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琴音は昔から妙に注目を浴びる子供だった。
一挙一動全てに注目を集め、言葉を発しようものなら皆が黙って聞いてしまうような。そんな注目のされ方だった。
そんな環境下で育ってきた琴音は、舞い上がるでも傲慢になるでもなく
「こわいこわいこわいこわい。」
むしろ逆の対人恐怖症に近いものを発症した。
日常生活ではなるべく息を殺して過ごし、なるべく目立たないように必死に隠れて生きてきた。
人の視線を集めることに恐怖を覚えていたのだ。
家族でさえも話しかけてくるものは全て等しく苦手だった。人が良い故に琴音を気にかけていた兄の存在も、琴音からすれば切実に放っておいて欲しかったのが本音なのだ。兄が優しい事は琴音だってわかっていたが、うまく対応できるほど琴音は大人ではなかった。だから琴音は家族さえも避け、人の少ない場所を好んだ。一人になれる、自分の言動で注目を集めなくても良い場所を。
それから数年後、琴音は
「雛隊長~!」
ものすごく元気に駆け回れる程に対人恐怖症は克服していた。
それも全てほ雛百合が関係している。
人気の無い場所でひっそりと踞っていた琴音を見つけた雛百合が御影と共に隊室に連れ帰ったのだ。
最初は抵抗していたものの隊室に入ってからそこに居た風間と真澄に一度見られてだけで注目されていないことに気付いてからは大人しかった。
雛百合が琴音に事情を聴き、それがサイドエフェクトであることと、雛百合にはサイドエフェクト無効があるので雛百合と居れば変に注目を浴びたくないという目標は達成できることを知った琴音は雛百合の側に居たがった。
条件として出したボーダーに入って雛百合隊に属するというものも即答で了承し、暫く後本当に入隊した琴音に雛百合以外が爆笑した。
雛百合隊に入った琴音が真っ先にしたのは雛百合に引っ付くことだった。勿論サイドエフェクト関係なしに注目を浴びる事になったが本人は気付いていない。
しかし、それを見た御影により琴音のサイドエフェクト抑制効果を期待して特訓することになったのだった。
特訓の内容は「特定条件下でのみサイドエフェクトを有効または無効化する」というものだ。
約1年をかけ、隊員全員で真面目に投げ出すこと無く続けた結果
歌っている時(例外含む)だけ無条件で注目を浴びる
に変わったのだった。
勿論全員が満足した結果だったし、歌う時以外もたまにサイドエフェクトが発動しているが、それに関しては諦めるとのことだった。
前に比べればはるかにマシになったのだから。と。
そんなこんなで琴音は前とは比べられないくらい明るい子になった。別の意味で注目を浴びるが、それが気にならないくらい前はもっと注目されていたのだから現状でも琴音は満足だった。
そして、自分のために思考し、時間を費やしてくれた雛百合隊の皆が大好きで、大切でもあった。
なので、雛百合に
「ことりん囮にして私と御影で殺ればよくない?真澄ちゃんはことりんの護衛ね。皆ことりんに集まってくるだろうし。」
といきなり囮発言されても
「わっかりましたぁ!」
と元気に返事をする程に異論を持たない子になった。勿論雛百合隊のメンバーにだけである。
真澄を囮にして琴音が狙撃する事もあるが、数は少ないし、琴音が狙撃するとヘッドショットにこだわるのでキル数が稼げないというのもある。ついでに真澄は囮も喜んでする。何故なら囮は皆に狙われる。負傷が多い。つまり、真澄が喜ぶ。そういうことである。
今日も今日とて
「ヘッドショット~ヘッドショット~♪」
楽しそうにアイビスで撃ち抜く琴音を眺めながら御影はニッコリと笑って言う。
「楽しそうだね。(どこで間違えたんだろ?)」
本音と建前を逆にして。