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シャビル王子たちは最後の森も抜けて、王都が見えるところまで帰ってきた。
王都の王城まで入れば、ヘルサイズもおいそれとは手出しは出来ないらしい。
また、第一王子が直接足の付くのを嫌がっているからでもあるとか。
道中、盗賊にでも襲われた風に装いたかったのだろう。
シャビル:「ここまで帰ってこれて、リオとリンドウには感謝しかないよ。
王都に着いたら、二人ともとりあえず王城に滞在してほしいんだけど、いいよね?」
リオ:「はい。ありがとうございます。」
リンドウ:「ふふふ。リオがいいならいいわよ。」
リオはちょっと興奮していた。
王都も初めてなら、王城っていうものも興味津々であった。
◇◇◇◇◇
サザンオール王国内ヘルサイズ拠点にて。
ヘルサイズは本部が北部に存在していて、最南端のサザンオール王国にはまだ支部が設置されていないため、勢力拡大の準備中であり、幹部も一人だけ派遣されている状態であった。
幹部の名は通称『飛剣のアズワド』。
目下売り出し中の新鋭幹部であった。
彼は成り上がり志向が高く、気分屋のため、ヘルサイズ内でも敵の多い人物であったが、戦闘力は高い。懸賞金は1億ペロ。
ハンターズもヘルサイズと同様に幹部以上には手配書を発行している。
幹部の懸賞金最低金額が1億ペロ。
紅蓮頭クラス以下は人物が特定できないため、手配書は発行していないが、紅蓮頭は1千万ペロ、蒼穹頭は百万ペロ、翠帳頭には十万ペロが報奨金として支払われる。黒兵には報奨金はない。
アズワド:「何だと!」
アズワドのにこやかな顔が一瞬のうちに怒りの形相に変化した。
今回は成功報告しか待っていない状況で、まさかの失敗報告に来た紅蓮頭の一人を思いっきり蹴飛ばした。
アズワド:「依頼失敗に加えて、紅蓮頭の速攻がやられただと!どうなってんだよ!」
蹴飛ばされた紅蓮頭クラスが口から血を出しながら起き上がり、報告を続けた。
紅蓮頭「報告によると、速攻の奴が例の闇賞金首に返り討ちにあったとのことです。それを見て黒兵部隊は退散をしたとのことです。」
アズワド:「だからよ、油断するなっつったのによー。
自分でやるって言っといて1千万のEランクにやられるってどんだけだよ。使えねえなー。
で、第二王子は今どこだ。」
紅蓮頭「すでに王都に入った模様です。」
アズワド:「ったくよー。
まあ、例の女はお前がもうちょい素性を調べてこい。
依頼の件は俺が第一王子と話してくるわ。
こうなったら王都で事を起こすんしかねえわなぁ。
このことは本部には連絡すんなよ。
成功してから俺が報告するからよ。」
紅蓮頭「はい、承知しました。」
アズワド:「くそめんどくさいことになったよなぁ。」
アズワドは次の手を計画するために、動き出した。この件は、紅蓮頭の速攻が瞬殺されたことも伝えておらず、ヘルサイズ本部にも報告が上がらなかったことによって、リンドウの闇懸賞金も上がらず、過小評価されたままとなり、本部からの応援はなかった。
この中に例の謎の少年カランマもいた。
カランマは偽名であり、本当の名前はレキ。
この少年もリオと同様に数奇な運命によって特殊な固有スキルの持ち主であった。
リオの1つ上の14歳にして成長スピードが著しく、すでに翠帳頭になっている。
こいつらあの女を舐めすぎだ。
せっかくいろいろ情報を与えてやったのに、上が馬鹿だとどうしようもないな。
レキは呆れた顔で部屋を出て行った。
◇◇◇◇◇
王都に到着したシャビル王子御一行様は、そのまま、王城に帰還していた。
シャビル王子は、休むことなく国王への報告に行くとのこと。リオとリンドウにも同席してほしいとのお願いをされた。
リンドウ:「リオ、どうする?」
リオ:「はい、同席します!」
シャビル:「そうか。ありがとう。
では、行こう。」
リオは、ぜひ国王に会いたいと思ったらしく、ちょっと変わった性格をしている。
国王の前では帯剣は許されていないとのことで、リオとリンドウは持ってる剣を収納した。
これだと帯剣しているのと同じだが……。
シャビル:「陛下。ただいま戻りました。」
国王:「おー。シャビル。ご苦労であった。
伯爵領の様子はどうであった?」
シャビル:「はい、1週間の滞在にて調査、聴取を行いましたが、やはりヘルサイズの関与があるようです。メノール伯爵自身は今まで気づいていない様子でした。そこに関しては嘘はない様です。
今回の調査の最中、何名かの主要な職員が行方不明になった様でそれらの者の関与が疑われます。
これで浄化されればいいのですが、まだ残っている可能性はあります。」
国王:「そうか。アルビルにも伝えておこう。
あいつも呼んだのだが、どこに行ったのか。
もう少し落ち着いて欲しいものだよ。
ところで横におる者たちは誰だ?」
シャビル:「はい、実は今回の伯爵領への道中、2度ほど暗殺集団に襲われまして、その際に助けていただいた冒険者です。
彼らがいなければ、命を落としておりました。
少年がリオ、女性がリンドウと申します。」
国王:「何?暗殺にあったのか?
何が目的なんだ。第二王子のシャビルを暗殺する理由が見当もつかんが……。
近衛兵団でも危なかったのか?」
シャビル:「はい、1回目の襲撃では、ゼルダン以外は防戦一方の状態でした。リンドウがいなければ、命を落としていたかもしれません。
2回目の襲撃に関しては、紅蓮頭がいましたので、ゼルダンでも歯が立たなかったかと。」
国王:「何?紅蓮頭が!只事ではないな。
そうか。では、第三近衛兵団ももう少し強化する必要があるな。
ゼルダン!人選は任せる。国軍から選抜してお前の兵団に組み込め。
わしからオウキ大将軍には伝えておく。」
ゼルダン:「は。陛下。ありがとうございます。
承知いたしました。」
国王:「まあ、とにかく無事で良かった。
リンドウはそんなに強いのか?」
シャビル:「はい、リンドウと紅蓮頭との力の差は歴然でした。」
国王:「ほう。それはすごいな。」
シャビル:「あと、リオはまだ戦闘に関しては発展途上ですが、2属性持ちです。
また、彼は特殊なスキルの持ち主で、道中いろいろ世話になりました。」
国王:「ほう。そうか。それは素晴らしい。
シャビルがそんなに褒めるのは珍しいな。
では、わしから褒美を与えんといかんのう。」
シャビル:「はい、そうしていただけるとありがたいです。
私もリオたちには、ここに長く滞在して欲しいと思っています。」
国王:「そうか。そんなに気に入ったか。
よし。リンドウとリオは褒美は何を望む。
地位か名誉か。言ってみよ。」
リンドウ:「王様。地位も名誉も役に立たないから要らないわ。もらえるなら、お金をいただけるかしら。私たち、お金が趣味なのよ。」
国王:「はーはっはっは。これはいいな。
肝が据わっとる。金で良いならそうしよう。
あとは、これからもシャビルの助けになってもらえると助かるのう。」
リンドウ:「そうね。当分はここでお世話になる予定だから、構わないわ。」
国王:「そうか。それは良かったのう。シャビル。」
シャビル:「はい、ありがとうございます。」
国王:「では、褒美の件は追って伝える故な。
よろしく頼むぞ。
シャビルは、このあとサンドラ大臣と話して、今後のことを決めてくれ。」
シャビル:「はい、陛下。承知いたしました。」
国王との謁見が無事終わった。
自分で行くって言ったのに、緊張して何も喋れなかったな。
リンドウはやっぱりすごいや。
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