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エレベーターの表示パネルが狂ったように回転し、ついに停止した。
表示された数字は──『0』。
「0階……?そんな階、あるはずが……」
ガッ、という鈍い衝撃と共に、扉が左右に引き絞られる。
外に広がっていたのは、廃病院でもオフィスでも、学校でもなかった。
そこは、真っ白で巨大な「シュレッダー」の内側のような空間だった。
上下左右、壁一面に無数の鋭利な刃が敷き詰められ
それらがゆっくりと、しかし確実に回転しながら僕に向かって迫ってくる。
「ひっ……あああああ!」
僕は腰を抜かし、エレベーターの隅にへばりついた。
その時
背後のスピーカーから、今日一番クリアな
そして最も聞き覚えのある「自分の声」が流れた。
『──佐藤健。受理。お前の罪は「無自覚」という名の、最も深い悪意だ』
「助けてくれ! 何でもする! 謝るから! 山下にも、あの時のあいつにも!」
『謝罪は不要だ。……お前はもう、存在していないのだから。』
「は……?」
僕が呆然と呟いた瞬間、エレベーターの床が鏡のように透き通った。
そこには、深夜二時のオフィスビルの一階、エレベーターホールの前で
血を流して倒れている「僕」と「同僚三人」の姿が映し出されていた。
ワイヤーが切れ、地上へ叩きつけられたエレベーターの残骸。
変わり果てた姿の僕たちの周りで、警察や救急隊員が慌ただしく動いている。
「死んだ…僕たちは、あの瞬間に死んでたのか……?」
『13階は、地上と地獄の狭間。お前たちは、まだ自分が人間だと思い込んでいたに過ぎない。』
迫りくる刃の隙間から、消えていった高橋、鈴木、伊藤の顔が見えた。
彼らもまた、このシュレッダーのような闇の中で、自分の罪に切り刻まれ、形を失っていく。
「嫌だ!僕はまだ…僕は……!」
僕が最後に見たのは、救急隊員が僕の遺体のポケットから取り出した、一通の封筒だった。
それは山下の遺族に送るはずだった、偽りの謝罪文。
隊員がそれを開くと、中身はただの真っ黒な紙だった。
『──さようなら、サトウくん。』
ガリッ、と肉を削る音が響いた。
僕の意識は、真っ白な刃の渦の中に飲み込まれ、粒子となって消えていく。
……チーン。
静かな音が響き、オフィスビルのエレベーターの扉が開く。
深夜、一人で乗り込んだ新入社員の女性が、ふと足元を見て首を傾げた。
そこには、誰のものか分からない
古びた社員証のストラップだけが落ちていた。