テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「どーする? シン」
「後はこやつらを始末すればいいのか?」
泥土帯に降り立った私たちは、辺り一帯を
確認する。
アジアンチックな妻と、ヨーロピアン風の
顔立ちの妻―――
二人に指摘されて見渡す先は、
およそ数十匹のフォレスト・フロッガーの
群れと……
それを指揮していたであろう、人間のように
二足歩行で立っていたボスと見られる色がやや
濃い個体。
それらが私の『無効化』で、動けなくなっている
姿であった。
「一匹一匹トドメを刺していくのも手間だし、
かと言ってアルテリーゼに焼き払ってもらう
のも何だかなあ」
「生きたまま燃やすというのはちょっと―――」
「緊急事態、というわけでも無いしのう」
私は同行していたライシェ国の調査隊の方々に
振り向くと、
「フォレスト・フロッガーって、どれくらい
脅威ですか?」
私の問いに、隊長であろう男性が、
「集団で襲われると厄介ですが、商人でも
護衛さえいれば別に問題なく守る事が
出来る程度です。
再度ここを調査する時は、おそらく軍も護衛に
同行すると思いますので……
まあこのまま放置しても、いいといえば
いいのではないかと」
消極的にだが賛成の意を示し、
「では無力化はしましたし、いったん
王都へ戻りましょう。
ただ、二足歩行していた個体は持ち帰る
事にします」
「?? それはどうして」
「ああ、こういうものに非常に興味がある
知人がおりますので―――」
そう答える私の後に、
「パックさんご夫婦かー」
「あやつらか。
まあ確かに、土産に持って帰れば
喜びそうじゃのう」
そう続けるメルとアルテリーゼの言葉に
私は苦笑し……
それから『乗客箱』に全員が乗り、離陸直前に
一応フォレスト・フロッガーにかけた無効化は
元に戻しておいて、
取り敢えず、一度ライシェ国の王都まで
戻る事となった。
「……報告書は読んだ。
だが今一度、お前たちの口から説明せよ。
そして自分の目で見て来た事実をな……!」
「「「ハハ……ッ!!」」」
大ライラック国、首都・マルサル―――
いかにも軍服、という衣装に身を包んだ面々が、
部下らしき集団を前に威圧的に語る。
「自爆用の魔導具の不具合については、
こちらでも確認した。
技術者が頭を痛めているようだ」
「また数々の検査の結果……
お前たちが虚偽の報告をしている事や、
幻覚や対外的に精神的魔法で操られている
可能性も否定されている。
その上で、お前たちが見聞きしてきた事の
報告を聞きたい」
部下たちはかつて、ウィンベル王国に潜入した
スパイの一団であり、
シンによって魔導具を無効化され、捕虜となった
ところを、ラーシュ・ウィンベル陛下が直々に
調査許可を出し―――
その後、帰国の途についていたのである。
そんな彼らに対し、尋問ともいえる報告会が
スタートした。
「……これが、我々の知り得る全てで
ございます」
最後の一人の報告が終わると、聞いていた側の
メンバーは顔を見合わせ、
「ご苦労だった。下がるがよい」
その言葉に、今度は諜報員たちが顔を
見合わせる。
「処罰は覚悟出来ております」
隊長格の男が自ら責を問うが、
「確かに捕らえられはしたが、こうして情報を
持ち帰って来た。
さらに国王直々に許可を出したとあれば、
こちらも度量を示さねば舐められる。
今回の功罪は不問としよう」
その答えに彼らはそろって頭を下げ―――
一同は退室していった。
「……さて、どう見るか」
残った面々の中で最も身分が高そうな男が、
周囲を見渡しながら話す。
「しかし、多種族混合で平和的に協力関係を
築けているとは―――」
「頭から否定は出来まい。
あの合同軍事演習で、亜人や人外と連携して
いたのは事実だ」
ワイバーンを始めとして、魔狼や人魚族、
ラミア族、ロック・タートルなどの混合で、
軍事演習が行われた事は各国の使者が確認
している。
「そうなると……
さらに奴隷制度改革まで行っている
辺境連合と、我が大ライラック国は
相容れないであろうな」
どこからか、ため息ともつかない大きく息を吐く
音が聞こえる。
「どうするか?
今の大ライラック国は、モンステラ聖皇国と
組んで例の計画に加担している。
わずかな方針転換すら難しいぞ」
「人間以外の種族を隷属化しての―――か。
そもそも、あれとて聖皇国の総意では
あるまい。
あのレオゾ枢機卿とやらの独断とも
聞いておる」
「だからこそ、だ。
ここで例の計画から抜ける、もしくは発覚した
場合……
モンステラ聖皇国すら敵に回るだろう」
重苦しい雰囲気で場が満たされる中、一人が
片手を挙げ、
「ですがそれは、今までの情報が全て正しいと
仮定した上でですよね?」
一際若く、また身分がそれほど高くなさそうな
若者の発言に、周囲の視線が集まる。
「今までの話を聞いておったのか?
彼らは―――」
「はい。精神魔法を使われた形跡ナシ。
幻覚を見たと言う事でもない……
でしたね?
それは事実なのでしょう。
しかし、他の情報と照らし合わせていけば、
見えてくるものがあります」
そこで彼は数枚の書類を取り出す。
「それは何だ?」
「クアートル大陸、特にランドルフ帝国での
諜報記録です。
実は会議の間ずっと、彼らの調査報告書と
照合しておりました。
すると面白い事がわかりましてね」
そう言いながら彼は一枚の書類を取り出すと、
「『万能冒険者』―――
シンと呼ばれる男。
あの合同軍事演習の特別顧問でもあった
人物です。
また彼には、使節団の工作の1つであった、
ライオネル・ウィンベル様の説得を妨害されて
おります」
(■216話
はじめての かんきん(たいしかん)参照)
その青年は書面を目で追っていき、
「詳しい話は今回の件には関わりないので
省きますが……
なんでも魔法遮断を破られたとかで。
で、この人物―――
合同軍事演習の取り決めや調整のため、
ずっとランドルフ帝国に滞在していたらしいん
ですよ」
「もったいぶらずに言え。
それで何があったのだ?」
老齢のメンバーに威圧的に言われ、
彼は一息つくと、
「彼はずっとランドルフ帝国に滞在していた、
とありますが……
今回帰って来た彼らの話では、どうもその
期間中に、本国であるウィンベル王国で
知り合いの貴族の結婚式に出ているみたい
なんですよね」
(■209話 はじめての ぎょじょう参照)
「その期間だけ、辺境大陸に戻ったのでは
ないか?」
すぐさま反論されるが、
「いいえ。帰還及び再び入国してきた記録は
ありませんでした。
となると、同じ人物が2人―――
海を挟んで両大陸にいたという事になります。
これっておかしいですよね?」
その言葉に、彼以外の面々は顔を見合わせる。
「欺瞞情報……か」
「今回あちらの大陸に行った諜報部隊も、
決して騙されたわけでは無いと思いますよ。
見て来た事も事実なのでしょう。
ただ―――
考えてみれば行かされた公都『ヤマト』は、
監視付きでの指定先。
全ての国でそうなっているかどうかなんて、
同時に調べなければわかりませんからね」
今度はザワザワと場がざわつき始める。
「こちらの大陸とあちらの大陸……
双方の同時期を調べたらボロが出たと
いうわけか」
「まあそれでも、決して侮ってはならない
戦力とは思います。
慢心するのは良くありませんが、
無闇にあせる必要もないかと」
実際、シンは『ゲート』を使って移動していた
だけなのだが、
一瞬で別大陸に行く事が出来る手段を想像すら
出来ない彼らは、とある結論にたどり着く。
そして自身で出した答えに疑問を持つ事はなく、
「決して過小評価は出来ぬが―――
全てを鵜呑みに出来ない事がわかった
だけでも、良しとするべきであろう。
ランドルフ帝国および辺境大陸連合の
戦力は、帝国を軸に考えた方がよかろう」
「あちらの戦力は、報告からある程度差し引いて
計算するべきだな」
「よし……!
さっそくこの事を、軍王ガスパード様に
具申せねば」
こうして間違った認識の元、大ライラック国の
戦略は立てられていく事になるのだが―――
それはシンたちの知るところでは無かった。
「これは……」
「う~ん……?」
数日後、公都『ヤマト』のパック夫妻の
屋敷兼研究施設兼病院―――
そこでシルバーの長髪を持つ二人、
パックさん・シャンタルさんが、私たちの
お土産を前にうなっていた。
結局あの後、アイゼン王国にも出向いて
未開拓地域の調査を行って来たのだが、
そちらはこれと言って何も起こらず、
新生『アノーミア』連邦に行く前に一度、
公都に戻り……
冒険者ギルド支部に一通り報告した後、
例の二足歩行していたフォレスト・フロッガーを
彼らに提供しに行ったのである。
(メルとアルテリーゼは買い物へ、ラッチは
ガッコウへ向かった)
「そんなに妙な個体でしたか?」
私が問うと、夫婦は互いに顔を見合わせ、
「魔力の質が違うというか」
「でも見た事があるような無いような……
何だったかしら、これ」
初見ではないが、どういうものか思い出せない
ようだ。
「何にせよ、非常に興味深い研究対象です」
「あっ、『無効化』は解いて頂けますか?
わたくしたちなら大丈夫ですので―――」
そして夫婦の指示通りに私が『無効化』を
解こうとしたその時、
「あれ? シンさん?
でもここから感じたはずなの」
「おかしいなあ。
ボクたちと同じ、精霊の気配をこちらで
感じたんですけど」
透き通るようなミドルショートの白い髪をした、
十二・三才くらいの少女と、
グリーンのサラサラした髪の隙間から、
濃いエメラルドのような瞳をのぞかせる、
中性的な十才くらいの少年……
氷の精霊様と土精霊様が
入って来た。
「精霊って……
風精霊様はここには
いないけど」
私がそう二人に返すと、
「あっ! そ、そうだ! 思い出した!!」
「精霊の魔力ですよコレ!
パック君!!」
「へ?」
予想外の言葉に、私は思わず間の抜けた
声を出し、
「あっ、この子なの!」
「ウン、間違いないです」
二人の精霊もまた、フォレスト・フロッガーを
指差しながら言った。
「精霊になる一歩手前?」
氷精霊様、土精霊様からの説明に私は思わず
聞き返す。
「そうなの!」
「二足歩行し、ボスのように振る舞っていたと
聞きましたけど―――
おそらく、守護する地をまとめていたのだと
思われます」
応接室に場所を移していた私たちは、改めて
事情を聞いていた。
ソファの一角には例のフォレスト・フロッガーを
挟んで、氷精霊様と土精霊様が座り、
その対面にはなぜか私が、
そしてもう一角に、パック夫妻が隣り合って
腰掛けていた。
「直前という事だけど、後どれくらいで
精霊になるかわかるかな?」
パックさんの質問に、二人はそろって首を
左右に振り、
「かなり近いとは思うのー!」
「いつなってもおかしくはないと思いますが、
ボクたちの感覚ですから……
正直、明日でも1年後でも不思議では
ありません」
もう何百年も生きている精霊基準だからなあ。
一日でも一年でも、大差は無いんだろう。
「この子は、どんな精霊になるんですか?」
次にシャンタルさんが問うと、
「どーだろ? カエルだから雨?」
「え、ええと―――
湿地帯にいたというお話でしたよね?
それなら泥の精霊、という事になるんじゃ
ないでしょうか。
もしくは沼? の精霊とか」
精霊二人の答えに私たちはうなずく。
「なるほど。
湿地帯にいたのなら確かに……
んっ?」
私はある事に気付いて慌てて、
「?? どうしました、シンさん?」
「あ、いえっ!
ていうか、その子を湿地帯から連れて来て
しまっているワケですが」
不安になって精霊二人の方を向くと、
「あー、このまま精霊になれるかどうか
不安って事なの?」
「それは大丈夫だと思います。
ボクたちも実感しておりますが、何ていうか
ここは、生き物や自然がとても充実して
生きている土地です。
もはや第二の故郷と言っていいくらいに―――
むしろここなら、精霊化が加速するでしょう」
それを聞いて少しホッとする。
「では、パックさん、シャンタルさん。
後はお願い出来ますか?」
「もちろん!」
「精霊化をこの目で見られるなんて、
ドラゴンとしても貴重な体験です!」
そこで私はフォレスト・フロッガーの
『無効化』を解除し……
いったん家に帰る事にした。
「へー、あのフォレスト・フロッガー、
精霊になる直前だったんだ」
「これまた、面白いものよのう」
屋敷に戻った私は夕食時、家族にその事を
共有する。
「公都には風精霊様もいるんだっけー?
じゃあその子で4人目?」
「ラミア族の故郷の湖にも、水精霊様が
いるからな―――
こうして見ると精霊様の知り合いも結構
多くなったなあ」
中学生くらいのショートの黒髪の少女、
ラッチの質問に答え、我ながら人外の人脈の
多さに呆れる。
そういえばランドルフ帝国に行った時も、
成り行きで森の精霊様に関わった事も
あったし……
(■197話 はじめての もす
■201話 はじめての きせき参照)
「ほんでその子は?」
「当分、パック夫妻の家で面倒を見てくれる
らしいから」
「まあ、あそこなら多少の事はあっても
大丈夫であろう」
メルとアルテリーゼ、二人の妻と会話を
交えながら食事を進め、
「その子も精霊になったらどうするのー?」
「どうするの? って言われてもなぁ……
まあ故郷に戻りたいというのなら帰して
あげようと思うし、
公都に住みたいというのであれば別に」
そんな事を話しながら、夜は更けていった。
「シンー、今日は何か予定あるー?」
「例の未開拓地域の安全確認―――
その共同依頼がまだ途中だからなあ。
次は新生『アノーミア』連邦だと思うけど、
あそこ連邦国家だから、依頼したい地域が
いくつかあるって話なんだよね。
その選定が終われば話が来ると思うけど」
翌日の朝、みんなで朝食を取りながら今日の
予定について語る。
「ラッチは何かあるか?」
「『ガッコウ』の後、児童預かり所へ寄っていく
つもりー。
あ! 晩御飯はミックスフライがいいかなー」
この後、ラッチを『ガッコウ』へ送り出した後、
親組はこれといって予定もなく、どうしようかと
思っていたところ、
『ズンッ!!』
と、鈍い音と共に地響きのような揺れが来て、
「!」
「何ぞ!?」
状況を確認するため、まずメルとアルテリーゼが
表へ走り出す。
「おとーさん!」
「ああ、私も行く」
次いで私とラッチが玄関を出たところ、
「何か小高い山のようなものが見えるけど」
「あっちは……
まさか、シャンタルのところか!?」
二人の妻の言う通り、あっちはパック夫妻の
屋敷兼研究施設兼病院の方向―――
「メル! アルテリーゼ!!」
「りょー!」
「わかっておる!」
私が呼ぶと、メルは私を、そしてアルテリーゼは
ラッチを抱えるようにして走り出した。
「え゛」
「うわー、おっきいカエルさん!」
現場に到着した私たちが見たものは……
山のように大きなカエルの怪物。
それがパック夫妻の家に覆いかぶさるように
出現していた。
「何だこりゃー!!」
「このような魔物、見た事も無いぞ」
全長およそ二十メートルはあるだろうか。
建物を押しつぶすようにその場に留まって
いるが、
どこかきょろきょろと、カエル自身も困惑
しているようで―――
「シンさん!」
「あ、パックさん。
これはいったい?」
ようやく家主と出会えた事で、情報収集を
試みる。
「それが……
多分あの子、昨日もらったフォレスト・
フロッガーだと思われます」
続けて出たシャンタルさんの言葉に、
私たちは目を丸くする。
「精霊になる一歩手前って言ってた?」
「何じゃ、沼の精霊とやらはこんな形を
しておるのか?」
するとそこへ幼い男女の外見をした、
氷精霊様、土精霊様も合流し、
「あの子に違いないけど、アレ何なの?」
「こんな巨大になるなんて……!」
『当事者』がそろったところで―――
今後の事を話し合う事となった。
「精霊となる『力』が多過ぎる?」
その後、精霊様たちを交えて話し合ったところ、
そんな意見が二人から出て来て、
「そーなの。
ここ、わらわたちに取って、すごーく
居心地がいい場所なの」
「環境と言いますか……
精霊化するのを後押しする条件などが、
いろいろと整っているのだと思われます。
ボク自身―――
公都にいるだけで力が満たされるのを
実感しておりますし」
それを聞いてパックさんとシャンタルさんは
メモを取りながら、
「なるほどなるほど。
なかなか興味深い」
「精霊化を促進する環境があるなんて……!
これは大発見ですわ、パック君!」
自分の屋敷がつぶれかけているのに、目の前の
事象の記録が最優先なのか。
まあ建物からは一応全員、脱出済みらしいから
それはいいんだけど。
研究バカの二人はこの際置いておくとして、
この状況は何とかしないと―――
「どうでもいいが、このままじゃマズい
だろうよ。
あんたらの家は公都でも貴重な病院なんだぜ」
騒ぎを聞きつけてやってきた、アラフィフの
筋肉質のギルド長も、超巨大カエルを指差して
指摘する。
「ねーねー2人とも。
あの子、まだ精霊になっているワケじゃ
ないの?」
ラッチの質問に氷精霊様と土精霊様が
振り向き、
「そうなの。
このままいけば大丈夫だと思うの」
「でも放置するわけにもいきませんよね……」
そこでジャンさんが私の方を向いて、
「おい、シン。
何とか出来ねぇか?」
「あのフォレスト・フロッガーがただの魔物なら
いいんですけど―――
下手に私が力を使うと、精霊化が失敗して
しまう可能性も……」
私の答えに、ギルド長が両腕を組んで考え込む。
「う~ん……
あの巨大化を何とかしつつ、精霊化を
ジャマしないように、か」
「厄介じゃのう」
メルとアルテリーゼも一緒に悩み、
「あのさあのさ、精霊化するのって
魔力じゃないの?」
ラッチが疑問を口にすると、
「精霊寄りの魔力、といったところでしょうか」
「こちらのお2人―――
氷精霊様と土精霊様の持っている魔力に近い、
という事ですね」
そこで改めてパック夫妻が、研究者らしい
答えを返してくる。
「それなら何とかなる……かな?」
「何か考えついたのか、シン?」
ギルド長に聞き返され、私はうなずき、
「まあダメ元で……
出来なければ無効化を解除すればいいだけだと
思いますから」
そこで私は野次馬をある程度退かせてもらうよう
頼み、
超巨大フォレスト・フロッガーの元へ向かう事に
なった。
「動かないですね」
一応、妻二人とラッチ―――
それと精霊様二人も同行し、
「もしかしたら、動けないのかも知れないなの」
「ボクたちと比べてもすごい魔力量ですからね。
それで動くに動けないでいるとか」
氷精霊様と土精霊様の説明に、私たちは顔を
見合わせる。
許容量以上の魔力を得て、それで動けなくなって
いるという事か。
心無しか、フォレスト・フロッガーの表情も
どこか苦しく……
「じゃあ、一応『無効化』してみる。
メルとアルテリーゼ、ラッチは何かあったら
対応をお願い」
「りょー」
「わかったぞ」
「任せて! おとーさん!」
私は一人彼らの中から数歩前に歩み出て、
「精霊化するにあたって―――
動けなくなる、苦しくなる事など
・・・・・
あり得ない」
ここであえて魔力という言葉は使わない。
要は精霊化する際、その障害となっている
部分だけを無効化すればいいのだから、
ひとまず苦痛を取り除く方向でやってみたが、
どうだ……?
「!?」
「用心しろ、シン!」
「おとーさん!?」
するとフォレスト・フロッガーの巨大な体が
光に包まれ、
多少はへこんでいるものの―――
いつもの見慣れた屋敷兼病院の姿が戻って来た。
「フォレスト・フロッガーは?」
そして超巨大なカエルの姿はすでになく……
全員で周囲を見渡していると、
「あっ!!」
「危ない!!」
精霊様二人が同時に叫ぶ。
そこには一人の子供の姿が―――
その子は、建物の屋根の隅に半身を投げ出す
ような姿勢でいたが、
目の前でずる、と落ちて行き、
メル、アルテリーゼ、ラッチが全速力で
向かうも間に合わない事が遠目でもわかり、
「く……っ!!
すぐにパックさんを呼ばないと!」
落ちた後の事を考え、私は次の行動を取ろうと
したところ、そこに突風が吹き、
直前まで迫った家族の目の前で、その子の体は
ふわりと宙に浮いて、
ゆっくりと地上へ降ろされた。
「ふー、間に合ったー」
上から聞こえた声に見上げると、そこには
薄茶の長髪に白いローブのような衣装を
まとった、風精霊様がいて、
「遅いの!!」
「い、今はとにかくあの子を確認しないと……
ありがとう、風精霊」
「どーいたしましてー♪」
そしてみんなで、現場へ確認のため集まると、
「この子が?」
「見たところ、3・4才かのう」
そこには緑色の肌をした小さな子が、ラッチに
抱かれており、
「う……ん……?」
気が付いたのかその子は瞼を開き―――
目が丸く大きな、某マンガのキャラのような
カエル顔の沼精霊様の誕生に
立ち会ったのであった。