TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「おい、皇后崎…姉さん達は」

「…ごめん」

「…ッ」


桃華の背中をさする皇后崎に海は姉の安否を聞くが、求めた答えは来ない。

段々と、焦りと理不尽な怒りが募っていく。

だが、苦しそうな皇后崎の顔を見ると何も言えなくなって、言葉を飲み込んでしまう。

あの状況で二人を置いていくのは、心理的にはともかく、確実に長く時間稼ぎのできる方法だった。

分かっているのだが、自分の中に落とし込むことが、納得することが出来ない。


「…姉さんを、助けに行ってくる」


歩きだす海を白黒頭のクラスメイト_手術岾ロクロが青い顔で引き留めた。


「かかか、かみ、神示、さん」

「離せ。邪魔だ」

「でも、今は危な…」

「うるさい。退け」


うざったいとでも言うように振り払おうとするが、やはり男と女では力の差がある。

海は少し手術岾の手を捻るようにして振りほどき、拘束を抜けた。

だが、襖の前には桃華がいた。


「避けてくれ。桃華」


ただ俯いて、黙って通せんぼをする桃華に海は怒鳴る。


「姉さんが、京夜兄さんが…、死ぬかもしれないんだッ!どけ!」


桃華はその言葉に反抗するように涙を目一杯に浮かべ、海に言い返した。


「ぼくらがいって、なにになるの!?」


それは、自分の無力さを知っている者の叫びだった。

悲しそうに、痛々しげに叫ぶ小さな桃の花は、八つ当たりをするように、言葉を吐いていく。


「ぼくらがいっても、まもらなきゃいけない人がふえるだけだよッ!」


小さくとも、ずっと守られ続けて生きてきた少女の抱える無力感や焦燥感は、狼という形になって現れていた。


僕も戦えるよ、あなた達を守れるよ、と。


だが、現実はそう甘くない。

姉達はあくまでも自分の命をとしてまで守ろうとし、兄と慕う人達に至っては戦闘員の頭数にもいれて貰えない。


「ぼくたちは…なにも、できないよ…っ」


ぽとりと、桃華の瞳から涙が零れ、血塗れの畳に染み込んでいった。

海は冷水を頭からかけられたような心地がした。


「とうか」


自分の至らなさに吐き気がする。

姉だというのに、妹を泣かせて。

これを姉が見たら、どう思うだろうか。


「桃華」


今は、皆を守らなければ。

それがあの人たちの頼みであり、願いならば。

海は、いつの間にか浮かんでいた涙を拭いて全員に言った。


「取り乱した。…すまない。逃げ道はあるだろうか」


女性隊員に問うと、「全部塞がれてしまっている」との答えが帰ってきた。


「そうか…」


静かな水面のように動かない顔で逃げる方法を考える。

もう、あんなに感情を露にしていた海は何処にもいない。

代わりに、冷静に戦況を分析し、見極めようとする者の姿があった。


冷静であれ。


自分に言い聞かせ、深呼吸をする。

四季が海に心配そうに話しかけてきた。


「なぁ、神示」

「どうした?一ノ瀬、何かあったのか?」


四季は少しはくはくと口を明け閉めしてから、少しトーンを落として言った。


「無理は、すんなよ」


海は目を少し丸くしてからこくりと頷き、言った。


「もちろん。姉さん達のためにも無理はできな…」

「そういうことじゃねぇよ…!」


四季ははっとしてから少し目を伏せ、声のトーンを落として言った。


「キツい時は、言ってくれよ…。あんなに…船で、喋ったじゃんか…」


少し気まずそうに言う四季に、海は黙って四季の手を引き、別室へと連れていく。

ざわざわとしているクラスメイトや隊員達を他所に、四季は困惑しながら、海は表情を動かさず襖を閉じ、 四季に近付いてごつりと四季の胸に頭をぶつける。

痛みを訴える四季を無視して、海は口を開いた。


「…じゃあ、聞いてくれるのか?」


海は声が震え、肩も震えている。

四季は少し困惑したが、そっと海の頭に手を置く。


「… おう。なんでも聞く」


そして、海の頭をゆっくりと撫でる。

海はびくりと肩を動かしたが、落ち着いたのか息を吐き、ぐりぐりと頭を擦り付ける。


「顔は、見ないでくれ」


そう言う海は、泣いていると、顔を見なくてもわかった。


「京夜兄さん、姉さん…生きてて」


ただ、それだけで良いから。


あとがきです 。

すいません。書き忘れてました。

すっころんだ痛みで多分吹っ飛んでたんですね。後書きの事。

いかがでしたか?

少しだけ海が弱々しい女の子に見えたのではないでしょうか。

まあ、鬼の力がなければただの女の子ですからね。

ブックマークやいいね、励みになっております。

コメントで感想等、聞かせていただけると尚頑張れますので、お願い致します。

では、また。

その姉妹、鬼女につき。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

39

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚