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無力
俺には何も出来ない。俺が生きても何の意味もない
そう気づいたのは最近だ。最近は気分の落ち込みがひどい
仕事には行きたくないが、生きるためなら仕方ない
だが、生きて何の意味があるのか?
そう考えた時、俺が生きることには何の意味もない
趣味で小説を書いても誰も幸せにしない
仕事をやっても誰のためにもならない
誰かのために生きることも叶わない
俺は無力なんだ。
そんな俺が生きてどうしろというのだろう
何の価値もない、何も利益を生まない俺が生きて、明日を生きたくても生きれない人がいるのはあまりに不公平だ
毎日を意味もなく消費する。こんな俺が生きて申し訳ない
なら、自分のために生きればいい。そう考えてはみた
だが、自分のために生きるというのは難しいし、どうすればいいか分からない
社会の波、人間関係の複雑さに揉まれ続ければ、自分のために生きる方法など遠い彼方へ忘れ去ってしまう
俺はただ生きているだけだ。それ以上でもそれ以下でもない
いっそ死んでしまえばいいのではないか。そう考えた時もあった
実際に行動に移そうとした。結局は上手く行かなかった
本能が邪魔をした。直前で死への恐怖心が一気に強くなった。心は死にたくても体は生きたいらしい
人間というのは不思議だ
倦怠感に体が包まれ、ベッドから体を起こすことすら出来ない
もういいや。今日は仕事休もう
俺はベッドから起きるのを諦め、再び目を閉じた
このまま永遠に目を覚まさないで欲しい。寝る度にそう思う
生きても何の意味も無いのだから
「なんか君、色々考えてるみたいだけど意味ないよ」
俺が目を開けると知らない男の子が立っていた。爽やかな笑顔をこちらに向けている
好青年といった印象だ。声からしても学生な気がする
それにここはどこだ?周りを見渡しても、真っ暗で先が見えない
ブラックホールにでも飲まれたのかと錯覚するような空間
夢なのか?夢にしては解像度が高すぎる
俺は今どうなってる?もしや死んだのか?
「ここは……?それに君は?」
「だから、その質問は意味ないって。さっき言っただろう」
俺は青年が先程言った言葉を思い出す。状況が理解出来なくて聞いていないと思ったが、脳は覚えていた
俺の考えが通用しない場所……ってことか?
なおさら頭が混乱する。青年の言う通り考えても無駄なのだろう
青年の反応を見る限り、質問しても答える気が無いらしい
「君さ、死にたいとか思うでしょ」
「……まぁ」
青年は爽やかな笑顔を崩さずに言った
俺は数秒、沈黙した後に口を開いた
「俺には生きる意味がないって。そう思うでしょ」
「……まぁ」
青年に俺の考えてることが全て見透かされてそうで怖い
青年の爽やかな笑顔が若干不気味に見えてきた
俺は青年に若干の恐怖心を抱きながら口を開いた
「君の考えてることはだいたい分かるよ」
「……そう」
青年はそう言うと俺との距離を詰めて、手を伸ばせば届く距離まで来た。顔は笑顔のままだ
青年の笑顔がペルソナのように思えてしまう
「生きることに意味を見出そうとしてるみたいだけど、そんなことしてどうするの?」
「えっ……?…………生きていて良いっていう理由が欲しいから、かな?」
「ふーん。君は物事に理由を付けたがる。だから、生きるという自然の行為にも理由をつけたがる。理に縛られてるね」
「言われてみれば……そうかも」
青年は俺の周りをぐるっと一周しながら言った
青年の言っていることは的を得ている。俺はどうでもいいことでも理由をつけたがり、損得で動く
理の人間。それに縛られている。社会では利益を生み出せる人間が生き残る
それに適応していったからかもしれない
「理に縛られてるから生きるという単純なことにも意味を見出してしまう」
「………………」
「でもね、生きることに意味なんて必要ないんだよ。ただ生きてればいい」
「えっ……?」
「君みたいな受け入れがたいかもしれない。でも、それが事実であり、摂理だ」
青年は一周回ってきて再び俺の前に立った
青年の言う事に思わず声が出てしまった
生きることに意味は必要ない?それでいいのか?
ただ生きる。それが事実であり、摂理……
青年の言ってることに俺は目を丸くする
でも、生きがいや使命を見つけるのは意味があるんじゃ
「生きがいとかは?そう思っただろう。生きがいというのは生きていて勝手に見つける目的に過ぎない。使命も同じようなものだ。生きがいや使命が生きる理由になっているという者もいるが、それは自分で見つけた目的に従っているに過ぎない。結局はただ生きてるだけだ」
「………………」
「少々、混乱したか。私が言いたいのは、君はただ生きていればいい。それだけだ」
いつの間にか青年の顔から笑顔が無くなり、無表情になっていた
声も低くなり、人が変わったかのようだ
青年の言ってることに脳の処理が追いつかず、脳がパンクしそうになる
「ただ……生きる」
「生きることの意味など考えても、探しても見つからない。君が死んでも、ただ生きても時計の針は動くし、地球は回る。世界が止まることはない」
「…………無力ってこと?」
「そうだ。無力が故、生きても死んでも変わらん。だが、無力なのは君だけでない。ただ生きている他の人間も同じことだ」
「少し、深く言い過ぎた。これでお別れとしよう」
「ちょっと!……どこ行った?」
青年は一方的に言うと姿を消した
どうしようかと困惑していると強い眠気が襲ってきて、倒れ込むように寝てしまった
「夢……?」
俺が目を覚ますと見慣れた天井が目に入った
視線を動かして周りを見ると自分の部屋だと認識した。電気は点いておらず、部屋は暗い
ブーブー
側に置いてあるスマホが鳴っている。仕事先からだ
俺は電話に出て、これから向かうと伝えた
ただ生きる。あの青年が言っていた
こんな俺に出来るだろうか?
そんなの考えても無駄だし、今この瞬間がまさにそうか
俺は仕事服に着替え、朝食を取った後、仕事に向かった