テラーノベル
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トモエは記憶をたぐりながら、たどたどしい口調で訊いた。
「ヒミコさんが使う刀は、どうしてあんな特殊なんですか? まるで鞘が二重になってるみたいな」
ヒミコがまずナミネという小柄な女性に言った。
「ナミネ、ウチの刀出してくれるか?」
「はいよ、アネキ」
肩までの髪をソバージュにした、まるで中学生かと思える童顔のナミネは、自分の後ろの木の壁をポンと叩いた。壁の四角い一部がくるっと7回転し、隠し扉になっていて、その向こうに小さな物置のような空間があった。
まるで忍者屋敷だ、と思いながらトモエが見ていると、ナミネが日本刀を取り出しヒミコに手渡した。ヒミコは両手で刀を持って膝立ちになり、トモエにそれを見せながら言った。
「あんたも一度見てるやろ。まずこうする」
そう言ってヒミコは刀身を鞘から抜いた。現れたのは白木で出来た、薄い木刀のような物だった。ヒミコが黒い鞘を床に置き、白木の刀身の根本を左手で掴んで柄の方に少し押し込む。
かすかに「カチッ」という音がした。ヒミコが左手を外側に伸ばすと、白木の刀身が外れてその中から鈍い銀色に輝く、幅と厚みが白木の刀身の半分ほどの刃が現れた。ヒミコが説明を始めた。
「見ての通り、普通の日本刀の半分ほどの大きさやろ? 女の力で素早く振り回すには、普通の日本刀の刀身は重過ぎる。これくらいの幅と厚みが、ウチの場合はちょうどええんや。白木の内鞘はカムフラージュでもある。この前みたいに、お巡りさんに調べられて抜かれても、最初に出て来るのはこの白木の刀身やさかい、演劇用の小道具やと言えば、難なくごまかせる。街中でも堂々と担いで歩けるわけや」
トモエは大きく息を吐いた。そこまで考えて特殊な大きさの日本刀を持ち歩くというアイディアに感心した。さらに訊きたい事がたくさんトモエにはあった。
「あの時のヒミコさん、その刀を使っていた時、すごい速さで動き回ってましたよね。あれは剣道の流派とか、そういう物なんですか?」
ヒミコはまた小さく首を横に振り、ウルハに向けて言った。
「それも見た方が早いやろ。ウルハ、例の稽古用の木刀でトモエに見せてやるで」
ウルハがさっきの隠し扉の向こうから、普通の木刀を一本、妙に薄い造りの木刀を日本取り出して、ヒミコと一緒に立ち上がった。ヒミコが解説を始めた。
「ウルハが持っとるんが普通の日本刀、こっちの細いのがウチの刀やと思いなはれ。ウルハは身長175センチあって女とは思えんほど力も強い。真正面から打ちおうたらどないなるか、実験してみせるで」
それからヒミコとウルハは向かい合って立ち、ウルハが普通の木刀でヒミコに斬りかかった。ヒミコはそのまま正面からウルハの木刀を自分の木刀の刃にあたる部分で受け止めた。
斬りかかる角度を大きく変えて、三度二人は木刀を交えた。それからヒミコがトモエの方に近寄り、自分の木刀をトモエの目の前にかざして見せた。その木刀の刃にあたる部分には、明らかなひび割れとへ込みが出来ていた。ヒミコが言った。
「ウチの刀は細くて軽い分もろい。日本刀に限らず、大の男が全力で振り下ろす刃物を正面から受けとめたらこうなる。そこでこうする」
ヒミコはひびが入った木刀を部屋の隅に投げ捨て、もう一本の細くて薄い木刀を手に持った。そしてウルハの木刀とまた打ち合いをした。
今度はヒミコの動きが一変した。ウルハの木刀を受け止めながら、左右に目にも止まらぬ速さで体をひねり、三度目は体を一回転させて打ちかかる木刀を受け止めた。それはまるで激しい動きの舞を舞っているかのような体の動きだった。
ヒミコがまたトモエの前に自分の木刀を見せた。今度は刃にあたる部分が、全く傷ついていなかった。ヒミコが刃と峰をくるりと裏返すと、峰の部分にかすかに打ち合った跡があった。
「相手の刃を受け止める時は、刃やのうて峰で受ける。そうすると刃を潰されんですむ。そのためには、派手に体の向きを変えて踊っとるような動きになる。蔭(おん)の白拍子に伝わる、特殊な剣さばきというわけや」
そのヒミコの説明を聞きながら、トモエは目を丸くしたまま言葉が出て来なかった。そんな曲芸じみた事をヒミコは軽々とやってのける、その事に度肝を抜かれていた。
コメント
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おお、第22話読んだ!ヒミコさんの刀、二重構造になってるのにはマジで驚いたわ。白木のカムフラージュ鞘で警官詐称できるって、街中で刀持ち歩くためのリアルな工夫やな。んで「刃で受けるんじゃなく峰で受ける」って理屈、剣術の深みを感じる。蔭の白拍子の特殊剣さばき、めっちゃ気になるわ。設定の解像度が高くて、今回も痺れた🔥