カレンが乱入すると言ったハプニングはあったけど、私達はようやく目的地である屋久島へ行くことが出来た。最初は玄関口である港へ転移しようと考えていたんだけど、人の出入りが激しい場所に突然転移したら無用なパニックを起こしてしまうかもしれない。
「なんでそう言う配慮をもっと大事なところへ向けられないのかなぁ☆」
「それがティナですから」
「あはは、パパもある程度は慣れたって言ってたよ」
なんだかばっちゃん達がヒソヒソ話してるのが気になる。もしかして何か間違えたのかな?
『そんなことはありません。ティナの行動は常に最善を選んでいます。心配する必要はありません』
うん、アリアが言うなら間違いね。
「またそうやってアリアが甘やかすから~」
『むしろティナは配慮を過剰に行っていると判断できますが』
「ティナちゃんが仲良くしたいと望んでいるからだよ。でも、注意はしてあげないと」
『地球の為政者が困るだけ、ですか。武力制圧を受けるより遥かに好意的な対応であると考えますが』
なんかアリアとばっちゃんが議論を交わしているけど、後回しにすることにした。
フェルの転移で直接縄文杉の近くにやって来たんだけど、やっぱり圧倒されるなぁ。前世でもたまにニュースとかで見たけど、やっぱり直に見ると圧巻だ。それに、自然の中に佇むその姿は幻想的なんだよねぇ。うん、来てよかった。
『不埒な目的による撮影を行おうとしている地球人を確認しました』
「具体的には?」
『マスターフェルとマスターカレンの胸部です』
「うん、ギルティ。やっちゃって」
『畏まりました、制裁を実行します』
写真や動画くらいならちゃんと言ってくれたら余程の事がない限り断らないんだけどなぁ。
前世でも社会問題になっていたし、より発展した今の地球でもそれは変わらないらしい。
アリアの制裁って言葉がちょっと気になるけど、大切な友達を不埒な目的で撮影しようなんてするなら庇うつもりもない。傷付けたりするのは駄目だけどね。
しばらく縄文杉を眺めていると、フェルが飛んでいって縄文杉にそっと触れた。
その瞬間、フェルと縄文杉が光始めたからビックリしたけど、ばっちゃんの言葉が気になる。草木と会話が出来る?
「それ本当?聞いたこと無いんだけど」
私だってアード人だ。リーフ人に知り合いは何人か居るけど、そんな話は聞いたこともない。学校でも相互理解のためにリーフ人の事を学ぶけど、草木と会話が出来るなんて教わらなかったよ。自然をとても大切にする種族ではあるけどさ。
「リーフの古い文献に書かれていたんだよ。ミドリムシ共……今のリーフ人は秘密にしているし、古い文献もあらかた破棄されてる。アーカイブからも消されてるね☆」
「何でばっちゃんが知ってるのさ?」
「そりゃあ、リーフ星系の戦いに従軍したからだよ?こう見えて艦隊司令の一人だったんだからね?☆」
「えっ?本当に?」
「ティリスちゃんは嘘を吐かないよ☆」
ばっちゃんみたいな、見た目幼女が勇ましく指示を飛ばす。
うーん、ファンタジー。というかシュールだ。
「草木とお話出来るなんて、本当のフェアリーみたいじゃない!素敵だわ!」
「どうどう、カレン落ち着いて」
目をキラキラさせてるカレンを抑えながら、ちょっと考えてみる。極一部のリーフ人にしか無い力、今のリーフ人達はそれを隠蔽してる。
そしてフェルに対する過剰なまでの対応。いくら風習と言っても異常だ。フェルはリーフ人の一族から追放されてしまったんだから。
「ばっちゃん、それ私に話しても良かったの?」
カレンは良く分かってないみたいだ。まあ、地球には関係無い話だからね。
「フェルちゃんを命がけで助けたティナちゃんには知る権利がある。それに、ミドリムシ達の件もある。フェルちゃんへの対応もそうだし、アイツ等は何かとてつもなく重要なことを必死に隠してる。それが一番気に入らない。
リーフ星系の戦いでは、大勢の同胞がミドリムシのために命を散らした。それだけの犠牲を払いながらも私達はリーフ人を助けて専用の居住区まで用意した。なのにアイツ等は表面上は協力的だけど、排他的だし裏でこそこそやってる」
ばっちゃんの身体からマナが溢れて圧迫感を周囲に与えている。カレンも青ざめてるし、それは私も同じだ。ばっちゃんが怒ってる。それと、気のせいかな。幼女ではない大人の姿のばっちゃんが見えたような気がする。
「私の上司、先輩、同僚、友人、後輩、部下達はあんな奴らを守るために死んだ……物凄く腹が立つっ!!!!
……だから、頑張ってねティナちゃん。アイツ等をギャフンと言わせて、フェルちゃんを幸せにしてあげよう☆」
途中で力を抜いたのか、いつものばっちゃんに戻った。さっきのは一体……。
「もう、ビックリさせないでよ。カレン、大丈夫?」
「大丈夫……ティリスがそのミドリムシ?とか言う人達に凄く怒っているのは伝わったから」
「ごめんねー、カレンちゃん。辛くなかった?」
「ちょっと息苦しかったけど大丈夫!ノープロブレムだよ!」
「ふぉおおっ!?」
カレンは元気だなぁ。もうばっちゃんを抱きしめてる。シリアスな雰囲気なんかこの場には似合わないし、助けられたかな。
そう考えていると後ろから抱きしめられた。これは、フェル?
「おかえり、フェル。大丈夫だった?」
回されたフェルの手に触れながら聞いてみる。怪我とかはなさそうだ。
「はい、急にごめんなさい。どうしても、お話をしてみたくて」
「そっか……どうだった?」
「……まるでティナみたいに暖かくて優しい方でした」
ちょっと嬉しそうなフェルの言葉。誰を指しているのかは言うまでもない。
……そっと縄文杉を見てみると、その老木は優しげにフェルを見つめている。そんな気がした。不思議なこと、疑問に思ったこともあったけど、ここに来てよかった。
「君、済まないが輸血パックをくれないか?美少女達の桃源郷を目にしたら、少し命の水が流れてしまってね」
鼻血を洪水みたいに噴出しながら輸血しているジャッキー=ニシムラ(魔法少女)さんのことは全力で無視することにした。なにしてんのさ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!