テラーノベル
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しばらくしてランチが運ばれてくると、花斗はすぐに気がつきこちらに駆けてくる。
そして、母の隣にぴょこんと座ると、飛行機型のお皿に目を輝かせた。
「すごい、ひこうき!」
「本当だねぇ」
母も同調する。
そんな母に照れつつも、花斗がこちらに言った。
「ママ、リュックちょうだい」
私がリュックを差し出すと、花斗はそこから飛行機のおもちゃを二機取り出した。
「ひこうき、びゅーん」
花斗の操縦する飛行機はテーブルの上を旋回する。花斗はそれから、お皿と平行に停まるように丁寧に並べた。
「こっちは、サンタさんにもらったの。こっちは、いつきにもらった」
花斗が指を差して、母にそう教えている。
母は一度はっとしていたが、すぐに笑って「そうなんだねぇ」と相づちを打った。
「いただきます」
花斗はそう言うと、大好きな唐揚げから頬張る。それを見届け、私たちも運ばれてきたランチに口をつけた。
「いつきのからあげ、おいしいんだよ。ママはつくらない、かうだけ」
そんな告白を自慢のように母にされて、私は内心苦笑する。
母は「そうなのねぇ」と相変わらず相づちを打ちながら、花斗の言葉に耳を傾けていた。
やがてお子様ランチをペロリと平らげた花斗は、今度は壱月の手を引いて遊び場へ向かう。
「待ってくれ、花斗。まだコーヒーが……」
「ぼくはたべおわった。いくよ、いつき!」
そんな会話をしながら去っていくふたりに、自然と笑みがこぼれる。
「心配していたけれど……ちゃんと、親子ね」
「え?」
思わず母を振り向くと、母はふたりの背中を見つめていた。
「ちゃんと花斗くんと向き合ってくれているじゃない、彼」
「お母さん……」
母は笑みをこちらに向けて首を傾げる。
「うまくやってるみたいで、安心したの」
「うん……ありがとう」
ちょうど食後のコーヒーが運ばれてくる。
私は照れくさい空気に負けて、早々にカップに口をつけた。
「愛音は抱え込んじゃうから。なんでもひとりで……お母さんにも、お姉ちゃんにももっと頼ればいいのにって、思ってたんだけどね」
はっとして顔を上げた。
母はまた花斗たちを目で追っている。
「もし泣きついてきたら、いれてあげようねって、お父さんとも話していたのよ。なのに愛音、良くも悪くも、ほとんどひとりで切り抜けちゃうんだもの」
母は笑いながら、ため息をこぼした。
弱音なんて、吐けなかった。毎日もがきながら、子育てするのに必死だった。
けれど、母も父も、もしかしたらどこかで期待していたのかもしれない。
私が戻ってくることを。
「ごめん……」
小さく呟くと、母は「ううん」と首を振った。
「でも彼には、預けられるのね」
母は花斗たちを見つめ、目を細める。私もそちらに視線を向けた。
壱月と花斗は真剣な顔をして、床に腰を下ろしブロックでなにかを作っている。
朝永ゆうり
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コメント
1件
ああ、すごくいい話だった……「預けられるのね」のひと言が刺さりました。これまでひとりで頑張ってきた愛音さんが、母の前で初めて壱月くんに頼っている自分を認められたような、そんな温かい空気が伝わってきました。花斗くんの飛行機遊びや無邪気な「いつきにもらった」にもほっこり。母娘の距離が少しずつ縮まる感覚、とても好きです。