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魔術大会への出場が正式に決定した、その知らせは―― 思っていた以上の速さで、王立魔法学院へと届いた。
***
「……は?」
最初に声を上げたのは、ユリウスだった。
手にしていた書類を見下ろしたまま、数秒。
次の瞬間、勢いよく立ち上がる。
「一般の部って……ルクシアが!?」
「ちょ、ちょっと待って。まだ十二歳だよ!?」
セレスが慌てて言い、ノアが顔を青くする。
「しかも相手は実力者ばかりの一般部門……?」
「危険すぎるだろ……!」
エリオスはすぐに状況を理解し、低く息を吐いた。
「……王命が絡んでるな、これは」
その隣で、レオンハルトは一言も発さず、
ただ書類を握りしめていた。
――静かすぎるほどに。
「……行く」
ぽつりと落とされた声に、全員が振り向く。
「王都へ」
「レオンハルト!?」
「止めても無駄だよ」
顔を上げたその瞳は、真剣そのものだった。
「ルクシアが一人で戦うなんて、ありえない」
ユリウスが強く頷く。
「同意だ。あいつは……守られるだけの存在じゃないけど、
それでも一人で背負わせるつもりはない」
学院内は、一気にざわついた。
誰よりも大切な存在が、
今まさに“戦場”へ向かおうとしているのだから。
***
一方、その頃――王都。
「では、紹介しよう」
王の言葉とともに、私の前に一人の青年が立った。
年は二十代前半だろうか。
長めの黒髪を後ろで結び、切れ長の瞳が印象的な人物。
どこか影があり、
でも、目を逸らしたくなるような不思議な存在感がある。
「王国魔術師団所属、
リヒト・ヴァルツだ」
(……イケメン)
思わずそう思った次の瞬間。
「今後、魔術大会までの間、
ルクシアの専属指導を任せる」
「……専属?」
聞き返すと、青年――リヒトは静かに膝をついた。
「あなたの魔力は、光と闇、どちらも極めて高純度だ」
低く落ち着いた声。
「制御を誤れば危険だが、
正しく導けば――王国随一の力になる」
その視線が、まっすぐ私を捉える。
「安心してください。
倒れさせませんし、壊させもしない」
淡々としているのに、不思議と信頼できる。
(……この人)
父が続ける。
「大会まで、付きっきりでの特訓だ。
無論、護衛と医師も常に待機させる」
(やっぱり過保護……)
けれど。
私は、小さく頷いた。
「……お願いします」
リヒトは一瞬だけ、驚いたように目を細め、
それから、ほんのわずかに微笑んだ。
「良い目だ」
その言葉と同時に、胸の奥で光と闇が静かに呼応する。
遠く学院では、
大切な人たちが焦り、動き出している。
そして王都では、
新たな師と共に、私は未来へ踏み出そうとしていた。
――魔術大会まで、残された時間は少ない