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「おーい!起きて!」
うーん誰。こんな朝早く起こすのは。
「起きて!」
眠いよー
「起きろー!」
「わぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕は急いで起きると布団の上にチリシィがメガホンを持って立っていた。
「チリシィ~?何こんな朝早く起きるのさ~。うー耳がキーンってなっちゃったよ」
「早起きはいいことだよぉ。とにかく行くよ!」
「え?Where?」
「新しい世界さ」
そう言いチリシィは本棚から本を取り出し僕に渡す。
「いい?君は沢山の人を笑顔にしたい。それによって世界は光っている。でもまだ光ってない世界がある。だからそれを光らせるために君は世界を回るんだ」
「Ok」
私はページをめくりながらチリシィの話に耳を傾ける。すると赤いバラのある世界が目に入る。綺麗だな。
「ここに決めたの?じゃあ行こう!」
すると横から見ていたチリシィがそのページをタップする。するといつものようにゲートと杖が出てくる。杖の先端にはバラの花がついていて、持ち手にはトゲをイメージした装飾が施されていた。
「さあ行くよ!」
「ちょっと待って!まだパジャマなんだけど」
「あ、」
僕はパジャマからいつもの服に着替えるとゲートの中に入っていく。
ゲートを出た先は薄暗いお城の中だった。目の前には階段がある。
「気味が悪い」
「いかにも出そうな感じだね」
「わ!」
僕はそばにいたチリシィに驚いてしまう。
「なんだよ」
チリシィが不機嫌な声を出したその時、後ろに気配を感じた。振り返って見るとそこには、頭にロウソクのついたオバケと、中に浮いてる片目が垂れているオバケがいた。
「「でたーー!」」
僕とチリシィは同時に驚く。どちらも今にも泣き出しそうだ。
「それじゃあ頑張って」
そう言いチリシィは近くの柱の陰に隠れた。そこに残ったのは僕とオバケだけだった。うーん、こうなったら戦うのみ!僕はオバケに杖を振る。だが何度倒してもオバケは湧いてでてくる。その時
「グオオオ!」
空気を震わせる唸り声が響き渡る。
「わ!」
僕は驚き、声のする方角を見ると階段の上にマントを羽織った鋭い牙と爪を持つ野獣が立っていた。野獣は下に降りて来ると周りにいるオバケに襲いかかり、一瞬にして倒してしまう。助かったー。僕はほっと胸を撫で下ろしたよ。だが野獣は僕の腕を掴み持ち上げて、僕の顔を険しい顔で覗く。
「こ、こんにちは」
僕はビクビクしながら挨拶をする。だが野獣は黙ったままだ。すると野獣は僕の腕を掴んだまま僕を引きずりながら歩き出す。チリシィは僕のスカートつかみ反対方向に力をかけるが野獣のちからは強くずるずる引きずられて行ってしまう。僕達は塔の上の牢屋に放り込まれてしまう。僕は何が起こったのかもわからない。
「とんでもない目にあったねぇ」
「うん」
「彼は見た目は怖そうだけど、オバケではなさそうだよ」
そしてチリシィは周り中石のブロックだけの部屋を見渡す。
「まあ歓迎されてるわけでもなさそうだね」
「そうだね」
僕の目に少し涙が溢れて来る。
「全く、俺の監視下で泣くんじゃねーよ。へなちょこ王子野郎」
え?誰?僕は声がしたので辺りを見回すがチリシィ以外誰もいない。僕は首を傾げると声がさらに続ける。
「これだから男の子というガキは嫌いだ。何かあればすぐ泣いてうるさいんだよ。しかも自分の胸を強調してくる時は更に腹がたつ」
「え?」
「だがお前はそんな無いな。むしろへなちょこだなw。胸が寂しくてペットも一緒に連れて来たとはw。へなちょこ!へなちょこ!」
声はぐちぐちと文句を言っていき最後には僕の胸がないことをバカにし始めた。僕はこの事については頭にきてしまっていた。
「失礼な!誰が、へなちょこさ!」
気がつけば僕は我を忘れてその場で叫んでいた。その様子をチリシィはぽかーんと見ていた。僕は急に恥ずかしくなり顔が真っ赤になりその場にうずくまる。
「テオ・・・・人間見た目じゃなくて中身だよ。それに今は成長期だから今後に期待しよう」
チリシィは僕にポンと手を置き慰めてくれる。なんでだろ、この優しさがすごい痛い。でもくよくよした気持ちを切り替えないと。
「とにかく早くここを出よう!」
「どうやって?」
「どうしよう」
「そこ考えてないんだねぇ」
そうだ。肝心のその部分を考えてなかった。僕は頭を抱えて考えていると外から鍵を開ける音がする。扉が開くと青色のワンピースに白いエプロンを付けた茶色の髪の女の人とロウソクの濁台に置き時計。そしてティーポットとティーカップが入って来る。ん?今濁台や時計達が動いてる?どういうこと?
「この男の子で間違いない?」
女の人に聞かれてロウソク達はうなづく。そして女の人は僕に向き直り、僕と目線が合うように屈んで話す。
「みんなから聞いたわ。あなたがオバケを倒してくれたのね。ありがとう。でもこんなところに閉じ込めてしまってごめんなさいね。」
「い、いえ。大丈夫です。それであなたは?」
「私はベル。そしてこちらはお城の人たちよ」
ベルに紹介され、置き時計が前に進み出る。
「コグスワース、執事頭です」
「私はルミエール」
「ポットよ。そしてはこの子は息子の・・・」
「チップだよ!」
コグスワースに続き濁台、ティーポット、ティーカップと自己紹介をしていく。
「僕はインセクトランドのプリンス、マメコバチのテオと申します。この子は僕の作ったぬいぐるみのチリシィ」
「よろしく」
「まあカワイイ。よろしくね。ところでマメコバチのテオさんはどうしてここに来たの?」
「ここにいるオバケを倒す為に」
「そうなの。でもあの人はなぜこんなことをしたのかしら?」
「さあ分かりません。ですがご主人様はここ最近ため息混じりで西の塔にこもっています」
「きっと一人で何か抱えているのでしょう」
「こういう時は話を聞いてあげるのが一番ね」
「えー?なんの話?」
ベルの言葉にコグスワース、ルミエール、ポット夫人が続ける。だがチップはなんの話なのかはわかって無いようだ。
「そうね。話を聞く為に彼の部屋にいきましょう。テオ君たちも来てくれる?」
「もちろん」
ベル達は牢屋の外に出て野獣の部屋に向かう。僕はその後を追いかける。
長い廊下を進み、一番奥の部屋に着く。そこはいろんな物に爪で引っ掻いた後が残っている。その奥にビンに入った一輪のバラとさっきの野獣がいた。僕はそこに近づく。すると野獣は僕を見て雄叫びをあげる。
「グオオオ!」
「わっ!」
野獣の大きな咆哮に驚いて僕は尻餅をつく。するとベルはその野獣に歩み寄る。
「落ち着いて!この子は悪い子じゃないわ」
ベルは野獣を落ち着かせる。野獣はすぐに落ち着いた。
「すまない。バラが奪われそうになったんだ。」
「オバケに?」
「ああ。だが何故バラを狙ったのかは分からない」
「きっとそれはオバケがイタズラ好きだからだよ」
チリシィが話に入る。
「?」
「前に聞いたんだ。オバケはね、いろんなところに現れていたずらをして沢山の人を困らせていくんだ」
「それいつ聞いたの?」
「一昨日イェンシッド様から」
チリシィも僕の知らないところでいろんな人と話してるんだ。
「イタズラで私のバラを!」
また野獣が叫ぶ。
「おちついて!」
「すまない。だが私はここを動かん!このバラを守らないと」
「いいの?あなたのお城が荒らされてるのよ」
野獣はまたバラを見つめる。
「もういいわ。いきましょう」
「え、でも」
ベルは部屋を出ようとする。
「待ってくれ!」
野獣さんが声をかけ僕達を引き止める。
「私が間違っていた。私は一番大切な物を守りたい」
「あなた」
野獣の決意にベルと僕は感動する。すると部屋にお城のみんなが入って来る。さっきのみんなに加えてタンスの人もいる。
「ご主人様その言葉を待ってました」
「微力ながら協力しますぞ!」
「荒手は苦手ですが、立ち上がらなければ男じゃない!」
「僕も頑張るぞ!」
「気持ちが高ぶるわー」
お城のみんなはやる気満々だ。
「お前達、オバケ達を倒すぞ!」
「「「「「「おー!」」」」」」
「ベルはここでバラを守ってくれないか」
「分かったわ。気を付けてね」
僕と野獣さん、そしてお城の人達は廊下を歩く。
「野獣さん、一つ聞いていいでしょうか?」
「何だ?」
「何でインセクトランドのプリンスの僕を牢屋に放り込んだのです?」
「お前もバラを奪いに来たのだと思ったからだ」
「そうだったんですね」
「すまなかったな」
え?今野獣さんが謝った?そう思った瞬間目の前に突然オバケ達が現れる。すると野獣が雄叫びをあげる。
「私の城から出て行け!」
みんなはやる気満々だ。そして僕達は敵に向かって走り出す。
「えい!」
「グオオオ!」
「それ!」
みんなはそれぞれの力でオバケをやっつけていく。僕もあらかたやっつけひと段落する。すると後ろから誰かが僕の肩に手を置く。僕はびっくりして後ろを見るとそこには背の高いイケメンの男性が立っている。
「え、えっとどちら様で?」
「この城のバラだ」
バラ?バラねー。ん?バラ!?ん?でもこの声聞いたことがあるような・・・
「え?あのバラ?」
「ああ、この城にあるバラの精霊だ」
「わーすごい!精霊にあったの初めてかも。でも待って、その声・・・・あ!」
「!」
「さっき僕のことをへなちょこ王子って言ったのはあなたですね!」
「げ!バレた!」
「テオ落ち着いてぇ~」
その人がその場から逃げだそうとし僕はそれを追いかけようとした時オバケをやっつけ終わった野獣さんがこちらにやってきて話しかける。
「城のオバケ達は追い払えたようだな。ん?1人で何をしている。さあベルの元に戻るぞ」
そう言い野獣さんは行ってしまう。
「どうやら僕のことは見えてないみたいだな」
「そうなんだ」
僕は疑問を残しつつ野獣の後を追いかける。
野獣さんの部屋に戻るとベルが笑顔で迎えてくれた。
「お帰りなさい」
ベルは僕達に歩み寄る。
「テオ君のおかげね」
「私からもお礼を言わせてくれ。テオ王子殿下ありがとう。それにベル。君は私の事をまた救ってくれた」
「いいのよ」
「だから、その、お礼としてなんだが、よかったら、明日一緒にダンスを踊ってくれないか?」
「ええ。喜んで!」