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地獄の春合宿は、毎年開催地が各県でローテンションとなっており、今年は、群馬県の標高の高く、温泉地として有名なで草津で行われることになっていた。
この合宿は、総当たり戦で各チームと2回ずつ試合をすることになっており、合宿と銘打っているものの、各チームも本気で優勝で目指してくるものでもあった。
5日間で約18試合が行われるため、当然、各チームの通常時では控えになっているメンバーでも何回も試合に出られるチャンスがあり、貴也や森田もチャンスがあった。
第1試合から第4試合まで、貴也や森田には出場のチャンスはなく、試合結果はこのような形だった。
①前橋育榮高校(群馬県)VS 鹿志摩高校(茨城県) 3-1で勝利
②前橋育榮高校(群馬県)VS 帝東高校(東京都) 1-0で勝利
③前橋育榮高校(群馬県)VS 正平高校(埼玉県) 0-0で引き分け
④前橋育榮高校(群馬県)VS 浦和レッズユース(埼玉県) 2-2で引き分け
そして、第5試合は、なんとU-18プレミアリーグEASTで優勝を飾った、最強軍団川崎フロンターレユースとの試合だった。
試合前のアップの練習から、貴也や森田は止めて蹴るに目が釘付けになった。
自分たちが練習でやっていたクオリティーがまるでお遊びと思えるレベルで、フロンターレのユース選手の止めて蹴るは、早く強く正確なものだった。
貴也や森田は、この練習や第5試合の試合を見て、自分たちの当たり前の基準をもっと高めていく必要性をひしひしと感じ、出場機会はなかったものの、2人は非常に勉強になっている感覚があった。
貴也「なあ、森田、確かにフロンターレユースは凄いけど、俺らも負けてないところはあるし、俺たちもこの合宿でも、あいつっらに勝ちたいな」
森田「そうだね、フロンターレだけじゃなくて、他の高校とかとの試合や練習も真剣に見て、自分たちに足りないこととか勉強して、少しでも色々と吸収していこう」
そして、第8の桐院高校(神奈川県)の試合で、ついに後半から貴也と森田は試合に初出場することになった。
桐院高校は、飛び級でU20日本代表の正ゴールキーパーも務める、黒岩を擁するディフェンスの堅いさが特徴で、前半もチャンスはあったものの、キーパー黒岩に完全にシャットアウトされていた。
貴也は黒岩のとてつもないオーラを感じつつ、絶対ゴールを奪ってやろうと燃えていた。
後半戦がついにキックオフとなり、貴也は前線から積極的にスプリントしつつチェイシングしていった。
同時に、貴也は、天才青山に対して、パスの要求もしていた。
しかし、まだまだ、貴也は動き出しとポジショニングが下手なのと、青山からの信頼がなかったため、パスは全く出てくる気配がなかった。
パスが出てこないことから、貴也は少しイライラしていたものの、諦めずチェイシングしていたとき、相手のディフェンダーのミスを見逃さず、貴也はボールを奪取することに成功する。
その瞬間、スペースめがけて、ボールを蹴り出し、その圧倒的なスピードでディフェンダーを置き去りにし、キーパーと1対1となった。
貴也は思いっきり、ゴール右隅に蹴り込んだ。
貴也は、ボールの軌道から、ほぼほぼゴールを確信したが、黒岩の手が伸びてきて、指先でボールを弾いた。
黒岩は貴也を見て、俺からゴールを奪えるものなら、奪ってみろと言ってるかのように不敵に笑みを浮かべた。
貴也はショック以上に、メラメラと闘争心を燃やしていた。
周りは黒岩の凄さもだが、貴也の圧倒的なスピードに驚きを隠せず、青山もその1人だった。
青山は貴也に近づいてきて、ぼそっと一言を言った。
青山「君、技術は本当にないけど、スピードは本当に凄いね。そのスピード活かして、裏抜けの動きをたくさんしてみてくれない?」
貴也「裏抜けの動き?わかった!そしたら、ちゃんとパスくれよな!」
貴也は青山の言う通り、その後、オフザボールの動きで裏抜けの機会を伺っていた。
ディフェンダーは、貴也のスピードに全力の警戒をしており、ずっと1人がマンマークを続けていた。
そして、青山が前を向いてボールを持った時、貴也は裏抜けの動きをし、それにつられてディフェンダーも動いた結果、青山にわずかながらのスペースが生まれた。
そして、青山はそのスペースを見逃さず、すかさずミドルシュートを放った。
キーパーの黒岩も貴也に意識が向いていたのもあり、青山のシュートは意外なもので、わずかに反応が遅れてしまった。
その結果、青山の正確なシュートは、美しい軌道でゴールに吸い込まれた。
貴也は、最初の紅白戦のことを思い出し、自分が囮になったことを理解した。
そして、試合終了のホイッスルが鳴った。