと…るな、外国から売られて。それで、つけられた名前がるななんです。」
酷いこと。
だけど、現在ではあまり聞かない話。
昔、剣姫という姫が…姫が?
待て。
「もしかして、なんだけどさ。」
「はい?」
「…これ、何か知ってる?」
知ってるに決まってる、なのに。
俺は携帯を見せた。
「なんですか?それっ₊˚⊹」
少し目を輝かせて、繁々と良い姿勢で携帯を見つめる姿は…異様だ。
今時そんなことはない。
「ねぇ、るなさんってさ。」
「? はい?」
「…剣姫?」
俺の言葉に、るなさんは驚いた顔をする
「それ以外に何か?…え?知らないのですか!?今時の民は、っ…もしかしてるながダメだから…?」
あわあわとして、泣き出しそうになっていた
可愛いが、このままではちゃんと話せない。
「落ち着いて、?…ねぇ。今何年?」
「19××年、」
「…ここ、2026年なんだけど。」
「へ、ッ!?」
素っ頓狂な声に俺は少し困る
どうしたらいいんだろう。
「多分だけど…ここ、時代を超え繋がってるんじゃないかな?」
「…!るな、聞いたことありますよ!
時空郵便は…タイムマシンみたいなもので稀に現れて、それで!……1人の人が100回使うと、2度と使えなく___」
るなさんの必死な声に俺は怖くなる。
「…昨日の手紙、99通目。」
「るな、一昨日の手紙で98通目、」
「多分、これ人も運ぶよね?だからるなさんが来たことによって、99回目になるね。」
俺の言葉にるなさんは悲しそうな顔をする
俺だってもっと喋りたい。
「やだ、ッ!るな、帰らない、ッッ」
「ダメ…今日はここにいてていいけど、さ?帰らなきゃ。」
「るな、うりさんとやっと会えたんだもん!うりさんのおかげで頑張ってこれたんだよ!?嫌だ!!」
るなさんの瞳に涙が少し浮かぶ。
ぎゅ、と俺の服を掴んで離さない。
ポロポロと宝石のような涙が真っ白な肌に伝って行く。
「やだ、よぉ…(ポロポロ」
「…(ギュ」
助けたい。
けれど、無理だ。
「…ね。るなさん…いや。るな。」
「なに、ッ?」
「ばいばい、」
俺の100回目の郵便。
「大好き…、だよ」
「…ッ、るなも、ッるなも大好き、ッッ」
あのまま抱きしめていたらだめだ
だめ。
だめになる。
数日後、一通。
午前零時きっかりに時空郵便にて運ばれてきた
『うりさんへ
お元気ですか?
私は元気です。
好きです。
恥ずかしいですけど笑
いつかまた、会えますか?
会えるのなら会いたいです。』
気づけば、その手紙を涙で濡らしていた
手紙と共に入っていたのは、雪の結晶の形のお守り。
るなを連想させるものだ
「会える、また。きっと、ね。」
これは、孤独な俺と姫が出会った遥か昔の話。
午前零時の時空郵便 完