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 皆様ごきげんよう、レイミ=アーキハクトです。私は唯一同行が許されている護衛としてパーティーに参加しています。個人的にはお姉さまのお側に居たいのですが、レンゲン公爵家の衛兵として参加している以上カナリア様の側を離れるわけにはいきません。

 残念ではありますが、カナリア様の身を護るのも大切な使命。何より私にとっても数少ない信頼できる身内なんです。もう二度と失わないように気を付けねばなりません。

 護衛とは言え武器の持ち込みは一切禁止されています。何のための護衛なのかと問い質したくなりますが、他の貴族の大半が護衛を連れていませんのでむしろ私の存在は異例なのでしょう。

 とは言え、丸腰であることに変わりはありません。会場はもちろん、城内には帝室の親衛隊……いわゆる近衛兵が目を光らせていますね。

 装備は……マスケット銃にサーベルですか。東部閥の影響を強く受けているみたいですね。まあ、丸腰相手ならば問題はないと考えているのでしょう。

 もっとも、魔法を使える私にとって武器の有無はそこまで問題となりません。いざとなれば敵対者を氷付けに出来ますし、氷で剣を精製することだって可能です。

 カナリア様を護ることに問題はありませんね。

「ごめんなさいね、退屈だったでしょう?」

「いえ、勉強になりました。私にとっての戦場とは剣を交える場ですが、閣下にとってはこの場こそが戦場なのですね」

 私はカナリア様に同行して数多の貴族とのやり取りを側で観察していました。言葉を巧みに操り相手との静かな駆け引きを行う。パーティーとは貴族にとって重要な政争のばであることを再認識させられますね。

 とても私がやっていける世界ではありませんし、もし伯爵家復興が果たされたとしても政争についてはお姉さまにお任せしましょう。私は物心両面でお姉さまをお支えすれば良い。

 しばらくして懇談を切り上げたカナリア様は西部閥の貴族達が集まる区画へ戻り、用意されていた高級な椅子へ座り少し身体を休める様子。速やかにセレスティンがお茶を用意しています。

「ありがとう、セレスティン」

「勿体無いお言葉でございます。衛士殿も如何ですかな?」

 セレスティンの目には気遣いがありました。ここは甘えましょう。

「ありがとうございます、頂きますね」

 私もセレスティンから紅茶を受け取ってゆっくりと味わいました。

 当たり前のように私の好みの銘柄ですね。いつの間に用意したのやら。

 その後、お姉さまがジョゼを連れて戻ってきました。ジョゼは疲れた様子でカナリア様に抱き付いていました。周囲の貴族達が壁になっているので、他の派閥に見られることはないでしょう。

 お姉さまはカナリア様に簡潔な報告を済ませて私に近寄り、待ち望んだ情報を手に入れたと教えてくれました。

 私達姉妹から全てを奪い去った黒幕はマンダイン公爵家の令嬢、フェルーシア=マンダインっ!

 内に沸き上がる憎悪に身を任せて今すぐにでも殺してやりたい衝動に駈られますが、今は自重せねば。

 しかし、不思議と笑顔になってしまいました。不思議に思いお姉さまへ視線を移すと……嗚呼、やはり姉妹なのですね。お姉さまもまた素敵な笑顔を浮かべているのですから。

 シャーリィ=アーキハクトです。姉妹揃って笑顔を浮かべると言う素敵な一時を過ごし、今後を考えることにしました。

 レイミには共有しましたが、やはり他の目がある以上カナリアお姉様に真相を伝えるのはパーティーの後で構わないでしょう。

 それに、フェルーシアを伴った第二皇子のあいさつ回りも一段落した様子ですし、パーティーそのものもお開きとなります。

 予定ではパーティー後も数日帝都に滞在して、各所と連絡を取った後行きと同じく鉄道で西部へ戻る事になっています。

 私達姉妹とセレスティン、エーリカはお姉様達と一緒に花の都レーテルまで同行。その後エレノアさん達海賊衆と合流して、アークロイヤル号で海路黄昏へ戻る予定になっています。

 鉄道の線路は敷設工事は帝国中で行われていますが、黄昏と西部は直通していません。帝都経由になってしまいますから、海路の方が遥かに早いんですよね。

 ……ああ、マクベスさん達の応援部隊が居るんだった。流石に装備込みで百名を運ぶのは難しい。リナさん達も出来れば一緒に運びたい。カナリアお姉様に相談して客車をいくつか都合して貰う必要がありますね。

 対価としては、農作物の割り引き……いや、それでは割に合わない。出荷量の増加にしましょう。ロウ達には苦労を掛けてしまいますが、売れば売るだけ儲かります。

 労力の増加には給与その他の増額で対応しましょう。働きには正当な、そしてちょっと気前良く対価を支払う。私の個人的な流儀です。

 そんな風に考え事をしていると、一人の従者が血相を変えて会場へ駆け込み、そのままマンダイン公爵の下へ向かいました。

「何だ、騒々しい。殿下の御前だぞ、弁えぬか」

「申し訳ありません!しかし閣下、これをご覧ください!」

 従者が差し出した書状らしきものを乱暴に受け取ったマンダイン公爵は貪るように読み始めました。全く優雅さがありませんね。品位ではカナリアお姉様の圧勝です。

「なっ、何だと!?」

「マンダイン公爵、何事かな?」

「殿下!皇帝陛下の御不快には原因がございました!どうやら毒を盛られていたとか!」

「なに!?父上に毒を盛った輩が居るのか!?」

「はっ!我が手の者が下手人を捕らえ尋問した結果、レンゲン公爵家の差し金であると吐いたそうです!」

「濡れ衣も甚だしい!何を根拠にその様な世迷い言を仰るのですか!」

 直ぐにレンゲン公爵家の筆頭従士が反論しました。まさか、キャプテン・ボルティモアが言っていた皇帝暗殺計画!

 まだ皇帝が生きているにも関わらず、このタイミングでそのカードを切るのですか!?

「白々しい!証拠もここにある!奴等は月光草を密かに手に入れていた!これがその証拠だ!」

 あれは……取引の控え!?

「やられたわね」

 カナリアお姉様の呟きに視線を向けると、お姉様は笑みを深めていました。

「うちの取引に関しては全てをチェルシーに任せているわ。この状況で彼女が裏切るメリットはない。つまり」

「マルテラ商会にネズミが入り込んでいると」

「そうなるわね。まさかこのタイミングで仕掛けてくるとは思わなかったわ」

 私は咄嗟にフェルーシアへ視線を向けました。この先には、嫌らしい笑みを浮かべた糞女がじっとこちらを見ているのでした。

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