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ぺた、ぺた、ぺた。
ぺた、ぺた、ぺた。
これで何回目だろうか。
仕事の帰り道、暗い路地を歩かなければならない時がある。
その時に誰かが追ってくるのだ。
彼氏と帰る時や、友達と帰る時は来ないが、
一人で歩くと必ずついてくる。
大抵私は走って家まで戻る。
怖くて振り向くことはできない。
会社の上司は「気にしすぎ」と一蹴し、
まともに扱ってくれなかった。
私の味方は彼氏だけだ。
怖いから来て欲しいと伝えると、すぐに来てくれる。
私にはそれがとても心強く思えた。
いざという時は彼氏が助けてくれる。
そう思った。
ある日、奴が私のすぐ後ろまできた。
咄嗟にそこにあった石を奴の右足めがけて投げ、
その隙に急いで帰ってきた。
いつものように彼氏が来た。
喜んで出迎えたが、彼の右足に違和感に気づいた。
肉がえぐれていたのだ。
「転んでしまったんだ」というが、
転んだだけで抉れるだろうか?
奴は彼氏なのではないか?
すっかり怖くなった私は、
彼氏と別れ、彼の知らない場所に引っ越した。
元彼からは「やり直そう」「逃げるのか」「許さない」と
大量のメールが送られてきたが、全て無視した。
私は早く忘れたかった。
彼氏がストーカーだったこと。
唯一の心の支えだった彼氏に裏切られたこと。
元彼のことをだいぶ忘れかけた頃、
私は夜道を一人で歩いていた。
ぺた、ぺた、ぺた。
ぺた、ぺた、ぺた。
思考が止まった。
どうして。
ゆっくりと後ろを振り向くと元彼が立っていた。
ナイフを持ちながら。
笑顔で。
閑静な住宅街に悲鳴が響いた。
「ーーーーー続いてのニュースです。〇〇区在住の女性が何者かによって殺害される事件が発生しました。犯人は逃走中です。遺体には右足部分が無く、犯人が持ち去ったと考えられます。念のため、戸締まりはしっかりと行なってください。ーーーーーーー」