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菜々子先輩が朋也さんを見て目をキラキラさせている。
先輩には一弥先輩がいるのに。
「確かに素敵ですよね~。英語も話せるんですね~。もしかして菜々子先輩、本宮さんのこと好きなんですか?」
興味津々に梨花ちゃんが聞いた。
「やだ梨花ちゃんたら。本宮さんみたいな秀才イケメンの御曹司が、私なんか好きになってくれないわよ~」
菜々子先輩が、梨花ちゃんの肩をちょっと押しながら答えた。
「そんなことないですよ! 菜々子先輩はめちゃくちゃ美人だし、本宮さんみたいなハイスペック男子に惚れられちゃう確率、ものすごく高いですよ」
「梨花ちゃんたらっ、恥ずかしいこと言わないで。あそこまでの超イケメンはさすがに……。あっ、呼ばれてるわ。ごめんね、ちょっと外すわね」
菜々子先輩が席を外した。
「恭香先輩~! 菜々子先輩は絶対本宮さんのこと好きですよね! あんなに謙遜しちゃって、なんだか笑えますよね。本当はすごく自信あるくせに」
梨花ちゃんは、可愛い顔をして言い過ぎるところがある。ちょっと怖い。
菜々子先輩のことを美人だと思っているのかいないのか、本当のところはよくわからない。
「菜々子先輩は本物の美人だから。あれだけの美貌だもん、みんなに好かれるよね。男性なら、1度はあんなに素敵な人とお付き合いしてみたいと思うはずだから」
そう、一弥先輩のように。
一弥先輩は、菜々子先輩のどんなところが好きだったのだろう。
もちろん、見た目は好きだったに違いないけれど……
「そうですか? 私が男なら別に付き合いたいと思いませんけど。菜々子先輩、なんか自信家で嫌な感じです~」
「自分に自信が持てるのはとても良いことだと思うよ。菜々子先輩も、梨花ちゃんも、いつも美人で可愛くて……私からすればすごくうらやましいよ」
「恭香先輩は自分に自信がないんですか?」
「えっ……」
「先輩も自信持てばいいのに~。あ、でも、難しいですかね。どうしたらいいのかなぁ? 例えばメイクをきつくするとか、思い切って整形しちゃうとか。自信持てる方法思いつくといいですね」
「……整形は厳しいね」
「考え方古いですね~。整形なんて普通ですよ。まぁ、私は整形しなくても何とかなってますけど~。先輩はいろいろ触らなくちゃダメかもしれませんね」
梨花ちゃんにいちいち反論する気力が出てこない。
整形を悪いなんて思ったことは無いけれど、そんな勇気もない。
「ま、まあ、そのくらいにしときましょ。そろそろ仕事しましょうか」
「は~い。わかりましたぁ、お仕事しましょ~」
私は、苦笑いした。
菜々子先輩は、一弥先輩が好きなんだよね?
まさか……本当に朋也さんのことも好きなの?
朋也さんのことを好きだとすれば、一弥先輩のことはどうするの?
でも、もし、あんな美人に告白されたら、朋也さんは絶対に嬉しいだろう。
美男美女でお似合いだし、嬉しいに決まっている。
きっと、そうに違いない。
私は、朋也さんに告白されたわけではない。
ただ一緒に住んで、ただ同僚として守ってくれて……
妹みたいに思われているのかもしれない。
朋也さんも、菜々子先輩が好きなのかな……
梨花ちゃんだって、すごく可愛いし……
もちろん、夏希だって綺麗だし。
何だか、私だけが違う。
たいしたことのない地味な顔。
いつだって思ってきた……スタイルも、顔も平均点だと。
向こうで英語で会話する朋也さんの横顔はあんなに綺麗なのに……
モデルみたいにキラキラしている朋也さんと、私が釣り合うわけがない。
ずっとずっとわかっている。
わかってはいるけれど……
どうして朋也さんは私に優しくするの?
何のために?
よくわからないから、勝手に不安になる。
自分に自信が持てるようになれば、もっと違う考え方ができるようになるのか?
こんなネガティブな自分から卒業できるのだろうか?
だけれど、いったいどうすれば自分に自信を持てるの?梨花ちゃんが言うみたいに、見た目を変えればいいの?
生まれてから今まで、ずっと自信がなかった私が、いきなり自信を持つなんて……何よりも難しい問題。
それは、私の永遠のテーマだと思った。